表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/78

9話 胡桃とリコ3

ニュームーンの事務所へ入ろうとした胡桃と滝内だったが、突如として地形が割れてしまい事務所内部へ潜入は美森と英夜に任せることにした。

そして2人は盛り上がった地面に出来た洞穴の中を探索する事にした。


「中は本当洞窟みたい。」


10分ほど洞穴の中を歩いた胡桃は行けども行けども岩に囲まれた通路の道が続いているこの有様を見てまるで本当に洞窟を探索してる様だと感じる。


「ここまで道が別れてないのが唯一の救いだね。」


滝内は現在自分達がまだ1本道を歩いているため、道に迷うよりはマシだと胡桃に返答する。

「ええ、迷路を彷徨うのはごめんだし。」


胡桃も複雑に入り組んだ道を歩くより、一本道が続いてくれた方が楽だと思い、今の状況には助かってるという心境だった。


「所で胡桃ちゃん、胡桃ちゃんはオーラナイトの鎧は着ないの?」


滝内は唐突に話題を変え、胡桃がオーラナイトの家系でありながら鎧を着ようとしない理由を尋ねる。


「鎧? ああ、私はああいう暑苦しい鎧は好みじゃないの、それにオーラの一点集中を使えば鎧と同じ防御力を発揮できるしね。」


胡桃は鎧にあまり女性らしいイメージを感じなかったらしく、装着するのに抵抗を感じて代わりにオーラの応用技である一点集中で代用して行くスタンスを取ってる様だった。


「全身のオーラを身体の一カ所に集めるあれだね、確かにオーラを身体の一カ所に集めれば攻撃力も防御力も増大するけど、他の身体の部分が無防備になるっていう欠点があるしそこを攻撃されれば致命傷になりかねないから諸刃の刃だよ。」


