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我史上初、街の中を楽しむ

「ほぉ〜。これが街か…」

「すげー人の数だな」

「毎日こんなものですよ?」

「え?何か祭りとかじゃないの?」


ふむ。確かに人が多いが、昔上空から見た王都はこれの3倍はいたな。

だが…


「上から見るのとは随分違うのじゃな」

「そうですね。上から見たことはありませんけど…」


今度ブリッサとカルマを昼のうちに上空に連れて行ってみるかのう。

怖くて下が見れないかもしれんがのう。


「なんだあれ?」

「確か『やたい』という店の一種じゃな」

「美味そう!」

「ま、待って!」


カルマが売っていた串肉をパクっと食べた瞬間、


「こらぁぁ!!」


うぉ!?なんじゃ?耳元で怒鳴るな!


「オイラの商品を金を払わずに食うとは…良い覚悟してんな?」

「ぬ?食べちゃダメだったのか?」

「金を払えってんだよ!」


かね?ああ、そう言えば人間たちは金貨や銀貨を媒介にして売り買いを成立させておるらしいのう。


「ごめんなさい、店主さん。この人たちは田舎にいたからよく分かってないの」

「通貨を知らないってどんな辺境だよ!」

「怒鳴るな小僧」


我は耳が良いから痛いんじゃ。


「偉そうにしてねえで金を払え!鉄貨3枚だ!」

「あいにく鉄貨などもっておらん。これでよいか?」


カルマに【四次元の胃】から金の欠片を出させる。


「ちょ、だ、出し過ぎです!バル爺様!ごめんなさい店主さん、はい鉄貨3枚」

「…」


なんか分からんが開いた口が塞がっておらん。壊れた人形みたいじゃぞ?ふっ、変な顔じゃのう。


「二人とも…お話があります」


店主の顔で笑っていると横にいたブリッサに路地に連れ込まれた。


「いいですか?人間の街では色んな物が売られていたり、飾られていますが、勝手に取ることは出来ません!お金という物が存在するからです!」


そして始まるブリッサの講義。とても長ーく感じた。まとめるとこうだな。


勝手に取るな、食うな。物を壊すな。人を襲うな。人を脅すな。お店や公共の建物などを除いて個人の建物に入るな。お金や価値の高い物を気軽に出すなetc…


…実に窮屈じゃな。


「人間ってめんどくさいんだね…」

「カルマよ。それを受け入れねば共存などはもちろん、旅なども出来ぬぞ」


慣れるしかないのかぁ…と、ぼやくカルマ。


「とりあえず、お金は今日は私が出しますから勝手な行動はやめてくださいね!人間には色んな人がいます。良い人ばかりじゃないんですよ!」


シュン…と自分が小さくなったように感じる。

反省するかのう。


「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」

「ちょーっと待ってくれよ?お嬢ちゃん」


む?誰じゃ?大通りに戻る道に3人の男が立っていた。前に立っている男はここの街の中でも特に服装が綺麗じゃから貴族の類かのう。後ろの2人は護衛か。


「何ですか?」

「いやー。さっき屋台の所で見ちゃってさぁ?お金、たくさん持ってるっぽいじゃん?」

「持ってません」


ブリッサがきっぱりと言い切る。少しイラついているようじゃな。


「嘘は良くないね?さっきまでの会話も聞いてたし…しかも、1匹スライムだったなんて知れたら…いくら最弱な魔物でも騒ぎになるんじゃない?」


ニヤニヤと薄汚い笑みを浮かべて近づいてくる。


「俺様に黙ってて欲しかったら…ほら、さっきみたいにきんでいいよ?」

「お前みたいなクズに払うものは持ってねえよ」


おお、門の前で馬鹿貴族ジョルーニに絡まれた時もそうだが、どこでそんな言葉覚えてるんじゃ?


「スライムが喋れるだと?へえ、珍しいな。売れば少しは金になりそうだ」


それにしても容姿も言動も馬鹿貴族ジョルーニと似ておるのう?もしかして…


「お主…ジョルーニとかいう馬鹿の兄弟か?」

「兄さんを馬鹿扱いだと?おい!こいつらを捕まえろ!死刑だ!」

「「はっ」」


屈強そうな男たちが迫ってくる。まぁ…屈強そうな(・・・)だけじゃがな。


「ブリッサ、カルマ。下がっておれ」


こういう馬鹿は一回痛い目に遭わないと治らん。遭ったとしても治るかは知らんが。


「【暴風龍】」

「え?」


突如小さな竜巻が現れる。路地の幅しかない小さな竜巻だが、力は巨大だ。2人の護衛を上空に吹き飛ばし、近くの湖にまで運んでやったわい。


「は?おい!俺様の護衛をどこにやった!」

「心配するな。この街の近くの湖で泳いでおるじゃろう。死んでおらんからな」

「ふ、ふざけんなジジイ!」


剣を抜いて斬りかかってくる。じゃが…型の綺麗さに拘っただけのお飾り剣術じゃな。これくらいなら避けなくても傷すらつかんが…お灸を据えるか。


「なってないのう。ほれ、脇が空いとるぞ」

「くっ!?くそっ!これなら!」

「今度は足元がお留守じゃ」

「ぐえっ!くぅ、まだだ!」

「遅いのう。毎日稽古をしとるのか?この様子じゃと基礎トレーニングを欠かしておるな?じゃからこんな蝿が止まるようなスピードなんじゃよ」

「うるさい!お前は打ち首にしてやる!」

「はぁ…力量も見抜けん。才能もない。そして…誰にでも平等な努力すらせん。今の貴様に価値はない。出直すが良い!」


先程と同じように竜巻で湖に飛ばす。これに懲りて行いを改めるといいのじゃが…。


「さぁ、今度こそ街を楽しむぞ」

「やっとか…あいつで遊びすぎだよ」

「…厄介ごとになりそうですね。杞憂だと良いのですが…」


この時我は、この出来事が後に起こる大事件に繋がるなんて夢にも思っておらんかった。しかし、それはまた後で語るとしよう。

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