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第6話 初依頼

ウルフ狩りでレベル5に達した俺だが、未だに弓と魔晶石を買った借金が残っている。その額50000ティル。この世界の通貨であるティルは日本の円とほぼ同じ価値。物価も似たようなものだ。

つまり50000ティルは一日で返せるような額ではないのだが―――

 「タクミ、依頼を受けてきたのですよ」

 この世界には冒険者という職業があるのだ。フリーター的な存在なのだが、街と市民を守るために命がけで魔物やモンスターを倒すので信頼されている。だから、報奨金もかなり高額だ。

 「ありがとう、詳細を教えてくれよ」

 「報奨金80000ティル、洞窟に住みついたシルバーベアーの討伐です」

 「冒険者らしくなってきたな!」

 このようにお釣りが出るほど高額だ。さて、レベル5に達したことで俺はスキルを覚えていた。冒険者証明書のスキル欄には、

スキル名「フレイムアロー」矢が火を帯びて衝突時火が飛び散る。

 初期スキルの定番だな。

 「ところで、スキルを使うにはどうしたらいいんだ?」

 「攻撃時にスキル名を言うと発動するのです。慣れてくると言わなくても発動するようになるのです」

 なるほど、技名をかっこよく叫ぶのは中二心をくすぐるが、さすがに恥ずかしい。これは努力あるのみだ。俺たちは街の外にある洞窟へ向かった。

 

 「シルバーベア―っていうのはどういうモンスターなんだ」

 洞窟の入り口に到着し、俺はノエルに聞いた。

 「体長約2m。全身が長い銀色の体毛で覆われていて、鋭い爪で攻撃してくるのです。体毛で爪が隠れていることに注意です」

 始めの頃は戦闘にビビっていたわけだが、積極的に質問などしてしまった。先日のウルフ狩りによって徐々に自信がついてきた気がする。うん、いい兆しだ。

 「それはわかったが、俺たちって後衛だろ。前衛がいないのにどういう戦闘スタイルをとるんだ?」

 後衛というのは前衛がいてこそ真価を発揮するはずだ。前衛をサポートすることで効率的に戦闘を進められる。前の世界でひきもっていた時にプレイしていたゲームによって学習済みだ。

 「ウルフの時と同じくタクミが囮になって一気に私の黒魔道で一掃するのです」

 「今度こそ俺が死ぬぞ!」

 またブラックノエルだ!あの時は俺の逃げ足の速さが光ったが、もうあの思いはしたくない!

 「冗談ですよ」

 ノエルはふふっと少し意地悪く笑いながら言った。

「前衛の問題はいつか解決する必要がありますが、今は置いといて依頼をこなしましょう。私が少し前に出て風魔法で足止めをします。タクミは後ろから弓で攻撃してください」

 「おう。わかったよ」

 さあ、いざ初依頼!


 「あれがシルバーベアーです」

 ノエルが言っていた通りの特徴だ。何となく名前でわかるけど。

 「では私が足止めをするので、タクミはスキルで攻撃するのですよ」

 そう言ってノエルは俺の少し前に立つ。シルバーベアーがノエルに気付き襲い掛かる。

 「サイクロン!」

 ノエルが魔法を使うと土を巻き上げて小さな台風のようなものができて、シルバーベアーをその中心へ閉じ込めた。

 「さあ、今ですよ!」

 よし、俺の出番だな。弓を構えてっと、俺は弓を引きシルバーベアーに照準を定める。確かこうするんだったよな―――

 「フレイムアロー!」

 うわっなんだ、スキルを言ったら勝手に体が動いたぞ!?

 矢は放つ直前に火を帯びて、そのまま一直線にシルバーベアーの首へ命中した。

 「ぐもおおおおおぉおぉおおおおおおおぉぉ!!!!!!!」

 シルバーベアーは燃えながら断末魔を最後に力尽きた。なんだか案外あっさりしてたな。もう少してこずると思ってたんだがな。スキルの初体験にはドキドキしたが、一体どういう仕組みなんだ?

 「お見事なのですよ、タクミ」

 「ありがとな、ところでスキルを発動するとき勝手に体が動いたんだがどうしてだ?」

 「まだ解明されてはいないのですが、この世界の創造神ティル様の祝福だと言われているのです」

 創造神ティル?この世界の通貨の単位ティルに関係がありそうだな。常識外れのように言われる可能性があると考え、あえてノエルには創造神について聞かなかったが、一つの質問を

 「スキルを途中で中止することはできるのか?」

 「スキルを口で言わないよう発動するのと同じで、そちらも慣れですね」

 これは早急に慣れる必要があるな。ゲームでもスキルを中止することができず死亡した回数は数えきれない。

 「とりあえず依頼完了です。ギルドへ行って報奨金を受け取りましょう」

 俺は軽くうなづいてギルドへ向かった。


 「それでは報奨金の80000ティルですが、木崎拓海様の借金を引いて30000ティルとなります」

 「ありがとうございます、エミルさん」

 あぁいつ見てもこの豊かな果実には目を引き寄せられてしまう。頭の中の俺はエミルさんと話すたびにいつも鼻の下を伸ばしているのだ。俺の目線に気付かれてないよな。うん、大丈夫だよな。

 「タクミよかったですね」

 「悪いな、俺のために取り分を多くしてもらって」

 「私たちはパーティーを組んでいる仲間なのです。当然のことですよ」

 黒い一面をたまに見せるノエルだが、仲間を大切にする精神は感心するな。

 「今日は私たちの初依頼ですから、報奨金で私おすすめのレストランで夕食を食べましょう!」

 ノエルの取り分がさらに減ってしまうことに悪い気がするものの、善意を断るのは失礼だな。それに、ノエルはきっと欲が無く仲間とのひと時を楽しみたいのだろう。俺はうなづいてレストランへ向かった。

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