118 異世界を歩く
その118です。
翌朝。
「おはようさん」
「おはようございます」
ヴェリヨと泰地は、昨日の会議室で挨拶を交わす。
泰地が色々と消化しきれない部分があって低いテンションなのは当然だとしても、ヴェリヨも何かを抱え込んでいるかのように歯切れが悪いのが意外だ。
「どうしたのだ、ヴェリヨ。隣に新婚が住んでいる薄壁アパートの住人のような顔をしているのだ。我が座と二人して陰気にされては朝の爽やかな空気が台無しなのだ」
ルデルの呆れたような声音に、白い巨漢は慌てて表情と姿勢を改める。
「失礼しました。確かに、監督役にあるまじき行為でした。以後は気を付けます」
「ウム。しかし、これからが任務の本番だというのに、いまひとつ真剣味が感じられないのだ」
これは手厳しい、と苦笑いをするヴェリヨに対し、半分自棄のような笑みしか浮かべられない泰地。そうこうしているうちに、ゲアハルトたち三人が姿を見せた。
三人とも、当たり前だが昨日のようないかにも騎士然とした甲冑姿ではなく、帯剣はしている程度の軽装だ。とはいえ、ゲアハルトの美貌と赤の宝玉は眩しいくらいに目立っているのだけど。
「おはようございます。……どうされましたか?」
昨日の騒動など夢であったかのように挨拶をしてくるゲアハルトことゲアリンデを、泰地は正面から見ることができない。見事にダメな対応の典型だ。
(いや、きちんとゲアハルトに見えるんだけど、やっぱ正体がアレだと分かっているとなぁ……!)
そんな少年の、一見思春期特有な挙動に「ふむ」と魔王サマは大きく頷いた。
「よし。明日の朝からは、みんなでラジオ体操を実施するのだ!」
次回、ようやく出発です。
展開が本当に鈍くて申し訳ないです。