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いざ、行かん!大いなる旅へ…!!

「さて、これで出発の準備は整ったぞい。ギルマスよ、馬車…いや、亀車を倉庫から出すのじゃ」

「…」


ぬ?何故口を開けたまま固まっておるのじゃ。早う荷車を持って来ないか。


「バル爺様…当たり前ですよ…」

「どういう事じゃ?ブリッサよ」

「ふつーの人は賢王なんて見たことすらないですし、そんな強力な魔物を目の前にしたら動けませんよ!」


おおっ!?なんで我が怒られなければいけないのか…ソフィア!お主のせいじゃぞ!


『ふんっ。余を使うこと自体がおかしい話なのだ。こうなることすら予測出来ないとは…世間知らずにも程があるな?我が主(・・・)よ』


ぐぬぬ…嫌味ったらしく言いよってからに…。もういい!話を進めるしかなかろう…。


「ギルマスよ。そろそろいいかのう」

「はっ…やっと動けるようになった…」


ソフィアの周りに薄ーく結界を張ってやった。これで漏れ出すオーラで動けなくなるやつはおらんはず…。


「お待ちいたしました。どうぞ」


ふむ…いつ見ても立派じゃのう。我が乗るのに相応しいわい。さて、問題はどうやって引かせるか…。馬用の縄じゃ小さいし…


『そんな事だろうと思ったよ。仕方がないからこの偉大なる賢王がサービスしてやろう』


ソフィアがそう言い、魔力を練ると甲羅の上にある蔦が成長していく。ほぉ…自然魔法(超級)か。ブリッサより高位の魔法じゃな。詠唱の必要が無い上に消費魔力は少ない。しかも出来る事の範囲がかなり広い。


「アレくらい私も出来るようにいつかは…」

「そうじゃな。ソフィアに習うといい。やつは自然魔法については我より卓越しておる」

『何?そこの小娘は余と同じ系統の魔法使いなのか?』

「そうじゃ。色々と教えてやれ」

『ふん。小娘よ、余に教えてもらえる事に感謝しろよ』

「ブリッサは我の【娘】だ。【ペット】であるお前よりも上位ということを頭に入れておけ」

『ぐっ…』


【家族】の構成員である以上、ある程度の上下関係は存在する。もちろん、【ペット】など、一部を除けば本人の意思で命令とかは拒否したり、家族から抜けることはできるがのう。


「バル爺様…教わる立場だからいいんですよ。ごめんなさいね、ソフィアさん」

『…ソフィアでよい。呼び捨てで呼ぶが構わんな?』

「はい!よろしくお願いしますね!」

「なー、そろそろ出発しよーぜ。俺は待つのも飽きて来たぞ」


カルマはじっとしてられんからのう。まぁ、まだ子供だし仕方がないことじゃ。


「行くとするか…行け、ソフィアよ。目的地は…東じゃ!」

『せめて具体的な街とか村にしろよ…』

「東だと【ヤマト】という大きな国がありますね。独自の文化があるそうですから、そこに行かれてみては?」

「ギルマスよ、お主の案を採用するとしよう!行け!ソフィアよ!」

『へいへい』


こうして我らが亀車は大いなる旅の第一歩を踏み出したのじゃった。



ガタガタと荷車は揺れる…と思いきや案外揺れない。何故じゃ?


『揺れる方が良かったのか?』

「ぬ?何かしていたのか」

『自然魔法の一つ、【重力操作】で重さをほぼ0にして、横にある翼の部分に風を当てることで浮かせているのだ。高度な技だから余以外には出来ぬがな』


ふむ。調べると確かに魔法を感じた。しかも上位魔法を複数じゃ。【重力操作】【風魔法】【防護魔法】【空間把握】【空間操作】【身体強化】ってところかのう?


「暇だし、ソフィアの能力でも見るか」

『は?何勝手な事を』

「ほれ」

『あ!?』

「家族になると自在に見れちゃうんですよ」

「俺のも見れるから見ていいぜ」

「私のも見れますよ」

「我のもじゃ。家族だし、その辺は隠さんでも良いじゃろ?」

『…まあよい。他の奴には見せるなよ。珍しい魔法や特性ばかりだからな!』


細かいジジイじゃのう。どれどれ…


名前:ソフィア

種族:万年亀(マンネンガメ)

年齢:1023

所属:【ベンダバル家】

レベル:605


体力:10425

魔力:4200

攻撃力:8650

防御力:15060

俊敏力:3510


称号:【賢王】【ペット】


加護:【自然神の加護】【知力神の加護】


スキル:【防護魔法(超級)】【魔法砲(マジックキャノン)】【自然魔法(超級)】【身体強化】


ふむ。まあまあな強さじゃのう。やはり防御力の高さは素晴らしいもんじゃ。我よりも上だ。


『まだ固有スキルは無い。もう少しでお主の【暴風龍】のようなスキルが生まれるはずだ』

「ま、倍近く生きていても強さには比例しないってことかのう。カルマ、ブリッサ、お主らはまだ大丈夫じな。すぐこの亀なんぞ追い抜けるぞ」

「うおっしゃぁ!頑張るぜ!」

「が、頑張ります!!」

『…年上は敬うものだろ!』


亀公が何か言ってる気がするが…気のせいじゃろ。


「お」

「あれは…【カルネロ】という村ですね」

『最寄りの村だ。どうせすぐに暗くなる。泊まれるうちは、村とかに泊まった方が良い』


そうするかのう。金には困ってないしのう。

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