滝内はオーラの一点集中の利点と欠点を胡桃に説明し、それだけでやっていくのは難しいのではと指摘する。

「そこは何とか起用に応用するわ。」


胡桃は滝内の指摘を真剣に受け止めつつ、一点集中を上手く使って行くと彼女に告げる。


「でも気を付けてね、私は頭撃ち抜かれたり剣で心臓刺されただけじゃ死なないけれど胡桃ちゃんは人間なんだから。」


滝内は天使と人間では生命力に差があり、身を守る事に関しては自分以上に用心して欲しいと彼女を心配する。


「心配しないで、勿論そのつもりよ。」


胡桃は滝内が友達として自分を心配してくれている事を肝に銘じ、彼女に強気な意志を伝える。

2人はもうしばらく道なり歩いていると、ようやく左右に分かれた道に突き当たった。


「やっと分かれ道に来たみたい……」

「胡桃ちゃん、どっちに行きたい?」


滝内は胡桃に進む道を決めさせようとする。


「え? う~ん……どうしよう……」


急に滝内から選択権を貰った胡桃は戸惑い、腕を組んで考え込んでしまう。


「決められないの? それじゃあコインで決めようか!」


悩んでいる胡桃を見た滝内は10円玉を取り出し、コイントスで行先を決めようと提案する。


「コイン?」


胡桃は組んでいる腕をほどき、キョトンとした表情で言葉を返す。


「表が出れば右、裏が出れば左だね。」


「やむをえないわね、どっちの道が正しいかは分からない訳だし。」


胡桃は右と左、どちらの道が安全な道か見当もつかなかったため、滝内のコインに全てを任せる事にした。

自身の意見に賛成した胡桃を見た滝内は早速10円玉を指だ弾き、頭上へ飛ばす。

そして滝内は頭上から落下してくる10円玉を左手の甲で受け止め右手で押さえ込む。

右手を放して出てきた10円玉の絵柄は寺の模様が描かれた表だった。


「表だね、それじゃあ右に行こう!」


滝内は10円玉をスカートのポケットにしまいながら胡桃に右の道へ行こうと誘い出す。


「OK」


胡桃は一言そう返答して滝内の後を追う。

右側の道を歩いて以降、2人は辺りの空間が寒くなっている様に感じ始める。

先程の道を歩いているまで警戒心が薄れかけていた2人だったが、再び緊張感が芽生え始る。


「ねぇ滝内さん、なんだか急に誰かに後ろから付けられてる感じがして来たよ、何故か背筋が凍らない?」

「あたり……いや、はずれの道だったのかな……」

「滝内さん?」

「走るよ。」


滝内は戸惑う胡桃の手を取り、急に走り出す。


「滝内さん、悪魔が来るの!?」

「ええ、ほらもう来た!」


滝内がそう言った直後、大きな音と共に彼女たちの背後の道が天井から崩れ、そして3m程の巨大な蟷螂の悪魔が姿を現す。


「戦わないの?」


胡桃は自分を引っ張って逃げる滝内に戦う気はないのかと問いかける。


「ここじゃ狭すぎる! 今は広い場所まで逃げ切ろう!」


滝内はこの一本道の狭い通路では戦いづらいと考え、広い場所に出るまで移動しようと考えたのだった。


「ええ、わかったわ!」


胡桃は一先ず滝内の意見に同意し、自身も全速力で走る。

蟷螂の悪魔から全速力で逃げる最中、2人は道の奥に上に上がる階段を発見する。


「何処まで続いているんだろう? 広い所だと理想だなぁ。」


胡桃は奥にある階段の先が隠れられる遮蔽物が多く広範囲な空間である事を望んだ。


「よーし、行ってみよう!」


一方の滝内は階段の先が安全かは分からないが兎に角上ってみようと思った。

2人は途中で息が乱れ始めるも、それでもなんとか階段の前までたどり着き、一瞬立ち止まる。

階段の奥には出口と思われる光が差し込まれていた。


「後一息だね。」


滝内は胡桃にもう一息頑張ろうと呼びかけ、胡桃もコクンと頷く。

そして走るのを再開して階段を上り始める。

階段を駆け上がる最中、滝内はある事を閃き、ずっと握っていた胡桃の手を放してまた立ち止る。


「滝内さん!?」


胡桃は突然自分の手を放して足を止めた滝内に驚き、声をかける。

その直後、滝内は蟷螂の悪魔に向かってタックルを食らわせ、階段から転倒させる。


「成程、転ばして追跡を遅らせたのね!」


一部始終を見た胡桃は滝内が蟷螂の悪魔を階段から突き落とし、追跡のペースを遅らせたのだとすぐに理解した。


