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第5話 ブラックノエル

翌日、俺はノエルとギルドへ来ていた。この世界にはレベルという概念が存在し、レベルが上がるとステータスが上がって使えるスキルも増えていく。そして今日はラビリンスに潜ることができるレベルになるまで帰れないということに決まった。近場のラビリンスの適正レベルは5以上。ノエルは既に達しているが俺は最弱のレベル1。レベルを上げるためにはモンスターを狩る必要があるのだが、スキルが一つもないと言うのは困ったものだ。唯一使える魔法は素早さ強化。だが、安物の魔晶石のせいでその効果も薄い。俺っていつも詰んでるよな。俺もノエルのような特殊スキル欲~し~い~♡無いものねだりをしている自分の姿を思い浮かべるとちょっぴり可愛かった。

 「タクミはまだレベリングができる状態ではないようですね。武器はありますがポーションは無いようですし」

 「ポーションってあれか、飲むと体力が回復するっていうやつか?」

 「その通りなのです。最初に手ほどきをすると言いましたのです。タクミは借金に苦しんでいるのです、だからその点は気にしなくても大丈夫なのです」

 女の子におごってもらうなんて悪い気もするが、これでは何の進展もなさそうなので好意に甘んじることにして雑貨店にてモンスターと闘う手筈を整えた。 

 

 さて、俺の戦闘スタイルだがあまりにも地道な作業で退屈してしまう。正面から攻撃するのではなく茂みなどに隠れて弓を放つ。そして逃げる。ひねくれものの俺にはピッタリな姿だ。何よりも、痛い思いをせず確実にレベルのは俺得なスタイルだな。

 この戦闘スタイルが俺の適性だと伝えるとノエルはやはり引いたのだが、異世界ライフを充実させるためと言い聞かせて何とか豆腐メンタルを保った。

 「ここの森でウルフを狩るのですよ。集団で行動するので厄介ですが遠距離から1体ずつ倒していくと安全です。気づかれたら素早く逃げてください。万が一のときは黒魔道を使うので安心するのです」

 ノエルが俺にレベリングの方法を教えてくれた。やはりこの戦闘スタイルは気に食わないが腹をくくろう。よっしゃ!もう何が何でもやってやるぞ!俺はノエルと木に登り弓の準備をする。木の高さは6m。おそらく大丈夫だろう。俺は一番後ろにいるカースト最下位のようなウルフに照準を定める。

 「ごめんな。俺とお前はよく似ているから情も湧いてくるのけど、あれだ同族嫌悪ってやつだ。俺だけのアイデンティティを壊さないでくれ」

 俺は矢から手を放し、矢は勢いよく最下位ウルフの後頭部へ命中した。

 「もしかしたら俺弓の才能あるのかな。初めての才能の発見だぜ」

 俺は一人浮かれていたが水を差すように、

 「同族殺しは楽しいですか?」

 ノエルは憐みの目で俺に語りかけてきた。なんでこの子は若干黒いとこあるんだよ。黒魔道の使い手だから心が真っ黒なのか。俺がカースト最下位というのも言ったことは無いのだが変なところで察しがいいな。まったく油断もできない。とりあえずこの調子で続けるか。


 ~1時間後~

 俺は目標のレベル5に達した。しかし、仲間が次々と倒れていることに気付いたウルフの群れが警戒しており街に帰れそうもない。

 「おい、どうすんだよこの状況」

 「困りましたね、この森は夜行性のモンスターが比にならないほど強く初心者パーティーが全滅する森として有名なのです。早く逃げないとまずいです」

 俺はなぜいつも死の危機に直面しているのだろうか。レベルが上がったんだから幸運の値も上昇して生存率が上がってくれよな!あぁ不幸不幸。

 「一応策があるのですがどうでしょうか?」

 「なんだよ」

 「タクミが囮になって集まってきたウルフを私の黒魔道で一網打尽にするのです」

 何を言っているんだこの子は。もし失敗したら俺は八つ裂きじゃないか、俺は痛いのだけは嫌なんだ!本当にブラックな一面のノエルはやめてくれ!

 「はぁ!?失敗したら死ぬじゃないか。嫌だ―!俺はまだ死にたくないんだ!」

「足手まといなら足手まといなりに役に立たないといけないのです。早く逝くのです」

 「やっ、やめ―――」

 そういうとノエルは俺の背中を蹴って木から蹴落とした。俺は落下中に「そのいくの意味違うだろ!!!」と一人ツッコミを入れたのだった。

 「逃げないとウルフたちの餌になりますよ」

 信頼できる仲間と認めてくれたのにこの仕打ち。

「うわぁあああぁあぁあぁああ!!!!!」

ひたすら逃げる俺。死の淵に立っている気分は最悪だ。恐怖で豆腐メンタルがゲル化して一瞬で消え去りそうだった。しばらく逃げて頃合いを見計らっていたノエル。

 「安心するのですよタクミ。―――闇よ来たれ、我に力を。ダークウィンド!」

 女神様。どうか俺に安心できる安泰な生活をお願いします。―――まぁ、今日の目標を達成できたし結果オーライだな。明日は依頼を受け、その報奨金で美味しいものでも食べると決意した俺であった。

 

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