128 異世界を歩く
その128です。
ドアのノックに応じたら、額を赤くしているゲアハルトが顔を出した。
泰地はなんとなく理由を聞くのが悪い気がしたのだが、ヴェリヨも同様だったらしい。
「どうかしましたか。こんな夜更けに」
「いえ、あの――ちょっと」
ヴェリヨが一緒だったのは予想外だったようで、助けを求めるようにちらちらと泰地を盗み見てくる。だからといって、泰地が即座に妙案を浮かべるほど世の中は都合よくできてない。
数秒間の変な沈黙を経て、ヴェリヨは何かに気付いたようにニヤリと微笑んだ。
「とりあえず、さっきの話はアレで全部だ。俺はもう説明できないから、それでなんとか納得しとけ」
「あっ、はい」
「ほんじゃ、後は若い二人で楽しんでくれ」
するっと扉へ向かう巨漢に、ゲアハルトは「なっ!」と額以上に頬を真っ赤に染めて反論しようとしたが、言葉を詰まらせている間に逃げられてしまった。
再び沈黙が部屋を満たしそうになったが、ゲアハルトが咳払いで阻止する。
「まったく、からかうにしても言葉を選んでほしいですね!」
「俺の職場って、そんな人間ばかりの気がするけど……」
これってハラスメント案件になるんじゃないか――今後は録音機の類を常備しておくべきかも、と泰地は密かに決意する。と同時に、シェビエツァ王国の、しかも王族に「若い二人で云々」なんて冗談が通じる事実にちょっと驚いた。
最初は超然としているようにすら感じたのだけど案外俗っぽいのかもなぁ、などと一人ほくそ笑む少年だったが、別の疑念が浮上してくる。
(あれ? あんな冗談を言うってことは、つまりヴェリヨはゲアハルトが女であると承知してるってことか? いやでも、それなら俺にも一言あるよな? つか、魔王サマが看破してないとは思ってないだろうし。え? つまりいわゆるBLな展開を考えてるんか?)
……せめてもの救いは、ゲアハルトことゲアリンデが言葉の表層にしか拘泥してないところだろう。
自分で書いておいて何ですが、
ちょっと方向性を迷ってる感がありますね。