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第1話 始まりの日

 目を開けるとそこは、鳥のさえずりや川のせせらぎが聞こえる自然豊かな森だった。

 「ここが異世界か」

 俺、木崎拓海は異世界転生をした。もと居た世界では高校生であった。事故で死んでしまい死後の世界に送られたのだが、そこにいた女神様によってある選択を迫られた。このまま天国か地獄に行くか。それとも異世界に転生をするかである。普通は異世界転生などできないらしいのだが、未成年で不憫な思いをしてきたかららしい。まあそりゃあ不憫ですよ!ぼっちで何をしてもほとんどが並みかそれ以下。家庭環境は最悪で高校の学費もバイトで賄っていた。最終的には引きこもり。ということで、女神様が俺を見かねて異世界転生の話を持ってきた。このまま未練を残して死ぬわけにはいくまいと思い異世界転生を選択した。今までずっと苦労して生きていたんだ。今度の世界では絶対に充実した異世界ライフを送ってやる!

 「確か俺の世界で言うと魔法が存在するファンタジー系の世界だったな」

 この世界に来る前に女神様からいくつか説明を受けた。言語や服装といった細々とした点は生活に支障が無いようにしてくれたらしい。もといた世界での容姿で記憶も引き継がれたらしかった。たった18年の浅くて薄い人生なんて何の役にも立ちそうにないのだから王家とか領主の子供としてゼロから始めたかったなあ・・・。さて、この系統の世界だと―――

 「とりあえずこういう時は街に行って情報収集だな」

 俺は道に沿って歩いて行った。30分ほど歩くとやがて街が見えてきた。街は中世のヨーロッパのような建物ばかりでこの世界観にピッタリだ。それほど大きな街というわけではなさそうだが、露店がいくつか並び賑わっていた。適当に露店を眺めていると、看板に「初心者冒険者用品店」との文字。そこの店主は頭に三角巾を巻き人の好さそうな40代くらいのおばさんだった。そんな風に考えながらその店を目で追っていたら店主と目が合った。

 「お前さん、冒険者かい?見ていかないかい?」

 さすが商売人。客を引き止めるのが上手い。このまま素通りしてしまうのも気が引けるので俺は立ち止った。あと、気になる単語が一つ。冒険者か。俺のイメージだとモンスターを狩ったりダンジョンに潜るというのが思いつく。とりあえずこの世界のことを質問してみるか。

 「あの、ここは一体どこでしょうか?冒険者とは一体何をするのですか?」

 「ここはエディアの街だけど、お前さん冒険者を知らないのかい?」

 おばさんは不思議そうな顔をして言った。

 「は、はい・・・」

 「冒険者はギルドで依頼を受けてモンスターを討伐したり、問題を解決すると報奨金が出るんだ。そのお金で生計を立てているのが冒険者さ。冒険者になりたいのならギルドに行くといいよ。街の広場のすぐ近くにあるからこのまままっすぐ行くといいよ」

 「ありがとうございます」

 俺は軽く会釈しておばさんの言う通りの道を行くとギルドと書かれた看板を見つけたのでその建物の中に入っていった。

 「冒険者様でしょうか?御用の方はカウンターへどうぞ」

 そう言ってくれたのは入り口付近に立っていた制服のようなものを着た茶髪で髪を一つに縛ったお姉さんだった。

 「あの。冒険者になりたいのですが」

 「冒険者希望ですね。ではこちらへどうぞ」

 俺は言われるようについて行った。

 「では冒険者証明書作成に当たってこちらの書類に職種などをご記入ください」

 職種か。おそらく戦士とか魔法使いとかそういったところだろうか。

 「職種とは何があるんですか?」

 「大きく分けると4つありまして、前衛で敵を攻撃するソードマン。味方の壁役に徹するシールダー。遠距離から攻撃をするレンジャー。魔法を扱うマジシャンとなっております。マジシャンは魔法の適性が無いとなることはできないのでご了承ください」

 おおまかな予想は当たっていたな。しかし・・・、ファンタジーRPGゲームではいつも前衛職を選択していたが、筋トレなんてほとんどしたことが無い俺が剣を振り回すなんて無理!ここは絶対に後衛だ!マジシャンになりたい。

 「魔法の適性があるかわからないのですがどうしたらわかるのでしょうか?」

 「今ここで適性を確認することができますがいかがでしょうか?」

 「お願いします」

 すると受付のお姉さんは球体なようなものを差し出した。お姉さんが手をかざすように言うので、とりあえず手をかざすと球体が青白く光り一枚の紙が出てきた。

 「魔法適正はありですね。しかし、魔力は少なく、他のステータスを見ると全体的に並みかそれ以下ですのでそもそも冒険者の適性がないかもしれないです・・・」

 お、俺は充実した異世界ライフを送ることを決意したばかりなのにいきなり壁かよ・・・。っていうか能力まで引き継がれてんのか?女神様もせっかく異世界に送ってくれるならチート級アイテムとかステータス底上げしといてくれよな・・・。マジ泣きたい・・・。

 「し、しかしレベルを上げるにつれてステータスも高くなっていくので気を落とさないでくださいね!」

 お姉さんが励ましてくれるが、ストレートな発言じゃなくてもっと遠回しに言ってくれたら嬉しかった・・・。消去法でレンジャーにするか。

 「とりあえずレンジャーになるので手続きお願いします・・・」

 「わかりました・・・」

 気まずい雰囲気が何とも言えない虚しさを感じるな。

 「木崎拓海様ですね。それでは冒険者証明書をどうぞ。そこにある掲示板には依頼が募集されていますので目を通してくださいね」

 依頼を受けるには装備も拠点もないので何をしたらいいんだ?とりあえず今日泊まる場所を探しておきたいがお金は持ってないしどうしたらいいんだろうか。

 「あの、泊まる場所を探しているのですがどこか泊まる場所は無いですか?お金は無いです」

 「お金が無いのでしたら教会の共同宿泊所があるのですが、人が多いのでもう入れないと思います」

 異世界に来ていきなりホームレス生活とは。これなら元の世界の方がまだマシだよ・・・。

 「お金が無いのでしたら貸し出しも行っているので安心してくださいね」

 前言撤回。前の世界では奨学金もまともにもらえなかったがなんていい所だろうか。お金を貸し出してくれて、無料の宿泊所もある。いいことを聞いた。

 「とりあえず今日の宿代と夕食代を貸してください」

 「それだと10000ティルでよろしいでしょうか」

 「あっ、はいお願いします」

 ティル?この世界での通貨の単位だろうか。お姉さんはおすすめの宿を教えてくれてそこを手配してくれた。俺はお姉さんにお礼を言うと、夕食を食べた後に宿へ向かった。

 「今日は一日疲れたな」

 俺はベッドに横になるとつい言葉に出してしまった。うん。今日は疲れた。明日から冒険者として頑張ろう。絶対に充実した異世界ライフを送るんだ!そう頭の中で繰り返していると俺はいつの間にか眠ってしまった。

 



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