23 学校生活の始まり
その23です。
……混迷の終息には、イロハが家庭の都合で豊浜に来たことと普通に受験して入学したことを説明するまでの十分近くが費やされた。
担任・副担任がどうにか踏ん張って自己紹介の続きをさせるところにまで持ち込んだが、かなりグロッキーな状態になっていたのは同情せざるを得ない。イロハの「私のせいですみません」と謝る姿が、最後の決め手となった。
以後は淡々と進行していく。拍子抜けするほどスムーズだ。
そんな中、泰地はボケッとイロハの後姿を眺める。
うん。ぽっちゃりさんだ。
とてもあの身体で日本トップレベルのアスリートとは信じられない。だけど実際は、同年代の男子よりも身体能力は圧倒的上位なのだから、現実は残酷という他ない。
髪は伸ばし始めたばかりなのか、ちょっと中途半端な長さだ。しかし、なんとなくあか抜けているような雰囲気を感じるのは、やはり関東圏出身の強みなのだろう。和風の髪留めも控えめながら見栄えが好い。
そういえば――、と彼はくだらない噂を思い出した。
「目がパッチリ開いているぽっちゃりさんは、痩せるとカワイイ」というアレだ。
テレビのインタビューや、先ほど遠目に見えた彼女の顔を思い出してみると、そりゃあもう見事に目はパッチリ開いていた。おそらく、食事の過剰摂取による肥満ではなく、過度な運動によるカロリー消費と、それを上回るカロリー摂取の賜物なのだろう。
……同性から羨まれるかどうかは分からないが。
「長谷野愁です」
この一言で、教室の空気が妙な緊張感に漲る。泰地は自分の順番が近いことを悟った。




