141 会議はタヌキの集会
その141です。
十五分以上吊るし上げられただろうか。
耐え忍ぶ奥墨と(意に介さない)雪郷も大したものであるが、細々とした糾弾の種を尽きることなくぶつけてくるお歴々も別の意味で驚嘆に値する。
いわゆる千日手状態になっていた場を、一人の男が一手で変えようと試みた。
「まあまあ皆様。どうも議論が煮詰まってしまった様子ですし、ここらで少し……三十分ほど休憩を挟んだ方がよろしいかと思いますが?」
緩やかでにこやかに提案をするこの男は、この部屋に集まった人間の中では最も若い。もちろん、主賓として円卓に座っていたのではなく、雪郷と同じくお偉い何某さんの部下として参加していたに過ぎない。
だが、この三十台前半の若輩者の進言に、彼の二倍は年齢とキャリアを積んでいるであろう他の面々は唯々諾々と従い始める。奥墨も立ち上がると、雪郷を連れて先の「喫煙室」へ向かった。
部下が差し出したタバコを手で制すると、奥墨はいわゆる「加熱式タバコ」を懐から取り出す。
「ちょっと前まで入手困難とかって騒いでいたアレですよね? 美味いんですか?」
「正直、好みじゃない。ただ、こっちの方が多少は身体の負担にならんと言って聞かなくてな。そんなデータはどこにも無いというのに」
さり気なく惚気話を聞かされてしまった、と雪郷はニヤニヤしてしまうが、奥墨の鉄面皮はヒビのひとつも入らない。その程度で動揺すると思ったか、と馬鹿弟子扱いされた気分である。