175 我が愛機を見よ
その175です。
目的地までは自動操縦にしてあるから、ゆっくり歓談できるのだ――と、座を上座に座らせた魔王サマが意気揚々と宣言する。
目的地というと、やはりシェビエツァ王国の王都であるのは間違いないだろう。
しかし、この異質過ぎる巨像を王都上空に出現させるのは、やはり抵抗感がある。かといって、面と向かって反対するほどの勇気は、カウニッツはもちろんゲアハルトにもバイラーにも無かった。
ここはひたすら、魔王サマが自重してくれるのを祈るのみである。
できれば目的地とやらに到着するまで静かに過ごしていたい気分だったのだが、魔王サマから放出されている「何でも尋ねろ」オーラに屈したカウニッツがおずおずと手を挙げた。
「すみません。上空から突撃したのは、どういう……」
「ウム。魔法障壁とやらが円柱状になっているとあれば、無防備な真上に活路を見出すのは常道なのだ」
「……確かに、あの黒い雲が魔城の上から吸い込まれている点や、魔城の中に鳥の巣があった件からしても、障壁が煙突のようになっているとも考えられます。けれど、たとえば障壁は魔王に対して害意のない者には無効であるだけの話で、黒い雲や鳥などは通過できても、我々やルデル様には有効な障壁が張られていた可能性も否定できないのではないですか?」
カウニッツの指摘は当然だ。
悪意の有無を発動条件とするなどという魔法は、人間技では無理である。けれど、ヒトを超えた存在である魔王ならば可能であっても不思議ではない。
今回は仮説が事実と一致していたから成功したものの、判断材料が十分といえない状態でこんな無茶を……と考えるのは、学者であるカウニッツならずとも自然な流れである。
しかし、ルデルはすまし顔でこう答えた。
「熱圏付近から加速しながら降下する三百トン以上の質量を有する物体に対して無傷でいられる技術があるなら、是非ともお目にかかりたいのだ」
「ネツケン?」
知識にない単語にシェビエツァ王国人たちは首を傾げるが、ヴェリヨは「うわぁ、想像以上にえげつない……」と俯いたままの泰地に同情してしまった。
真面目に計算すると、とんでもない数値になりそうですね(すっとぼけ)。