10
その10です。
こんこん、と控えめなノック音が場の空気を変えた。
「はーい、どぞー」
部屋の主が間抜けな返事に応じて扉を開けたのは……一言で説明すれば、いわゆるメイドさんだった。
といっても、流行りの可愛いデザインとは対極にあるような古き良き時代の地味で古風な服装と、両目を隠した大量の前髪との相乗効果で、年代物のいわくつきな日本人形にメイド服を無理に着せたような一種異様な雰囲気を漂わせている。
そんな彼女は、モップとハタキと雑巾を手に持ったまま、床に座っている三人を無言でじっと凝視する。その途端、年長者二人は泡を食って立ち上がった。
「いやっ、いやいやいや」雪郷が視線を泳がせる。「そりゃ客を床に座らせて応対するのは失礼だってのは分かるよ? けど、これから一緒に働く者同士、腹を割って話すためには、こういう砕けた距離感で……」
「…………」
「いや、そこはマエカケさんがきちんと掃除してるのが分かってるからさ。そうでなければ、床に座らせるなんて絶対しないワケだし」
「…………」
「いい気分で騙されてくださいよ。はい。反省してます。次からは、ちゃんと向こうの応接セットで話をするようにするから」
「…………」
終始無言を貫いたメイドさんは、そのまま机の上を整理し始める。
ジャマになるから退避退避、と背中を押して急かしてくるヴェリヨへ、泰地は何より気になる疑問をぶつけた。
「なんで彼女が喋ってないのに会話が成立してるんです?」
「ああ――ま、ここで仕事して一週間も経てば、お前も分かるようになるよ」
全く答えになってない。
初の女性キャラが色物のようになってしまって申し訳ないです。
作者のやる気が空回っているようです。