うろの中の女の子
うろ…なんかよくよく見ると怖いですよね
「…」
「気づいたようじゃな」
「ひっ!きゃぁぁぁぁ!!!」
「ぬぁぁぁぁぁ!!?」
いきなり叫ばれたためびっくりした。なんでそんな今にも食われそうな声を…
「目が覚めて、目の前にドラゴンがいたらそうなるよ。当たり前でしょ」
カルマがやれやれ…みたいな目線を向けてくる。
むむ…そんな怖い顔だったかのう…?
「お嬢さん!このドラゴンは怖くないよ!安心して!」
「ス、スライムが喋っ…がくっ…」
「あれ?お嬢さん!お嬢さん!」
結局驚かせては同じレベルではないか。まったく、カルマも我と変わらぬな。
「…はっ!」
数秒ほどでまた意識が戻った。
「…誰なの…?あなたたちは」
「俺は【スライム】のカルマ!そしてこっちの怖い顔の龍が」
「カルマの父、ベンダバルだ。驚かせてしまってすまないな。悪気は無かったのだ、許してくれ」
頭を下げてみる。人間界では悪いことをした時は頭を下げるか、お金を積むかのどっちかだと聞いたことがある。お金はあいにく持っていないのだ。
「…魔物が喋れるなんて…」
「そんなの【龍種】は当たり前じゃ。【スライム】は珍しいがの」
「そんなことより、お嬢さん、名前は?」
そんなことよりだと?むむむ…まあ良い。息子の言葉遣いはもうどうにもならん。
「私…?私は…ブリッサ」
「よろしくね!ブリッサ!」
「まぁ、自己紹介は別にいらん。なんでこの巣の中におったのじゃ?」
「…そうだ、私は蜘蛛たちに襲われた時に仲間とはぐれて…ここは危険よ!蜘蛛がいっぱいいるの!」
「蜘蛛ならもう全滅させたぞ?」
「え?」
「うむ、この森にいるのは小動物くらいだ。魔物はあと2カ月くらいは出ないだろう」
「ど、どどど、どういうこと?」
先ほどの戦闘の事を話す。
「少なくとも200匹はいた【蜘蛛】たちを…全滅?」
「うむ。この辺の【蜘蛛】など、たかが虫けらよ」
楽勝で朝飯前だ。
「そんな…私たちのパーティーはCランクで、それでも苦戦したのに…」
「さて、探しに行くとするかのう」
「どこに何を?」
カルマもブリッサも分かっていないようだった。
「ブリッサ、お主の仲間に決まっておろう」
「それで?いったいどうやるんだバル爺?」
「今からスキルを覚える。なに、簡単なスキルだ。ブリッサも覚えるといいじゃろう」
「私にも出来ますか?」
「まあ、見ておれ」
瞑想するような感じで自然体になり、周りの空間を占めている魔素の流れを感じ取る。
《スキル【魔力感知】を得ました》
「よし、上手く行ったわい」
今、自分がやった感覚を2人に教える。
「おー、これか?」
「む、難しいです…」
カルマはすぐに出来たが、ブリッサは上手くコツが掴めないようだ。
「ふむ…ブリッサよ、そこに座ってやってみなさい」
「はい。?」
ブリッサが座り、瞑想し始めると同時に自分の魔力を辺り一面に大量に流す。
「わわっ!なんだかゾクゾクします!」
悪意は込めていないのだが、なにぶん強い魔力だから変な感じだろう。しかし…魔力は掴めたはずだ。
「ふむ。我の魔力は感知できているのだから大丈夫だ。あとは練習あるのみよ」
「分かりました師匠」
ふむ。先生ではなく師匠も良いな。もしかして我には教える才能があるのでは?
いかんいかん、話が逸れた。それは後回しだ。
森全体に【魔力感知】を張り巡らす。
「…森にはいないようだな」
「街に戻ったのかも」
「どこだ?ブリッサ」
「【始まりの街】」