最強の龍の悩み事
我が名は…何だったか…。
悠久の時を過ごしたせいで名前すら忘れてしまったようだ。
自分の体を覆う赤い鱗を見る。見ただけでその鱗が高い防御力を有していることは分かる。さらにでかい棘の付いている尻尾を眺める。触れるだけで毒と麻痺の状態にできる。恐ろしい武器。我は望んで得た物では無い。
周りを見渡すとキラキラと輝く金銀財宝。それに加えて様々な名剣や魔法の杖、鎧に、高価なアイテム類。
欲しい物など無い。望んでいなくても我の元に冒険者達が来る。我を倒すことなど出来ぬのにな。そして勝手に負けを認めては命乞いをし、アイテム置いていく。
攻撃をした事はない。信じてもらえないかもしれないが我は誰も傷つけたくは無いのだ。
ただ…我は強すぎた。ある時、少し声をかけようとしたら話すのが久しぶりで大音量で話しかけてしまい、鎧やら剣を粉々にしてしまった。
また、ある時は、少しバランスを崩した時に尻餅をついてしまい、その衝撃で出来た地割れに冒険者が飲み込まれていった。
そんな事が100年程続いた頃。我の元に来る者はいなくなった。そんな退屈な日々が今日でおよそ300年続いた。今日も相変わらず我の元には誰も来ない。
そう、勝手に決めつけていた。
ああ、正しく言えば半分は当たっていた。来ることは確かに無かった。しかし…そいつはそこに生まれたのだった。
後で知った事だが、その日は我がこの世に生を授かりちょうど500年。その内、たった1人で過ごすこと300年。
我の500歳の誕生日に、最高のプレゼントとなるそいつはこの世に生を授かった。