「まあね。」


滝内は一言胡桃に返事した後、再び走り出し、胡桃も続くように走るのを再開する。

階段を駆け上がり出てきたのは民家が並ぶ居住区だった。

ただしやはりまだ結界の中で、空は赤く染まったままだった。

2人はふと後ろを振り返ると、自分達が出てきた穴が一軒家の一つの車庫だったため驚きを見せる。


「結界って何でもアリなのね……」


胡桃はニュームーン店内の地面が盛り上がり洞窟に続く穴が出来、その洞窟の出口が車庫だと思うと、結界の中では常識に囚われてはいけないんだなと実感する。

一方の滝内は折り畳みナイフを取り出して突然自分の左手首を斬りつける。

滝内は手首から流れる血の滴をナイフの刃に垂れ流す、するとナイフが光り出し、刃が日本刀並の長さまで伸びた。

それと同時に彼女の手首の斬り傷も瞬時に再生して完治された。


「感想に浸るのはまだ早いよ、とっとと戦おう!」


滝内は刀に変わったナイフを構え、後退りしながら胡桃に蟷螂の悪魔と戦うと指示する。


「了解。」


胡桃も二兆拳銃を手に持ち、後退りを始める。

自分達が通って来た車庫からガタガタと蟷螂の悪魔の悪魔の足音が響いて来る。

そして次の瞬間勢いよく蟷螂の悪魔が飛び出して来た。


「よし来た!」


滝内がまず飛び出し、刀で蟷螂の悪魔に斬りかかる。

しかし蟷螂の悪魔は本能的に自身の鎌でガードする。

両者は一旦離れながら地面に着地する。

次に胡桃が拳銃を発砲して攻撃する。

蟷螂の悪魔は鎌で弾丸を弾きながら胡桃に突進してくる。

胡桃は蹴りで応戦するが苦戦してしまう。

そこに滝内が加勢して再び蟷螂の悪魔と刃をぶつけ合う。


「大丈夫、胡桃ちゃん!?」

「ええ、ありがとう!」


胡桃は礼を言った後、バックステップをして再び蟷螂の悪魔に発砲する。

蟷螂の悪魔はまた鎌でガードするが、隙を突かれ滝内から蹴りを喰らわされる。

胡桃は更にその隙を付いて蟷螂の悪魔の顔面に弾丸をお見舞いする。


「ギャアアアアア!」


蟷螂の悪魔は自身の顔を押さえて苦しみだす。

そこに滝内がジャンプして身体を横にローリングさせながら刀で斬りかかる。

蟷螂の悪魔の身体は左斜めから真っ二つに斬れた。


「やった!」


胡桃は蟷螂の悪魔を倒したと思い、ガッツポーズをとる。


「そうでもないみたい。」


滝内は胡桃の前まで後退しながら彼女にまだ勝負は終わってないと告げる。

すると真っ二つに斬られた蟷螂の悪魔の身体が修復されていき、元の姿へと再生する。


「再生するの!? これじゃあ限がない!」

「ん~……よし、それならこうしよう!」


すると滝内がまた何かを閃き、自分の左手を刃で斬りつけ、再び刀に血を浴びせる。


「胡桃ちゃん、この刀にオーラを送って。」

「え? ええ、わかった。」


胡桃は滝内が良い策を思いついたのだと信じて、彼女に言われるまま血の付いた刃に手を当て、瞳を閉じて自身のオーラを引き出す。

胡桃から引き出されたオーラが刃に送り込まれ、滝内の血が赤く発光する。


「OK、もう手を放していいよ。」


滝内は胡桃に刃にオーラは十分送られたと告げる。

胡桃はすぐに刃から手を放して2,3歩程後ろへ下がる。


「斬ってダメならこれならどうだ!!」


滝内は蟷螂の悪魔に啖呵を切る様に叫び、今度は自分のオーラを刀に送り込みながら突撃して行く。

すると彼女の血が発火し、刃全体が燃え上がる。

滝内は炎を帯びた刀で蟷螂の悪魔に斬りかかる。

蟷螂の悪魔はまた鎌でガードをするが、炎が鎌に燃え移り混乱して後退りをする。

そして滝内は炎の刃を蟷螂の腹部に突き刺した。


「アアアアアアア!!」


蟷螂の悪魔は悲鳴を上げながら燃え尽きて行った。


「今度こそやったね。」


滝内は跡形もなく燃え尽きた蟷螂の悪魔を見て自分達の勝利を確信する。

彼女の刀もオーラが尽きたのか、炎が消え去り元の折り畳みナイフへと戻って行った。


「凄い、そんな事も出来たんだ。」


滝内が蟷螂の悪魔を倒す一部始終を見ていた胡桃は刀に火を発火させる事が出来るのかと深く感心する。


「人間のオーラと天使のオーラのブレンドだね、所謂天使と人間のハーフとかじゃ出来なくて純血の種族同士のオーラが混ざり合って生まれる連携技だよ、私と胡桃ちゃんの2人で勝利した様な物だね。」


