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183 凱旋魔王

その183です。

「魔城を破壊したことについては、人工精霊の目に記録してある。可及的速やかに公開するつもりなので、それまでは静かに待っていてもらいたい。私からは以上だ」


 ゲアハルトが胸に手を当てるような動作をすると、民衆の興奮は絶頂に登り詰めた。半数以上はまともに聞いてなかったのは明白だが、とにかく「これで安心だ」と納得しているらしい。ゲアハルトが、ひいては王家が民草から信頼されている証左だろう。


 城内で話を聞いていた国王たちも胸を撫で下ろしていた。異界の魔王は契約どおりに事態を終わらせてくれた。最悪の未来図は幻想へ押し流された――安堵が彼らの胸を満たしてくる。


 一方、エックホーフも緊張から解放された。魔王封印の成否を問わず動けるように計画していたが、理想に近い結末となってくれた。むしろ、事と次第によってはあの異界の魔王と対決しようと考えていた自分の無謀さに笑みがこぼれそうになってしまう。



 それぞれの思惑が交錯し、全体を俯瞰すると明るい雰囲気が飽和し始めている王都。


 無論、そんな円満なハッピーエンドで終わらせるつもりがない存在はいる。説明するまでもなく、空の魔王を自称するルデルがそれだ。




『…………さて』




 おもむろにルデルが呟くと、人々は徐々に冷静さを取り戻さねばならなくなった。その声音に明らかな悪意が含まれているのが、幼児でも察知できたからである。


『ルデルにとっては蚊を叩き落とすよりも簡単な話であっても、仕事として請け負った以上は報酬を遠慮なくいただくのだ」


 労働に対して大家を要求するのは当たり前の話だ。魔王と名乗ってるわりにはケチくさいとも思ってしまうが、文句が言える立場ではない。よほど無茶な要求でない限りは、無条件で受け入れざるを得ないだろう。


 シェビエツァ王国国民の大半がそう納得したのを見計らったように、魔王サマはたっぷりと溜めを作ってから宣告した。






『では、ここにいるゲアハルトを、我が伴侶としていただいていくのだ!』






 ……数秒の静寂からの狂騒。


 耳をつんざく轟音の中、ゲアハルトは「あ、タイジ様も驚いて声出してる」と現実逃避していた。


これにて第1話は完結です。

読んでいただいた方々には感謝しています。



年単位でスランプに陥っていた身としては、

とにもかくにも「終わり」と考えていたところまで書ききれて安堵しています。

もちろん、当初の構想どおりに書けた部分もあれば、

筆が滑り過ぎて変わってしまったところもありますけれど。



今後については、あとで「活動報告」にて投稿します。

来年もまたよろしくお願いします。




それでは。

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