第4話 残念な俺のステータスと・・・
「まずはラビリンスについて説明するのです。ラビリンスが存在している理由はわからないのですが、魔物たちが作ったと言われているのです。そこには魔物やモンスターがうじゃうじゃしていてとても危険ですが、レアアイテムが入った宝箱が眠っていて一攫千金を夢見て攻略しに行くのです!」
俺はうんうんとうなづいた。やはりダンジョン的な存在だったか。
「次にパーティーです。2人以上10人以下を登録できてパーティー専用の依頼を受けることができるといったメリットがあるのです。また、ラビリンスにはトラップもありますから非常事態に対応できて攻略が進みやすくなるのです」
つまりソロプレイよりもパーティープレイの方が生存率が上がって攻略も楽に進めるということか。ならばパーティーを組まない手はない。
「なるほどな。理解したよ」
「では早速パーティー登録をしてきますね!」
そう言うとノエルはカウンターへ走っていった。なら俺は簡単そうな依頼でも探すかな。
俺は手ごろな依頼を受けて待っているとノエルが歩いてきた。登録が終わったようだな。
「そういえばノエルの職業は何なんだ?」
パーティーということは前衛と後衛に分かれるはずだ。前衛が敵を叩き後衛が支援する。それが鉄板パターンだ。つまり前衛と後衛のバランスが必要なのだ。俺とノエルが後衛だったらモンスターから逃げ回る戦闘スタイルをとりそうだ。
「私はマジシャンなのですよ」
あ、これ詰んだわ。俺の職業はレンジャーなので一応短剣を武器に前衛はできるが、前衛なんて豆腐メンタルの俺ができるわけない。その可能性を潰すため俺が選んだ依頼とは―――
「そうか、俺はレンジャーなんだ。だから手始めにこの依頼から始めようと思う」
ノエルが依頼を見るとジト目で見つめてくる。
「なんですかこれ。せっかくパーティーを組んだのに清掃作業ってどういうことですか!」
許してくれノエル。俺が悪いんじゃない。触れたら崩れ去るこの豆腐メンタルが悪いんだ。
「で、でも俺ギルドから借金して武器を買ったばかりでさ、宿は何とかなってるんだけど飯代とか色々稼がないといけないんだよ」
「う~ん。仕方ないですね。それならば仕事の後は私の実力を見せるのでタクミの実力も見せてください」
「おう」
適当に返事してしまったが俺の実力ってなんだよ。自己強化魔法で素早さを強化して逃げ回りながら弓でちまちま攻撃する戦闘スタイルだぞ。こんなのソロプレイでしかできねえよ。あぁ、なぜ俺の適性というのはこんなにも恵まれないのだろうか。嘆かわしい。
清掃作業が終わり俺はギルドへ行った。
「木崎拓海様お疲れ様です。依頼主からの報奨金10000ティルです」
「ありがとうございます。エミルさん」
俺がお礼を言ったのは冒険者になるために手続きをしてくれたお姉さんだ。名前はエミルというらしい。ノエルが教えてくれた。ここのギルドの制服は露出は少ないのだが上半身のラインがよくわかる服だ。エミルさんはその、豊かに育った果実を2つ実らせていた。もといた世界だとこんなの見たことねえよ。あぁ異世界最高万歳。
「タクミ~!さあ森へ行きましょう!」
ノエルが元気いっぱいに俺を呼びながら歩いてきた。それにしてもエミルさんとノエルのまな板を比較してしまうと。どうしても憐みの目で見てしまうな。ノエルもまだ成長の余地はあるはずだがエミルさんに勝ることはないだろう。
「あぁ、大丈夫だよノエルもいつかはな」
「ちょっと待ってくださいどういう意味ですか!憐れんだ目で見ているのはどうしてですか!」
俺はノエルとともに街の外にある森へ向かった。
「ではタクミの実力を見させていただきましょうか」
「と言われても俺は何もできないんだが・・・」
一体何をしたらいいんだよ。俺の戦闘スタイルなんて見たらドン引きだぞ。
「タクミは弓の使い手なので弓スキルが使えるはずなのです。冒険者証明書に使えるスキルが乗っているはずですよ」
俺は自分の冒険者証明書を見てみるがスキル欄には何もない。
「ノエル、何も書いてないぞ」
「そんなことは無いのですよ。レベル1でも1つはスキルをもっているはずなのです」
驚きながらノエルは俺の冒険者証明書を奪い取ると直後に叫んだ。
「なんじゃこりゃああああああああぁぁあああぁ」
あぁ、きっと俺のステータスの低さに驚いたな。筋力やら体力といったステータスはほとんどが並み以下だもんな。
「スキル無しの人なんて初めて見ましたよ!あなたバグってるんじゃないですか!」
まぁある意味俺はバグだろう。例えるならある作品の登場人物が他の作品に出てくるようなものなのだ。
「おそらくレベルを上げることでスキルを獲得できると思いますが、今は実力を見ることができないからお預けとしましょう」
つくづく思うがせっかく異世界転生したのだから女神様は俺に何か特別なスキルでも与えてくれよな。何にもできないという才能を与えてくれたのだろうか。まぁこれは元々だけど・・・。
・・・泣きたい。
そう思っているとノエルがアクションを起こした。
「フフフ。改めて自己紹介をしましょう!私はレベル5のマジシャンで、風魔法の使い手―――というのが表の顔!本当は類稀なる黒魔道の使い手なのです!」
黒魔道何それまじかっけぇ!中学生の時中二病を発症しその忌々しい過去を封印した俺の中二心をくすぐるような響きだ。
「黒魔道ってなんだかすごいな。でも基本は火水風土のはずだろ」
平静を装ったつもりなのだが俺は多少興奮気味に言った。
「確かにその通りです。しかし例外が存在しているのです。それが私の黒魔道なのです。闇の力を借りて強大な攻撃魔法を放つことができるのです」
俺の反応に応えるように自慢げにノエルは言った。
「では、あの木に黒魔道を放つので目に焼き付けるのです!」
「お、おう」
俺が返事をするとノエルは黒曜石によく似た魔晶石を取り出して詠唱を開始した。
「闇よ来たれ、我に力を!ダークウィンド!!!」
黒い物質がノエルの周りから現れ、カマイタチのように木々を切り刻みあたり一面が更地になった。
「す、すごい。すごいぞノエル!俺の期待に応える黒魔道だった!」
「当然ですよ。黒魔道は偉大なのです」
一体どうしてこんな魔法を悪党の男2人組に食らわせなかったのだろうか。ガチで一人で対処できたんじゃないか。
「こんな魔法を使えるのにどうして襲われたとき使わなかったんだよ」
ノエルは少し悲しい顔をしてこう言った。
「あの時はラビリンスからの帰途だったので魔力が残っていなかったのです。黒魔道はその強大さ故に魔力を大量に消費してしまうのです」
「でも黒魔道を使えることを隠しているのはどうしてなんだ?」
またもやノエルは悲しい顔をしてこう言った。
「私の黒魔道は類稀なるもの。卑しい連中に利用されるのは避けねばならないこと。信頼できる仲間に出会ったときまで明かさないと決めていたのです」
信頼できる仲間という言葉は素直に嬉しかったが、ノエルの表情が少し暗くなったのはなぜだろうか・・・。