そうだ、旅に出よう!
本日2本目の投稿ですね。短いから書きやすいっす
前回のお話。
《カルマはスキル【変身】を得た!》
《ベンダバルはスキル【龍人化】を得た!》
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「ふむ。たしかに姿の問題はこれで十分じゃろ」
「角は…まぁ、獣人とかはいますし。龍の姿よりは目立ちませんね」
ブリッサが角を突っついたり、翼を握ったりしている。不快ではないが少しくすぐったいわい。
「バル爺!これで俺は人間の街に入れるんだよな!」
「むぅ、細かい事がわからんから心配だが…まあ、大丈夫じゃろう」
「じゃあ?」
「うむ。旅立つぞ。旅の準備をせなばならんな」
「じゃあ、報告も兼ねて明日【始まりの街】に行きましょう!」
「ブリッサ…我は恥ずかしいのだ。今日行ってきたばかりで、また明日行くなど」
「そういえば生活用品も少しもらいましたね…」
数日分とはいえ貰ったのは事実。まあ、この山の宝を少しやれば良いか。
「宝を売れば金になるな。どうやって持ち運ぶか…」
「俺が体内に収納すればいいんじゃない?」
カルマが宝の山に乗っかって、【四次元の胃】にしまう。たくさんあった財宝や武器が無くなった。
便利じゃのう。
「ふむ。これなら問題無いな」
「よし。これで明日に街へ行くだけだね」
ブリッサが持ってきた携帯食料を食べる。我ら魔物は周囲の魔素を時々取り込めば生きてられるからな。
しかし…街の話を聞くと美味しい物がたくさんあるようじゃ。是が非でも食べてみたいのう。明日試してみよう。
「そうじゃな。今日はもう寝るとしよう。ブリッサ、そこに【テント】とやらを作るといい。我に近すぎると踏み潰してしまいそうじゃからのう」
我は寝相とかを気にしたことはないからのう。これからは気をつけるとしよう。
「さて、我は寝るぞ」
「「おやすみー」」
ドスン!ボスン!ドンドン!!
なんじゃい。うるさいのう。
「「起きろーー!!」」
「…うぬ?」
そうじゃった。昨日から我には家族が出来たのじゃったな。誰かに起こされるなんぞほぼ500年ぶりじゃ。
我が独り立ちする1歳になるまで母が起こしていたような記憶がほんのちょっとだけあるわい。
「起きるから叩くのと我の上で暴れるのをやめい」
「「もうご飯済ましたから街に行こう!!」」
ぬう。寝起きなのに…。こいつら我が最強クラスの龍ということを忘れておらんか?
「しょうがない。ほれ、背中に乗れい」
「よし。しゅっぱーつ!」
そして、しばらく帰ってくることのない499年を共にした我が山に別れを告げた。まあ、思い入れも特にないから構わんがな。
「龍の姿で近くに降りたらまた騒ぎになるから少し遠くから徒歩で行かないと」
「めんどくさいのう」
「これからは旅なんだから慣れないと」
む…たしかに毎日飛ぶわけには行かないか。
「そろそろじゃ。降りる準備をせい」
主にブリッサが装備を整える。
ちなみに装備は軽い革の鎧に、【豊穣の杖】。
100年ほど前、我の山に来た魔法使いが置いて行ったのだ。
カルマは何を気に入ったのか片眼鏡を付けている。人の姿であれを付ければ我も渋みが増すやもしれんな。あとでこっそり試そう。
「よし、ここから2kmほどじゃな」
地面に降り立ち、程よく踏み固められた道を歩く。この辺はレベルが低い魔物ばかりで危険は無い。
「いや、バル爺。人の姿になりなよ」
「む?おお、忘れておったわい」
言われて気づき、【龍人化】する。ちょっと頑張ってみたら角も翼も隠せた。我は器用なのじゃ。
街の門が近くなってきた。長蛇の列ができておる。
む?そういえば審査が必要と言っておったな。
「並ぶか…」
我の龍生で初じゃ。長い列に並んで自分の番を待つなど。魔力操作で体内の魔力が漏れないようにしているから周りの人間にも害は無いな。
そうして並んでおよそ30分じゃ。
「おいおい…魔物が並んでるじゃん!そこのテメーのことだよ!」
二人の若造がカルマに絡んできたのじゃった。
片手剣士と槌使いだ。
「なんじゃ?お主ら」
「じじいに要はねえ」
「引っ込んでろ!」
「バル爺様になんて口を!」
ブリッサが我の前に立ち、二人を窘める。
「あー?なんだ女、文句あんのかよ?」
「まあまあ、落ち着けよ兄弟。よく見たらこいつ中々いい顔してるぜ?なぁお嬢ちゃん。俺たちと遊ば」
「その辺にしておけよクソども」
ほぉ、カルマが啖呵を切ったわい。珍しく怒ってるようじゃな。
「「す、スライムが喋ったぁぁぁ!」」
あー、そういえばカルマは「スライムだから良いんだ」とか「【変身】すると魔力がごっそり減る」とか言ってスライムの姿で来ておったな。
【変身】は消耗が激しいようじゃ。【龍人化】は最初に全魔力の1割くらいを持っていかれるくらいじゃ。大したことないわい。
「騒ぐな若造ども」
「このじじい…なめやがって!」
500年の間に戦った歴戦の勇者達と違い、蝿が止まるようなパンチを繰り出してくる。
「ほいっ」
人の姿で戦うのは初めてじゃが動体視力やステータスは変わらん。避けることは造作もない。
「うぎゃっ」
相手の腕をそらし、パンチの勢いで体勢が崩れたところを狙い、足をかけると面白いように転んだ。
「おや?勝手に転んでどうした?」
「くっそがぁ!」
「お前らも来い!」
もう一人の男が仲間を呼んだようじゃ。
ふうむ…力量の差を見切れない馬鹿はめんどくさい。