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77話 霊園の歌姫38

オデイシアスを倒した美森装甲態は地上へと降りて変身を解いた。

イーグルドローンも元のサイズに戻って直花の元へ飛んでゆき、盾になっていたブライアン装甲態も人型に戻って変身を解いた。

雪木達が美森の元へ駆けつける。

「水前寺……あの……その……気は確か?」

雪木は折角美森が仇であるオデイシアスを倒したというめでたい状況なのに、いざ復讐が終わってみると呆気ない出来事の様に感じていい言葉が思いつかず、つい彼の精神状態の心配をしてしまう。

「……はい。」

美森は素直に嬉しい気持ちを表に出せない複雑で堅苦しい表情のままただ一言雪木に短い返事をした。

「今後、どうしたいの?」

直花は復讐を終えた後の美森が気になり、尋ねてみる。

「オーラナイトになった以上、今後もこの仕事を続けようと思います……ただ……生きるのって、むずかしいです。」

美森はオーラナイトとしての人生を生涯突き進むつもりでいたが、ただそれでも難しいと思う物があった。

「それは……復讐を成し遂げた所で高井さんが生き返る訳じゃないから?」

雪木は美森の言葉の意味を推測し、それを指摘した。

「……はい、憎い仇を許すなんて甘い事はせずちゃんと復讐は成し遂げたのですが……跡に残るのは虚無感だけ……」

美森は仇を討った所で自分の中で何が変わったのかと葛藤しながら、高井との思い出を頭に過らせる。








☆☆☆








ある日のレストランで、美森と高井が割り勘で食事をしていた。

「あの……高井さんって職業柄人の死に触れる事が多いですよね? 辛くはないんですか?」

美森はふと高井が仕事をこなしている心境が気になり尋ねてみる。

「辛かったらこんな仕事選ばないわよ、それも覚悟の上で、人の役に立てる仕事に就いたんだから、軽く見られるのも侵害。」

高井は美森が悪気があって質問した訳ではない事を理解しつつも、軽率な発言だと注意した。

「すいません、軽率な発言でした……でもそんな高井さんを凄く尊敬してます、機嫌取りではなく本当の気持ちです。」

美森は今しがたの失言を謝罪した後、道徳心を持って看護師という仕事に努めている彼女に敬意の言葉を送った。

「褒めたって何も出ないわよ、貴方はこの先どうしたいの?」

高井は美森が純粋に自分を尊敬してくれてるのだと察した後、美森自身は大学を卒業したらどう生きて行きたいのかが気になり質問をした。

「僕ですか? 僕も他人の役に立てる人間になりたいと思って、前にも言った通り警察官を目指すつもりです、僕って一見すると頼りなさそうに見えるけど、これでも体力に自信があるんですよ。」

美森はオーラとは無縁な平凡な人生を望みながらも心の奥では正義感を強く持っており、警察官になりたい事や日頃から体力づくりをしてる事を高井に伝えた。

「年下の男の子に守られるのはちょっと複雑だけど、頼もしい姿勢ね。」

高井は美森は控えめな性格ながらも発言に後ろめたさ等は感じられないと判断し、彼に守って貰うのもアリかと考えた。

「僕が高井さんを守る……僕はとっても心が踊ります、気合が湧き出ます!」

美森は自分が高井を守るというシチュエーションを想像すると頬を赤らめ興奮してしまい、つい熱い台詞を吐き出してしまった。

「あはは……貴方でも熱くなったりするのね……話は変わるけど、貴方は大切な家族が死んだ時、どうする?」

高井は興奮を隠しきれない美森に少し苦笑いをした後、話題を変えてシビアな質問を投げかけた。

「え……それは……本当に哀しくて、天国って本当にあるのかな? 死んだ人は幽霊となって生きてる人を見守ったりするのかなって色々考え込んじゃいますが、それでも僕は死んでしまった人の分まで生きていた、後追い自殺という後ろめた行為だけはしたくないって思います。」

美森は先程自分が生死についての質問を高井にしたため、彼女はその話題に戻したのだと理解し、そして深刻な表情になって自分なりの人の死の向き合い方を打ち明けた。

「それが一番ベストな生き方ね……私も家族とかの死を経験して今、看護師である自分がいるけれど……残された人間はどんなに辛くても先立たれた人の分まで精一杯生きる事だと思うわ。」

高井は自分の職業を通じて感じた理論を美森に打ち明ける。

彼女の瞳からは真っ直ぐと前向きな強い意志が感じられた。

「……貴女みたいな真っ直ぐな女性に出会えて本当によかった、歳の差の事なんて忘れてしまいたい。」

美森は高井の純粋さと誠実さを読み取り、笑顔で彼女に惚れた事を誇りに思った。








☆☆☆








「以前高井さんにもし大切な人が死んでも死んでしまった人の分まで生きたいって伝えた事があります……よりによって高井さんを失うという結果になるとは……なんとも皮肉……でもあの人は芯が強かった、だから強く生きないと高井さんに顔向けできないとも思っています。」

美森は過去に囚われてウジウジした態度で生きていては高井も呆れる筈だと思って、復讐を成し遂げて彼女の無念を晴らしただけでも十分志を強く持てるはずだと前向きに物事を考えようとしていた。

「そうね……自分が大切な人の分まで精一杯生きる事が重要よね。」

雪木は高井は生き返らないと後ろ向きな気持ちにならず、前を向いて歩こうと努力する美森を褒めた。

「さてと、やるべき事はまだ残ってるわ、人質にされた子供達も助け出さなきゃ。」

直花は皆が美森の復讐の達成で忘れがちになっていないかと不安になり、オデイシアスが自分達をゲームに強制参加させるために囚えた人質も救助しようと注意を呼びかけた。

「それでしたら、私がやっときます、もしよろしければブライアンさんもお手伝い出来ませんか?」

アモーレは戦いは美森が十分に頑張ったと考え、後始末的な事はせめて戦いを見学していた自分がやるべきだと考え、ついでに無造作に選んでしまったか、ブライアンにも手伝いを要求した。

「断る理由も無いし、いいだろう。」

ブライアンは囚われていた人質の救助と保護もオーラナイトとしての仕事だと考え、素直にアモーレの手伝いに応じた。

その場をアモーレと共に立ち去る最中、ブライアンは静かに美森を見つめて考え事をする。

(事情は詳しくは知らないが彼にも心から愛してる人がいた事は察した……俺にも……ヴァイオレットがいる……)

ブライアンは高井という女性の人物像自体は全然知らない身だったが、ヴァイオレットの様に性格が歪んでいな女性であれば美森も純粋に愛せるため、彼らの恋が純愛であった事を望んだ。

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