第2話 武器調達と宿の確保
目を覚ますとカーテンの隙間から朝日が差し込み小鳥が鳴いていた。
「朝か・・・」
今日から俺は冒険者として生きていく。死んでいなければいつものように引きこもりだったわけだが、今日も新鮮な一日が送れる予感がする。
「さて、朝食でも食べるか」
俺は1階にある食堂へ行き、席に着いた。宿の店主がパンとスープを運んできてくれた。パンは固く、スープは味が薄いのだが、その優しい味は朝だと程よく感じる。今日はどうしようか。ギルドから借りたお金は夕食代と宿代に消えた。依頼を受けようにも武器が無い。とりあえずギルドの人にまた質問をするか。そう思い、俺は席を立ち上がって店主に「ごちそうさま」と言ってギルドへ向かった。
「おはようございます」
俺は昨日冒険者になるためにお世話になったお姉さんに挨拶をした。
「おはようございます、木崎さん。どうされましたか?」
「実は依頼を受けようと思っているのですが、武器もお金もなくて」
「それでしたらまだお金を貸すことができますよ」
「本当ですか?そうして頂くとありがたいのですが・・・」
ふとある不安が頭をよぎった。お金を借りるときに利子を聞いていなかった。闇金並みに高利子だったら破産だよ。
「あの、利子というのはどのくらいでしょうか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「利子でしょうか?ございませんよ」
「えぇ!?そうなんですか!?」
「はい。国から冒険者はとても厚く保護されていますからね」
本当にここはなんていい所なのだろう。元の世界では俺のような未来ある若者が利子付きの奨学金という名の借金を背負っていた。しかし、なぜこんなにも好待遇なのだろうか。
「どうしてそんなにも待遇がいいのですか?」
「魔王の手下である魔物やモンスターを倒して街と市民を守るのですから当然ですよ。武器の話に戻しましょう」
なんと驚いた。警察のような役割も担っているのか。というより自警団のような存在なのか?日本の警察は常日頃からパトロールをしているが全く感謝されていない。職務質問をしようものならスマホで撮影を開始され、「肖像権が無いやら、ン拒否するゥ」と言われ動画投稿サイトに晒される。本当に不憫だな。
「木崎さんはレンジャーですが、どういった戦闘スタイルをとるつもりでしょうか?」
戦闘スタイルか。俺はいつも前衛で火力で押し切るゴリ押しタイプだったから全く想像できない。
「よくわからないのでお任せしてもいいですか?」
「わかりました。木崎さんの適性から分析すると自己強化魔法で素早さを上げて弓で遠距離から攻撃するのが効率的な戦い方ですね」
ふむ。悪くはないな。痛いのが怖くてスポーツをしていなかった俺だ。ノーダメージで倒せそうなところがまたいい。俺はOKの返事をした。
「それでは弓と魔晶石を購入することになるので50000ティルを貸し出しますね」
俺はお金を受け取ると近くの武器店へ向かった。
「今日は教会の宿泊所に泊まるか」
俺は武器店で弓と魔晶石を購入した。弓は店の中で一番軽くて扱いやす物を購入した。値段は40000ティル。続いて購入した魔晶石なのだが、これは自分に適性がある魔法の属性を使う時に媒介することで魔力を増幅できるらしい。俺が使う自己強化魔法は透明なクリスタルの形をした石。他に魔法の属性は火、水、風、地の4つが基本らしいが他にも闇の属性などが存在すると聞いた。自己強化魔法の魔晶石は透明色。この魔晶石の純度が高く澄んだ色をしているほど効率よく増幅できるらしい。俺は金が無いので一番安い濁った魔晶石を購入。あぁ早く異世界生活エンジョイしたい。そして俺は教会の宿泊所に向かった。
教会の宿泊所ではたくさんの冒険者たちが居た。屈強な男や不思議な格好をしたマジシャンなど様々だった。聞いていた通りかなりの数だったのだが運よく部屋の抽選に当たった。1週間ごとに抽選がなされ連続して泊まることはできないそうだ。つまり俺はあと1週間で新たな拠点を得ないといけなくなった。まだまだこの世界のことはよくわからない。明日は依頼を受けてみようと思い俺はベッドに横になった。