106 帰宅までが宴会です
その106です。
問題は、この学校が片側二車線の国道のすぐ脇にあるという立地条件だ。
今時の学校は、変質者その他諸々の理由から「外部からの視線」を極力断つ傾向にある。必要以上にフェンスを高くしたり、プールを屋内にしてしまう事例も珍しくない。
北南高校でも、校舎と体育館を並べて遮蔽物とすることで、グラウンドが国道側から覗けないように配慮している。
では、校舎は丸見えなのかと問われれば、そこもきちんと対策が施されている。
家の玄関の前に細い柱を多数並べることで目隠しをしているのは、最近では当たり前の風景になっている。そこで北南高校も、国道に面した側に薄い板のようなものをずらりと並べることで、ほぼ真正面以外の視界を塞いだのだ。
……もう、お分かりだろう。
いつ見ても真っ白で列柱(っぽい板)が目立つ四階建ての巨大建築物なんて、十人が十人とも「パルテノン宮殿じゃん」と連想してしまうのが自然の理である。
行政側としては、肝煎りの施設がパルテノン呼ばわりされるのはご不満の様子で、SNSなどに投稿された北南校の写真に「パルテノン」という単語が添えてあると、即座に削除依頼をしているとかなんとか。
在校生としても、やはり他校の友達や親戚縁者に母校をパルテノン扱いでは愉快な気分になれないのは事実で、なるべく止めてくれるよう頼む者が多い。
とはいえ、やはり見た目のインパクトが強烈なので、遠からず「パルテノン」が北南校の別称として定着するのは避けられないであろう。
(……まあ、今は親睦会に集中しよう。うん)
井園はもう一度従兄弟に頭を下げると、再びいろはを囲む輪の中へ合流した。