176 我が愛機を見よ
その176です。
魔城を徹底的に破壊し尽したのは、もちろん魔王復活を可能な限り遅らせるためである。
過去のいくつかの例から考察すれば、魔城こそが人々の悪意を吸収することで魔王復活をさせるためのシステムであるのは疑いない。そして、システムに損傷があった場合は、システムの修復を優先させていると見られる。
「確かに、一番凄まじいと言われた戦いでは魔城は半壊し、魔王の復活も百年以上経過してからとありましたが……」
学者であるカウニッツとしては頭痛と目眩に襲われる話だ。
この魔王サマ、やることなすこと全て拙速過ぎにも程がある。少ない手掛かりで勝手に結論を出し、一気に解消へ突っ走る――自分に間違いなどあり得ないと確信しているかのようだ。
……いや、ここまで傲慢だからこその「魔王サマ」か。人間の尺度で議論すること自体が間違いだった、と思う他ない。
(それに、早期解決を促したのは私たちの勝手な都合だ。むしろ大きな損害が無かったことを喜ぶべきだし、必要な情報を用意できなかった落ち度を謝罪するべきだ)
謝罪は立ち上がるべきか姿勢を正すだけでよいか、と一瞬悩んだゲアハルトに、ルデルは視線の一閃でそれを制した。
「堅苦しいのは不要なのだ。ルデルは必要以上の礼儀は嫌いなのだ。それに、軍事行動は経過ではなく結果が最大の判断材料なのだ」
「しかし、それでは――」
「心苦しいところがあるとしても、すぐにそのツケは払ってもらうことになるのだ」
にやり、と意味ありげに口角を上げて微笑むルデルに、ゲアハルトは恐怖はしなかったものの、なぜか苦笑いを自然と浮かべていた。
(というか、まだタイジ様が一言も喋ってないけど、本当にどうしたんだろう?)
こっちの方がよっぽど怖い。