121 異世界を歩く
その121です。
「いやー、旅の目的は脇に置いといて、こうやって馬車でのんびり自然豊かな土地を巡るって、風情があっていいよなぁ」
城壁に囲まれた王都を出発して小一時間。すっかり寛いだ様子のヴェリヨがしみじみと呟く。
ゲアハルト達にすると「街道は石畳で整備してるし、害獣の類を定期的に狩ったりしてるのに、自然豊か?」と疑問を挟むところである。そもそも王都からあまり離れていないというのに田舎扱いされているようで、ちょっと面白くない気分になってしまう。
だがしかし、泰地はその気持ちがよく分かる。豊浜都のはずれとはいえ、片側二車線の国道は通っているし、北南高は自転車で十五分圏内に大型ショッピングモールが二つあったりする。今は畑だらけでも、十年後には相当に変貌してしまうに違いない。
(なんというか、土の香りっていうのかな? 豊浜――いや、日本とは全然違う場所に来たんだなって実感するな)
ゆったりと流れていく風景を眺めながら石畳の凸凹に揺られていると、尻の傷みをものとせず睡魔が襲い掛かってくる。
「そういえば、今日はどういうところに泊まるんですか?」
さすがに寝てはマズい、と泰地は(微妙に視線をずらしつつ)ゲアハルトに質問した。
「このまま街道沿いに進んでいくと、夕方頃にはセボルという街に到着します。その街の宿屋の一つを貸切にしていますので、今日はそこで休みます」
「宿屋を貸切? そこまでしなくても」
「ヴェリヨ様はまだしも、タイジ様は目立ちますから」
やっぱり、純日本人な外見の少年は、シェビエツァ王国では珍し過ぎる外見なのだろう。到着を夕刻にしたのも、それを考慮した結果というわけだ。
「……それに、万が一の襲撃があった際に、無関係な人間がいるとまずいですし」
まあ、分かりやすいフラグですね。