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妖精  作者:    
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28 魔法石作り承りました

 リクレアンカさんの手のひらに乗っている小石をおそるおそる摘まんでまじましと見てみると、大きさが自分の持っているものより少し小さい。でも、輝き方は同じで素人目には同じ種類の石に見えた。


 「これはとても良質な魔法石なんですよ。」


 「魔法石?」


 魔法石って何だろう。聞き慣れない言葉に私が戸惑っていると人型に戻ったリプレビュートが私の腰のあたりにぽすんと抱きついてきた。


 「お姉ちゃんが作ってくれたんでしょ?僕、お姉ちゃんに祝福されたときに『良質な魔法石がとれてパパがもっと活躍しますように』ってお願いしたんだ。」


 リプレビュートは大きな水色の瞳をキラキラさせて見上げてきた。私が作った?リプレビュートが願いを通して、私の祝福がかけて作ったってことかな?戸惑う私にリクレアンカは更に話しを続けた。


 リクレアンカによると、ドルエド王国で僅かに採れる魔法石は不純物が多くあまり質の良い物では無いらしい。そのため、本来なら一度魔術印をいれた魔法の通信機は10年以上はその効果が保つはずなのに、ここの魔法石を使って作ると1年保つかどうかと魔術の寿命が短い。

 リクレアンカはなんとか不純物を除去出来ないかと長年に亘り試行錯誤していたが、なかなか上手い結果が得られずに悩んでいた。そんなある日、王宮へ新しい通信機の納品に一緒に連れて来ていた息子のリプレビュートの姿が見えなくなり、やっと見つかったと思ったらこの高純度の魔法石を持っていたとのこと。


 「高純度の魔法石が作り出せるというのは凄いことなのです。今は1年で交換する必要があって生産が間に合わずに国にしか納められていない通信機が一般にも流通する余裕ができるかもしれないし、私やもう一人の術師の手があけば他の魔法の道具を作れる可能性も広がります。」


 「えっと、それはつまり、その高純度の魔法石が在ればみんなの生活が豊かになるからその有りかを教えろと言うことですか?」


 「あなたは物わかりが良い方ですね。ただ、有りかを教えろでは無く作って欲しいというお願いです。リプレビュートは確かにあの時に魔法石を持っていたが、それは不純物の多いものだった。それがあなたの祝福で品質が変わったのです。」


 リクレアンカはその透き通る海のような美しい瞳を細めた。私としてはその魔法石が在ればみんなが助かるならお安い御用だ。ついでに前から欲しかった通信機も手に入るかも知れない。


 「ソメイヤマーリィ。引き受けてはくれんか。今のところ、スエリやそこのリクレアンカが祝福を贈っても石に変化は無いのだ。報酬は望みのままに払おう。」

 

 国王陛下も玉座の上から口添えをしてきた。国王陛下までお願いしてくるなんて、高純度の魔法石は本当に国益になる重要案件なのだろう。

 うーん、報酬は望みのままか。私はちょっと考えてから、自分が望む報酬条件を提示してそれを全てのむのなら引き受けると2人に伝えた。

 

 「そんなことで良いのか?」


 「十分です。」


 国王陛下もリクレアンカも私の出した条件にとても驚いていたが、私にとっては重要なことなのだ。私はその条件を守ってくれるのならばいくらでも力を貸すと約束した。


 「では本当に石に祝福が効くか見せて欲しい。」


 リクレアンカは先ほどの赤い石よりも色が薄く、中に黒い塵のような物が混じる小石を私に差し出した。これがドルエド王国で採れる通常の魔法石なのかな。私はそれを手袋をしたまま受け取った。


 「高純度の魔法石になりますように!」


 こんなふざけた祝福でいいのか疑問だが、私はとりあえず祝福を贈った。するといつものようにキラキラが石を包み込み、薄い色をした小石か赤く耀く美しい小石へと変化した。成功したみたいで、私は内心ほっとした。


 「おぉ!本当に変わったぞ。信じられん!」


 「変わりましたね。驚きました。」


 国王陛下とリクレアンカは目を見開いて驚いていた。君たち、頼んだくせに半信半疑だったのかい?対するリプレビュートは私の腰に再び抱きつき、「お姉ちゃん、凄い凄い!」と大喜びしていた。可愛い!お姉ちゃんは君の笑顔が見れただけでも大満足だよ。


 「水色の爪で何故こんなに・・・」


 国王陛下の呟きが聞こえて、私はこれはいい機会だと捉えた。


 「あの、実は水色じゃないんです。」


 おもむろに手袋を脱ぎ、テープを外した私の手を見て、国王陛下や護衛を含むその場に居た人達は全員目を見開いた。国王陛下は玉座から転がり降りるように私に近寄り、私の手を掴んで上に掲げると周りを見渡した。


 「透明だ!信じられん。透明だぞ。」


 はい、透明ですね。1回言えばわかります。


 「そうだ!うちの二番目がまだ結婚しておらん。ソメイヤマーリィ、どうだ?」


 「国王陛下。私はユーリルーチェ中隊副隊長との婚姻願いを既に出した筈です。さっきの条件がのめないなら一切のお手伝いは致しません。」


 私はじろりと国王陛下を睨みつける。不敬罪なんてどうでもいい。透明の爪だから婚約者のいる第2王子に嫁げなんて真っ平ごめんだ。それに、これまで何回か会ったときに話しを聞いた限り第2王子は婚約者を大切に想っている。


 「そうだったか?」


 冷や汗をかいてうそぶく国王陛下はなかなかのタヌキだ。やっぱり国の代表ともなると、それなりのしたたかさが必要なのかもしれない。


 「さっきの条件、のみますよね?これから魔法石作り、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。」


 高純度の魔法石が大量に手に入るだけでも良しとして貰おう。私は自分の息子に透明の爪の妖精をあてがえずに残念そうに項垂れる国王陛下に、にっこりと微笑みかけたのだった。


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