物語の始まり。
十五になった時、私は売られた。
村では一番の美人と評され、いずれは高位の人の妻にもなり得るだろうと、言われていた。
だから、高く売れた。ものすごく。
市場に裸のまま、他の女の人と一緒に立たされた。
主に慰める者として、売られた。
店頭に立った初日、他の女の人が二人買われた。
来ている服は裕福そうだが、その奥に潜む心は汚れきっていることが目に見えて分かる。そんな男に買われていた。
二日目、早朝。まだ肌寒いなか、また立たされた。
ご飯もろくに食べていない。水も飲んでいない。
これは何の辱しめだろうか。
下心丸出しの男たちが私を見てくる。
恥ずかしいというより、恐い。
お昼頃。一人の青年が店に来た。
裕福そうな人だった。
彼は私を見るなり、「買った」と言った。
商人に手続きをし、10分としないうちに私を馬車に乗せ、彼の家に向かうことになった。
「君、名前は」
彼が訊いてきた。
「サクラです」
私は答えた。
「そうか」
彼は短く答えた。
私はこれから、ただの道具として扱われるのだろう。
暗い暗い地獄を這うような生活が始まるのだろう。
「入りたまえ」
「はい」
豪華そうな家の中に私は足を踏み入れた。