100 汚れた部屋へ
その100です。
「いいんですか?」
「今度は何だ」
エレベーターの到着を待つ微妙な時間を狙ったように、雪郷が先程と同じ発音で質問する。上司相手にこの行動は、ある意味立派だろう。
「大陽寺のことですよ。アレ、なんか変に俺に突っかかってくるじゃないですか。あのままいけばトップになれるってのに、ストレスか何かですかね?」
会った人から「猛禽類の目」と例えられる奥墨の鋭い眼光で射抜かれても、雪郷は完全に受け流している。内心は分からないが、ここまで外見を取り繕えるのは天晴と誉めたいところである。
エレベーターの扉が開くと、雪郷が一足先に入って開ボタンを押す。なんだかんだで常識を弁えているから始末が悪い。
「気にする必要はない」重力の変化を感じると同時に奥墨は呟いた。「あいつはあいつなりの理想なり野望なりをもって公務に就いている。それが、我々とは少しばかり違う方向を向いているだけだ」
「それで変な勘違いされて、場を荒らされたら迷惑なんですが」
「対処できるだろう。お前にとっては禁煙より簡単な話だ」
「いや、これでも最近は本数減ってますよ」
「ほう? 豊浜《あの辺》は風が強いと聞いたが、タバコの火を消す勢いなのか?」
「仕事が忙しくて火を点ける暇がない、とは思えませんか?」
……数秒の沈黙の後、「思いませんよね」と雪郷は白旗を挙げた。
とうとう大台を超えてしまいました。
しかも、プロット的には
だいたい半分くらいなんですよね・・・・・・