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賢王。お主、我らの馬車を引け

【ブリッサの日記P1より】

魔歴1029年4月10日。天気:快晴


私はブリッサ。中級くらいの冒険者です。

ひょんなことから、つい昨日の事ですが、世界最強とも呼び声高き【暴風龍】ベンダバル様…バル爺様の子供となった、ごく普通の女の子です。


今日は、旅に出る際の馬車引くのに必要な馬の代わりとなる動物を探しに来ました。

正直なところ、引く力の強い【引き雄牛(プルブル)】でも仲間にするのかなーと思っていました。


でも…


それ(・・)は動いていました。


最初に見た時は山が動いてるのかと思いました。だって、龍のお姿に戻ったバル爺様以上に大きかったから。

「ふむ。図体はとりあえず立派じゃのう」ってバル爺様は言ってましたけど…。

賢王と呼ばれる森の魔物。見た時に感じました。バル爺様も本気を出さないといけない相手だと。


『逃げ場はない。許す気もない。さぁ、森の肥えとなるがよい!』


そう賢王が言い放ち…


戦闘が始まったんです。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「そうか、賢王の正体は亀だったのか」

「我が子供達よ。すまんが下がってくれ。庇っている余裕はなさそうだ」


我は最強の部類だが、それは一対一の状況での強さであり、庇いながらの戦いには長けていない。遠ざけることが一番安全な策であろう。


「カルマよ。もし我が負けそうなら森を抜け、ギルドへと向かえ」

「そんな!負けそうならなんて言うなよ!バル爺は最強なんだろ!?」

「阿呆。話をちゃんと聞け。もし(・・)と言ったであろうが」


ニヤリと自信ありげに笑みを見せ、賢王へと向き直る。


「わざわざ待っててくれて感謝する」

『貴様を殺し、そのあと奴らを消せばいい話だ』

「ほぉ?我だけではなく我が子供達を殺すと?」


流石に頭にくるのう。お主、我が誰だか分かっておるのかのう?


「…やってみろ!」


初手、スキル【暴風龍】を発動させ、巨体な竜巻を森に巻き起こす。木々や石が高速で回転する渦の中ではHPはどんどん削られていく。森ではこの技が一番効くはずじゃ。


「…どうやら言うだけの事はあるようじゃな」

『ふっ、笑止。まさかこれくらいでこの賢王を倒せるとでも?』


体を甲羅にしまい、完全防御の形をとって凌ぎ切ったようじゃ。


『こちらの番だろ?』

「むっ!」


甲羅に潜っている間にエネルギーを貯めていたのか!やつの口から出ている光が膨大なエネルギーを物語っているのう。


『喰らうが良い』

「小癪な!」


放たれたエネルギーに対し、【暴風龍】【風の障壁】を発動させる。


「ふむ…中々いい攻撃だったぞ?」

『トカゲが…』


ふむ…どうするか。肉弾戦も効果は薄い。しかし【暴風龍】は効かない。さてさて…


「進化でもするかのう」

『は?』


擬人化では力が弱い。龍の姿では力が分散してしまう。ならどうするか?簡単だ。足して2で割れば良い。


「とくと見よ…!!【龍人化】!!」


擬人化のように、エネルギーが外に漏れないように力を消すのではなく、抑えながらサイズを小さくする。


「…ふぅ。こんなもんかのう」

『ありえん…スキルを一朝一夕で獲得するなど…』

「不可能を可能にできずに【最強】は名乗れん。たかが【賢王】で満足してるお主には理解できぬかもしれんがな」


ふむ。力がみなぎる。今なら…


「お主程度、相手にもならんな。最後の警告だ。お主、我が配下となり、馬車を引け」

『ふざけるなぁぁぁぁ!!!』

「愚か者が」


光線を片手で受け止め、過度なエネルギーの消費で動けない賢王の頭を潰す勢いで魔力を込めた回し蹴りを顔の数ミリ近く(・・・・・・・)で止めた。


「勝負ありだな?」

『…お主の勝ちじゃ。詳しく話を聞かせい』

「「やったぁ!バル爺(様)が勝った!!!」」


ふう。久しぶりに五分以上戦ったわい。中々見所のあるやつじゃな。

簡単な治癒魔法で傷を癒した後、本題に入る。


「…というわけで、お主が馬の代わりになれば良いと思ったのじゃよ」

『…アホか』

「なんじゃと!?」

『賢王を馬代わりにするなど普通は考えん。アホと言っても差し支えなかろう?』

「ぐぬぬ…もういっぺん痛い目に合いたいようじゃな?覚悟せい!」

「ストップストップ。バル爺…話が進まないよ」


そうは言えどもこいつが…


「とりあえず賢王よ。我が祖父であるベンダバルに負けたのに不敬だよな?あんたも賢王なんて呼ばれてるんだ。自分に勝った相手に敬意は払うくらいの知恵はあるんだろ?」


おお。カルマよ。それは…逆効果というやつではないか?


『このスライム風情が!!』

「やんのか!?スライムなめんなよ!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ブリッサの日記P2より】


こうして【ベンダバル家】の【ペット】として森の賢王だった亀、【ソフィア】が仲間になったんです。

ソフィアはサイズを自在に変えられるので2mほどの大きさになり、馬車を引いてくれます。


これからの旅が楽しみです。

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