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生まれたそいつ。

…目の前に黒い渦が現れた。

我の記憶が正しければこれは魔物が生じる時に起こる現象だ。魔物は世界の歪みや、漂う高い魔力を元に黒い渦を無意識に構築し、生まれる。

無意識な故に世界の意思とも呼ばれる事もある。


「…楽しみだが…その分悲しいな」


分かっている。例えこのまま生まれたとしても我の魔力のせいですぐに死んでしまうだろう。

苦しむ姿を見るくらいならいっそのこと…


「…そんなことは出来ぬ」


殺生は好きじゃない。竜種にしては異例とも言える考え。そのため龍の友達すらいないのだ。

分かっているが、気持ちに嘘はつけない。


色々考えている内に渦が中心に収縮していく。どうやら成功するらしい。失敗の場合は霧散してしまうからな。


「さて、どんなやつが生まれてくるのやら…」


どんどん渦は小さくなっていく。最初は直径が2mはあったのに、今は人の頭の大きさ程しかない。渦が一度大きく振動し、光が辺りを包んだ。


「ぬぅ…」


目が眩む。ダメージはもちろん生じないがちょっとビックリした。さてさて、魔物は…


「…」


プルプルとした青い身体。少し横に潰した雫のような形。そして、開いているのか分からないような目。


「…お前が…新しい魔物か?」

「…?」


言葉が分からないのか、とぼけた(目が横棒のようで分かりにくいが)顔をしてこちらを見てくる。

そう、こいつは世界最弱と呼び声の高い魔物。

初心者のエサ、子供の遊び相手、最底辺の魔物etc…


全魔物中でダントツで不名誉な称号を付けられる種族。【スライム】


「…お前、話しは出来ないのか?」

「…おじさん…だれ?」


心に鋭い攻撃がグサッときた。龍生で1番辛かった一撃だ。


(そうか…我はおじさんになってしまったのか)


自分の感覚としてはまだ500歳。竜種の寿命は1万年を超える。それ故に自分は若造だと思っていたが…。


「お、おじさんは…ここの山の主。お前は…」

「スライム。名前は…貰ってないから無い」


そうか。親から生まれれば名前は親に付けてもらえるが、自然発生の場合は名付けが無いのか。そう言えば昔、母に付けて貰ったような…だめだ。思い出せない。


「おじさんは…何ていう名前なの?」


不意にスライムが問いかけてくる。


(むう、不味いな名前を忘れたなんて言ったら示しがつかん。しかし…)


「我は……ベンダバル。【暴風龍】ベンダバルだ」

「へぇ〜。カッコいい名前だねー!」


うむ、こいつは中々可愛い子供だな。咄嗟に思いついた名前だがカッコよかったようだ。


「おじさん、僕の名前は無いの?」


悲しそう(多分。怒ってはいないと思う)に体をプルプル震わせ、目から雫を零している。

ちょっと…いや、かなり可哀想に思えてきた。


「そうだな、ちょうど良い…いいか?まず、お主に親は存在しておらん。故に名前は無い」


瞬間、溢れ出る涙の量が倍になった。罪悪感がとんでもなく襲ってくる。


「だが…もし、お主が我を親と認めれば…我が…その…お主の親となってやってもいい」


恥ずかしい。久しぶりの会話なのにこんな子供相手に変なことを言っている。しかし、このスライムは我の魔力に満たされたこの空間でも平然としている。今までそんな奴はいなかった。こいつを逃したら我は一生孤独で終わってしまう。そんなのイヤだ。

しかし決めるのは本人だ。さて、返事は如何に?


「おじさんがお父さんになるの?」

「うむ。お主が望めばな」

「じゃあ、お願い!僕のお父さんになって!1人はイヤだ!」


驚いた。本当に親になれるとは。


「もう、一度決めたら変えられないぞ?」

「いいよー!それに…おじさんも寂しかったんでしょー?」

「ぎくっ…」

「あ、やっぱりー!!」


表情に出ていたのか?むぅ、今度から気をつけねば。


「それでー?僕の名前はなぁにー?」

「お主の名は…カルマ」

「カルマ…気に入ったぁ!」


どうやら気に入ってくれたようだ。ポヨポヨ跳ねて喜んでいる。


「うぉっほん!では、契約を結ぶぞ。我、【暴風龍】ベンダバルは、【スライム】カルマの親となることを誓う」

「目の前に変なのが出てるー。なにこれー」


おそらく契約に関してだろう。代わりに読んでやる。


「いいか、【暴風龍】ベンダバルが【スライム】カルマの親になることを提案しています。了承しますか…だから、YESを選びなさい」

「あーい」


気の抜けた返事をしてカルマがYESを選択する。


《【スライム】カルマが子供になりました》

《【暴風龍】ベンダバルの子供になりました》


それぞれの目に【世界の意思】が映された。


「…おお、やっと自由になれた」


契約が成立した瞬間、カルマの雰囲気が変わる。今まで純粋な子供のようだったのが一気に15,16歳ほどの雰囲気を醸し出した。


「…カルマ?」

「おう。俺はカルマだぞ。小せえ子供じゃなくてわりーなバル爺」


にひひと軽く笑う。

とりあえず自分の事を確認しているカルマを放っておいてステータス画面を覗く。


名前:ベンダバル

種族:暴風龍

年齢:500

所属:【ベンダバル家】

レベル:893


体力:15000

魔力:10000

攻撃力:16000

防御力:12000

俊敏力:10000


称号:【混沌の山の主】【英雄殺し】

【最強の魔物】【親】


加護:【風神の加護】【龍神の加護】


スキル:【暴風龍】【狂龍化】【風の障壁】


ふむ。いつ見ても能力値は惚れ惚れするな。どうやら今回のような契約を結ぶと【所属】と【称号】が変わるらしい。【無所属】だったのが【ベンダバル家】になり、さらに【親】の称号が付いている。恥ずかしいが…これは慣れるしかない。


「ついでにカルマのステータスを見てみよう」

「見たい見たい!どうやんだ!?」

「こうやるんだよ、どれどれ…」


やり方を教えてからステータスを覗き込む。


名前:カルマ

種族:スライム

年齢:30分

所属:【ベンダバル家】

レベル:1


体力:8

魔力:2

攻撃力:2

防御力:4

俊敏力:2


称号:【子】【最弱者】


加護:無し


スキル:【風耐性】【強魔力耐性】【四次元の胃】


「…おぅふ…」

この先かなり苦しい展開が目に見えた。

この世界での非戦闘の一般人の平均的なステータスはこのくらいです。


種族:人間

レベル:1

体力:60

魔力:50(使えない人もいる)

攻撃力:40

防御力:30

俊敏力:30


戦闘職の平均ステータス


種族:人間

レベル:30

体力:150

魔力:100

攻撃力:100

防御力:80

俊敏力:60

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