滝内はナイフの刃を畳みながら胡桃に先程の発火現象の説明をして、今の勝利は2人で取ったのだと告げる。


「ありがとう、私も役に立てて嬉しいよ。」


胡桃は自身が友達の役に立てた事を嬉しく思い、滝内に礼をする。

「ねぇ胡桃ちゃん、そろそろ私の事名前で呼んでくれない?」

すると滝内は昨日学生寮で自分が言った言葉を思い出したように、胡桃に自分の事を名前で呼んでくれないかと希望する。


「ああ、そう言えば昨日そんな事を話したよね……じゃあ……リコさん……」


胡桃も学生寮で指摘された事を思い出し、恥ずかしそうな表情で滝内を下の名前である『リコ』と呼ぶ。


「よーし! やっぱり友達はこうでなくちゃ!」


リコは自信を名前で呼んでくれた胡桃を見て上機嫌になる。

胡桃はまだ恥ずかしかったのか、右手を後頭部にあてて苦笑いをする。


「ねぇ、気になってたんだけど聞いてもいい?」


そして胡桃はリコに一つの疑問を問いかける。


「何?」


リコは笑顔のまま胡桃の質問を聞こうとする。


「何でリコさんは私に初対面の時からフレンドリーに接してくるの? そりゃあ、オーラナイトの一族と天使だから気が合う所はあるかもしれないけど。」


胡桃は初対面でお互いの正体をまだ知らなかった筈の頃から自身に友好的に接してくるリコに何故そこまでするのか疑問に感じた様だった。


「うーん……それはね、胡桃ちゃんは私の恩人だから。」


リコは少し考え込んだ後、胡桃に曖昧な答えを返す。


「恩人?」


胡桃はリコの言葉の意味が分からず首をかしげる。


「胡桃ちゃんと私は以前にも会ってるんだよ。」

「そうだったの? 全然記憶が……」


胡桃は過去にリコと対面した時の記憶が無いらしく、困った表情になる。


「今思い出すのはちょっと難しいかもね、でもゆっくり時間をかけて思い出して。」


リコはそんな胡桃に今無理に思い出すことは無いと助言する。


「ええ、でもごめんね思い出せなくて。」


胡桃は過去の記憶が思い出せない事をリコに謝罪する。


「気にしない気にしない、そんな事より結界の探索を続けよう!」


リコは謝るリコの肩に手を置きながら慰めの言葉をかけ、引き続き結界の探索をしようと持ち掛けた。



ラーメン屋での食事を終えたロンリネスは右手に林檎が2つ程入った小さなバスケットを右手に持ちながら都内にある病院へとやって来た。

病院内の廊下を無表情で歩き、そしてネームプレートに島田ハルカと書かれた702号室の部屋へと入る。

病室のベッドで寝ていたのは赤いウェーブのかかったロングヘアーの10代後半位の少女だった。

この赤毛の少女が島田ハルカな模様だった。


「あれ、来たの?」


ハルカはロンリネスの存在に気づき、タレ目の瞳を開けて上半身を起こす。


「ええ、貴女のその後の調子が気になってね。」


ロンリネスはベッドの前にある椅子に座り、バスケットを膝の上に置きながらハルカに話しかける。


「来てくれてありがとう、これ昨日私が描いたの、あげる。」


ハルカはロンリネスの座っている椅子と反対の位置にある棚の上に置かれてあったスケッチブックを取り、その中からページを1枚切り取って彼女に渡す。

紙にはピンク色の花畑で白いワンピースを着ながら可愛らしく走っているロンリネスの絵がクレヨンで描かれてあった。


「これ私? 中々上手く描けてるじゃん。」


ロンリネスは自分の絵を上手に描いてくれたハルカに微笑みを浮かべながら褒めた。


「ロンリネスもたまにはこういう服を着たら? 女の子なんだし。」


ハルカはロンリネスに自身の絵に描いてある様な女性らしい服を着ないのかと尋ねる。


「私はこういう格好の方が落ち着くなぁ、それに下はミニスカートだしそれで充分じゃない。」


ロンリネスは今の軍服の方が好きで他の服を着るつもりはない様だった。


「成程ね……」


ハルカも微笑みを浮かべながら、彼女の言い分に納得する。


「ああそうだ、林檎を持ってきたんだけど食べる?」


ロンリネスは思い出した様に膝の上に置いてあったバスケットに入った林檎を彼女に食べないかと持ち掛ける。


「ええ、丁度甘い物が食べたかった所なの。」


ハルカは甘い物が食べたい気分だったらしく、満面の笑みで賛成する。


「丸ごとでたべるのが好きなのよね?」

「ええ。」


ハルカはロンリネスから林檎を受け取り、丸かじりする。

2人は数秒の間無言で林檎を食していたが、ハルカは何かを思い出した様に再びロンリネスに話しかける。


