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その8です。
冗談はこの辺にしといて、とボスはノートPCを手元に寄せる。
「この前の『研修』での報告書を読ませてもらった限りは、即戦力として現場に出てもらっても問題なさそうだ。ぶっちゃけた話、ルデル様がパワープレイで突破しても最悪良しとするつもりだったけど」
「いや、よくないでしょ」
「ヴェリヨと分断された後もなんとか冷静に対処していたようだし、全てこちらのドッキリだと看破したのもポイントが高い」
「ドッキリって……」
泰地のツッコミを無視して、雪郷は上司らしく淡々と所感を並べていった。相手を自分のペースに巻き込むタイプであるのは間違いない。
と、ボスはPCから視線を外すと、魔王サマと少年をまじまじと観察し始めた。
「……うん、軍帽被ってピカピカの勲章付けた子犬っぽい魔王サマってのは、やっぱり物凄いインパクトだな。その下の顔の印象が薄くなるのは――いや、その方が正解なのかな?」
「自分の顔が薄いのは自覚ありますけど、なんでわざわざ指摘されないといけないんですかね?」
プロレスラーもどきやダメ中年みたいなのに比べればまだマシだ、と心の中で毒づく泰地だが、それを見透かしたように雪郷がにやりと微笑む。
「そりゃもちろん、ここは仮にも芸能事務所なんだから、お前さんには芸能界デビューしてもらうからさね」
やっと状況が動き始めた感じです。
展開が遅い感じで申し訳ないです。