街にやっと入れたよ!…捕まってるけど
「ふむ…落第じゃな」
「ぜぇ、ゼェ、く、クソが…」
地面に座り込む五人の馬鹿者達を見下ろしながらそう評価してやる。
残念ながら筋が悪いし、礼儀がなってない。
我の弟子にはいらんのう。
「もう分かったろう?これに懲りたら人を馬鹿にするのも魔物を下に見るのもやめい」
「…にがだ…スライムなんかを息子扱いしてるクソじじいが!!」
「…おい」
急に騒いでいた男が静かになる。カルマが首を片手で持って体ごと持ち上げている。
「お前らが俺をどうこう言おうと構わないけどよ…バル爺を馬鹿にすんじゃ…ねえ!!!」
【水鉄砲】を腹、腕、足に撃ち込む。おいおい…確かお主の【水鉄砲】はレベルが上がったおかげで木の幹を凹ませるくらいの威力だったはず…。
ゴキ!ボキィ!
と鈍い音が聞こえる。
ああ、やりすぎじゃないかのう?
「………」
あ、大丈夫じゃ。死んどらん死んどらん。
「またバル爺とブリッサ姉のことを馬鹿にしてみろ。地獄を見せてやるよ」
どこで覚えたそんな台詞。我はそんなこと教育しとらんぞ。まだ二日目だし。
「お前ら!何をしてんだ!」
門の方から身なりのそこそこ良い、かなり太った男が走ってくる。
「こいつらが絡んで来たのじゃ。我らは火の粉を振り払っただけじゃ」
「んなことわどうでもいい!この方をどなたと心得る!この領地を治めるジュート様の御子息、ジョルーニ様であるぞ!」
誰だよ。我には関係ないのう。
「それこそどうでも良い。我らは審査を待ってただけじゃ。それに…早うそいつを運ばんと死ぬぞ?」
「はっ!ジョルーニ様!」
数人の門兵が担架で運び、太った男もドタドタと走って行った。
「騒がしかったのう…」
さて、大人しく並んでるとするか。
「カルマよ。先程は嬉しかったぞ」
「私も。カルマが私のことブリッサ姉だって」
「…うるさい。威張ってるあいつらが気に食わなかっただけだよ!」
カルマはそう言うとブリッサのフードの中に入ってしまった。あそこがお気に入りらしい。
ブリッサは首への負担が大きそうじゃがな。
「あの…」
「ぬ?」
「とりあえず…大人しく来てもらえますか?」
数人の兵士に囲まれていた。悪いことはしてないんじゃがのう。
「と、言うわけじゃ。あの若造どもが我の息子を悪く言い、さらに娘に下品な誘いを持ちかけ、手を出そうとした。だからやり返した。それだけじゃ」
経緯を説明し、周りの人の証言と合っていると確認出来たようで、とりあえず手錠は外してくれた。
「あやつは何者なんじゃ?偉そうにしてたが」
「ああ…これは誰にも言うなよ。まぁみんな思ってることだが」
兵士達を曰く、あいつはここの領主の息子。
領主は聡明で素晴らしい人間らしい。しかし、その息子は毎日遊び歩き、迷惑ばかりかけている。この間も問題を起こしたようだ。
「ま、領主様はその時でも問題を揉み消したりはしなかったのがカッコいいんだよな。ふつーは揉み消そうと金を積むのに…素晴らしい人だよ」
「でもあの領主の息子、自分の貯金使って釈放されてたけどな」
「ふむ…バカは治らんようじゃな」
色々と話を聞き、衛兵所を出る。
「あ、そうだ。一応気をつけろよ。街中でも危険はあるからな」
あの若造ならやりかねんな。注告通り、気をつけるとしよう。
「まずはギルドに顔を出すかのう」
「あっちだよ!」
ブリッサの案内でギルドへと向かう。街の門から5分程の往来の激しい通りに建物はあった。
「ギルドマスターいますか?」
「おや、ブリッサさん。あなたは確か【暴風龍】様に着いて行ったはずじゃ…」
受付にいる女性が戸惑っておる。
「はい。いますよ?ほら」
…我の人間の姿を見せてもさらに戸惑うだけじゃろ。まぁ、龍に戻るわけにはいかんから角と翼を見せれば良いか。
「ほれ」
収納していた角と翼を見せる。
「しょ、少々お待ちください!!」
大慌てで呼びに行ったわい。何故か罪悪感があるのう。
「これはこれはベンダバル様!本日はどのようなご用件でしょうか?」
「昨日、ブリッサが世話になった分、言いにくいのだが…我らはこれから旅に出ようと思ってのう」
「ほぉ」
「旅に必要な準備をして欲しいのじゃ。代金は…カルマ、アレを出しとくれ」
んー。とかやる気のない声を発しながらも【四次元の胃】の中から【魔剣リキュール】をテーブルに上げる。
「こ、ここ、これは…!!」
「200年くらい前に我に挑んだ者の忘れ物じゃ。準備をしてくれれば、お主にやろう」
「も、貰いすぎですよ!これは国宝級ですよ!?」
「我に取ってはガラクタ級じゃ」
人間の姿で我が使うのは別の武器じゃし、ブリッサは魔法使い。カルマは魔力がもっと増えないうちは人型では戦わんそうじゃ。
「それで?頼めるかのう」
「分かりました。私が、誠心誠意、全力で準備させていただきます!」
おお。張り切っとるわい。
「夕方には終わらせますので、どうぞご自由に街でお楽しみください。これをどうぞ」
首から提げられるカードを貰った。なんじゃこれ?
「これはギルドの客であるという証明です。しかもお渡しした金のカードはギルドマスターだけが発行できる最大ランクのカードですので、どの店も無下に扱われる事はないでしょう」
まず、無下に扱う店があるのは良くないのではないかのう?まぁ、どうでもいいが。
「それを持っている人に危害を加えるという事はギルドを敵に回すという事ですから、首から提げておけば安全ですよ。ベンダバル様には不要かもしれませんが…」
「助かるのう。我も問題は起こしたくないからのう」
ま、これで幾分かはマシになる。街に遊びに行くとするか。
「カルマ行くぞ。ブリッサ、案内を頼む」
「はーい」
「街だぁ!!」
さてさて…どうなることやら?