「所でロンリネス、この病院の近くにおもちゃ屋さんがあるよね?」

「ええ、ニュームーンの事ね。」

「さっきそこから結界の力を感じたの、誰かが結界の中に入ったみたい。」


ハルカには誰かが結界の中に入る時にそれを感じ取る能力があるらしく、先程自分が感じた事をロンリネスに伝えた。


「成程、入ってった奴らには心当たりがあるわね。」


話を聞いたロンリネスは脳裏に美森の事を想い浮かべる。


「ロンリネスも行ってあげたら?」


そんなロンリネスにハルカは結界に行って彼らに同行してみてはと勧める。


「私が?」

「結界に入ってったのって悪魔退治をしている人達だよね? ロンリネスもお手伝いに行けばいいんじゃない?」

「お手伝いねぇ……私は別にオデイシアス一味に加わってる訳じゃないし、それに水前寺美森、一応あいつに会っておくのもいいかな……」


ロンリネスは結界に行くのを少し迷った後、美森に会っておくのも別にいいかと思って出発する決意をした。


「その人ってロンリネスの従兄妹だよね?」


ハルカは美森の名前を聞いて、それがロンリネスの身内だと以前彼女自身から聞いた事を思い出す。


「本人は知らないけどね、じゃあ早速行ってくるわ、ごめんね来たばかりなのに。」


ロンリネスは林檎をかじりながら立ち上がり、美森達の元へ向かうのと同時に見舞いに来て早々立ち去らなければならない事をハルカに謝罪する。


「大丈夫、気にしてないから、無事で帰って来てね。」


ハルカは美森達の所へ向かう様勧めたのは自分であるため特にロンリネスを悪く思う事も無く彼女の健闘を祈った。


「ええ。」


ロンリネスは軽く返事をして病室を跡にした。





美森と英夜の2人も事務所に通じる扉に入ってからしばらく一本道の廊下を歩いていた。


「天城君。」


その時美森がふと自分の左側で歩いていた英夜に話しかける。


「何だ?」


英夜は目を美森の方に寄せて返事をする。


「あの2人って結構付き合い古いの?」


美森は胡桃とリコの関係が気になり、英夜に伺ってみたのだ。


「いや、滝内は2年生の新学期の時に転校して来たそうだ、その時に仲良くなったらしい。」

「そうなんだ。」

「胡桃もオーラナイトの一族に生まれたが故の疎外感はあったし、自分の事情を打ち明けられる存在が出来て嬉しかったんだろう。」

「確かにオーラナイトの事は一般人に口外してはいけないけれど、天使が相手なら話は別だものね。」


英夜からある程度の事情を聞いた美森は胡桃も特殊な家系に生まれたが故に寂しくて、本当の事を語り合える友達が出来て嬉しかったのだろうと悟った。


「ま、疎外感を感じてるのはお前だけじゃないという事だ。」


英夜は胡桃と同じ様な思いを抱いているだろう美森にオーラナイトの家に生まれ、周りから疎外感を感じるのはみんなそうだと告げる。


「あはは……」


美森は痛い所を指摘されたと思い、苦笑いになる。


「ただなぁ、ハンバーガーショップにいた時胡桃がトイレで抜けた事があったんだ。」


英夜は話を胡桃とリコの話題へ戻し、ハンバーガーショップで美森が合流する前にあった出来事を話し始める。


「ええ、それで?」


美森は話が気になり、詳しく聞こうとする。


「その時滝内が言ったんだ、『胡桃ちゃんは忘れてるけど私達が出会ったのは今年が初めてじゃない』って。」

「成程、滝内さんは詳しくは話さなかったの?」


英夜からリコの意味深な言葉を聞かされた美森はリコから深く事情をきかなかったのかと問いただす。


「詳しくは内緒だとよ、まぁあの2人の問題だし深入りする気はないがな……」


英夜はリコが何かを隠していながらも、それは胡桃とリコがどうこうする問題であるため深く干渉しないそうだった。


「それもそうだね。」


美森も英夜の意見に納得し深入りを控える事にする。

2人はそんな事を話している内に広いホールへとやって来た。

英夜が気配に感じ天井を見上げると、美森がディセントと戦った時にもいた蝿の悪魔が無数に張り付いていた。


「さーて、雑談はこれ位にして仕事を始めるか。」


英夜は懐中時計を構え、戦闘態勢に入る様美森に呼び掛ける。


「そうみたいだね。」


美森も英夜に続いて懐中時計を構えながら返事をする。

蝿の悪魔達も美森と英夜の存在に気づき、飛びかかって来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