15 学校生活の始まり
その15です。
やっと日常編の幕開けです。
まさか高校生活初日の朝を溜息だらけで迎えることになるとは、孕石泰地にとっては非常に不本意な現実となってしまった。
前日に職場へ挨拶へ行かされ、そこで繰り広げられたアレコレを思い出すと、将来に対して漠然としていながらも回避不可な不安が頭をもたげてくる。
だが、それ以上に問題なのは、説明するまでもなく彼の頭上にどっかりと鎮座してる魔王サマだ。
「魔王の座」とやらにされてしまって以来、最大の懸念事項となったのは、言うまでもなくこの魔王サマだ。こんなのを頭に載せて往来を闊歩していれば、三歩も進まないうちに好奇の目にさらされ、カメラ撮影の集中砲火を受けるだろう。
だが、魔王サマは涼しい顔で心配無用と受け流す。
「簡単に説明すれば、周囲の者にはルデルを頭に戴いているのが当然、と認識させるようにしているのだ」
「それって、催眠術みたいな何かで?」
「イメージしやすいように例えると、不可視の魔方陣のようなモノを周囲に張り巡らせているのだ。その魔方陣越しにルデルを視認することで、非日常を日常であると認識を歪ませているのだ」
「でも、カメラとかに撮られたら……」
「先にも言ったとおり、不可視の魔方陣みたいなモノを張り巡らしているから、それは写真などにも見えていないけれど写ってはいるのだ。つまり、魔方陣越しにルデルを見ているから、やはり不審とは感じられないのだ」
もちろん、こんな説明を徹頭徹尾、馬鹿正直に丸呑みできるはずがない。
しかし――――
「おはよう。ルデル様、孕石君。今日から学校なの?」
「そうなのだ。今日は我が座の入学式なのだ」
あらそうなのねー、と朗らかに笑う近所のおばさん。会話の相手が(自称)魔王サマとは信じられないほどの気安さだ。
……来る人来る人、まず魔王サマに挨拶をしてくる現状は、少年にとって新たな頭痛の種となっている。
今日はここまでとさせていただきます。
楽しんでいただけたら幸いです。
それと、人物。設定紹介も更新します。