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村長の頼みごとでも引き受けるとするか。我にかかればチョチョイのチョイじゃ

村の宿で朝起きる。

朝食は人間の普通の感覚での一人前を全員が食べた。我ら魔物は飯などいらぬからのう。ま、一種の嗜好品というやつだな。


「朝ごはん何〜」

「カルマくん!顔と手を洗ってから来なさい!」

「ええい!朝から騒ぐな!」


寝ぼけ眼でそう言うカルマをブリッサが外の井戸へと連れて行き、ソフィアがそれに怒っている。

…騒々しい朝じゃ。これが毎日続くのか…。

まあ、賑やかと思うことにしよう。


「あ、おはようございます!バル爺様!」

「おはよ〜」

「遅いぞジジイ!」

「(黙れロリババア)…うむ。おはよう」


1人気に食わないのもいるが、朝から怒鳴るのも大人気ない。ここは大人の対応をして朝食をとるとしよう。


「おはようございます。暴風龍様とその御一行。朝ご飯は質素ですが…」

「気にするな村長。丹精込めて作った飯なら我らありがたく頂くからのう」

「ありがたきお言葉…」


さて、何故か軽く涙を流してる村長は置いておいて…


「頂くとするかのう」

「「「「いただきます」」」」


朝ごはんは蒸した米に味噌汁、そして焼いた魚にツケモノというしょっぱい物じゃった。


「ふむ…ふむふむ…美味いのう」

「うまい!」

「美味しいですねー」

「おい、村長よ。この料理を作るときにはな、下ごしらえをする時…」


うむ。ソフィアもアドバイスはしておるが食べ続けているのじゃから気に入っているのじゃろう。

今日の天気は晴天。雲一つない空が広がっておる。

飯を食ったら出るとしようかのう…


「さて、今日は朝飯を食べたら村を出て東へと行くが…何かあるか?」

「俺は別にないや」

「私もありません」

「余はあるぞ。まずマトモな地図が必要だ。なんでギルドから白紙の地図をもらったのだ!!?アホの極みなのか!?お主ら!」


もらった地図はギルマスが勝手にくれたから受け取っただけじゃから我らのせいでは無いような…。

いや、ここでゴネるとまた「確認しなかったなどありえんからな!」なんて言われそうじゃ。大人しくしておこう。


「まったく!次はデカイ町に寄るぞ。少なくともギルドの支部がある町だ。そこで地図をもらうとしよう」

「「「…はい」」」


そして朝飯を食い終えたところに村長が訪ねてきた。


「あの〜…暴風龍様、私の悩みを聞いてはもらえませんでしょうか?」

「ぬ?何じゃ?」


まあ、急ぐ旅でもないからよいじゃろ。


「カルマ、ブリッサ。お主らは旅の準備をしておれ。ソフィア。お前はこっちに来い」

「偉そうに…」


ぶつぶつ文句を言ってるソフィアにチョップをすると村長は目を丸くしておったわい。まあ、賢王を殴れる者は中々おらんからのう。


「して?悩み事とは何ぞや」

「村の畑のことなのです」

「ふむ…」


畑か…特に見てなかったから我はよく分からんがソフィアは何か思い当たりがあるようじゃな。


「この土地は元々栄養が少ない土地だ。しかも近くの井戸を見た感じだと近頃は雨も降っていないな?」

「はい。そうなのです!このままでは作物が育たず村が…」


なるほど…それは大変じゃな。


「それをどうにかすればよいのじゃな?」

「え?」

「日照りと栄養をどうにかすればいいんだろ?」

「あ、は、はい!」


ああ、言葉足らずじゃったか。村長がやっと納得したようじゃ。


「簡単じゃよ。ソフィアは地面を任せたぞ」

「分かっている」

「…」

「いいか?村長よ。我らはこれから問題を解決するから村人を畑から離れた広場に集めよ。そうしないと被害が出ても知らんからな?作戦はこうだ…まず…」

「そ、そんなことが…!!」


何をするのかまったく分かっていなかった村長はポカーンとしていたが作戦を聞いてから半信半疑だったものの驚くあまり倒れ込んでしまった。


「決行は30分後。急ぐがよいぞ」

「は、はい…」


さて、準備するかのう。


「ブリッサ。馬車は濡れないようにまだ小屋に入れて置いてよいぞ」

「あれ?すぐに出発しないんですか?」

「これから暴風雨がこの辺りを襲うからのう」


我の二つ名のすごさ。見せてやろう。


「早く広場に集まれ!」

「なんだよいきなり…」「集会か?」「それなら村民全員なんてありえないだろ…」


口々に憶測を言いながらも30分以内に村民は全員集まったようじゃ。まあ、人口も少ないから比較的簡単と言えば簡単か。


「さて、今からお主らの村の土地の栄養問題を解決する。怪我をしたくなければその線から出ないことを薦める」

「どの線だ?」


ズバッ!!


「このサークルじゃ」

「うおお!?いきなり地面が抉れた…」


なんてことはない。超速で石を飛ばして抉っただけじゃから初歩じゃ初歩。


「さて、始めるぞ」

「ふん。さっさとしろ」


口の減らん亀じゃ。まあよい。時間が勿体無いし、元の姿に戻るとしよう。


「はぁぁぁぁ!!」

「ふんっ!」


魔力を解放すると我とソフィアの姿が変わる。


「さあ行くぞ!【暴風龍】」

『超級防護魔法【魔法盾】!超級自然魔法…【土壌改良】【地盤操作】!』


ソフィアの防護魔法が広場を包み込む。これならまあ、何とかなるじゃろ。

そして我の魔法によりこの付近から雲を呼び寄せた。少し離れた場所にある湖からも空気を集めたから水分もあるはずじゃ。


「え…」「雨だ…」「うぉぉ!!!」


突然の雨で驚いておるのう。まあ、興奮のあまり線から出ないとよいが…。


『カルマよ。線から出そうなやつがいたら注意してやれい』

「あいよ」


ふむ。ソフィアが気を配ってくれたようじゃ。なら問題ないな。続けよう。


「魔力解放!!」


自然魔法系に変換した魔力を空に打ち上げ、空中で爆散させる。台風のような風と雨により、村とその周囲の地面へと魔力が降り注がれる。


『は!』


ソフィアの地盤操作で村の近くにため池が作られる。形も綺麗だし隙間がない。400年は持つじゃろう。


「すげえ…」

「あ!出ちゃダメだぞ!」

「え?うわぁぁぁぁ!」

「あ!くそっ!バル爺!」


む?おお。村人が吹き飛ばされておる。出るなと言ったのに何をしとるんじゃ。


「やれやれ」


しょうがないからあのアホの周囲だけ風を消すか。


「え…風が止まった…?」

「お主が危険じゃったからじゃ。それとも?このまま快適な風の旅を続けたかったか?」

「!い、いいえ!!」

「次はないぞ?」


突然脇に現れた我に驚いたようじゃな。まったく。礼くらい言わんかい。


「そろそろいいかのう…」

『仕上げだ。【森林創造】』


最後にソフィアが村の近くに森林を生み出した。


「さて村長よ。これでどうにかなるじゃろ?」

「…!!!」


ああ。驚いて声も出ないようじゃな。

さてと、村を出るとしようかのう。

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