76話 霊園の歌姫37
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直花のイーグルドローン、そして武器化したブライアン装甲態を武装した美森装甲態は万全な調子でオデイシアスに向かって行く。
するとオデイシアスはまだ披露していなかった技、口から黒いビームを放つという攻撃で応戦した。
美森装甲態はすぐにブライアン装甲態を盾にして身を守った。
そのままビームを押し切って突撃し、剣を振り下ろす。
オデイシアスは後退して攻撃を回避し、美森装甲態から離れて距離を取る。
そして再度ビーム攻撃を美森装甲態へ放った。
美森装甲態は空中でビームを回避してブライアン装甲態を装備した左腕を突き立てた。
ブライアン装甲態のボディにオーラが充電され、青色のビームが放たれた。
「ぐおっ!!」
ビームはオデイシアスにあたり、彼は呻き声を上げる。
しかし負けずと身体をうねらせながらビームで反撃した。
双方のビームは弾幕の様に激しくぶつかり合い、そして一瞬の隙を突いたオデイシアスが鎖で美森装甲態の右脚を拘束した。
「ぐっ!!」
美森装甲態は剣で鎖を断ち切ろうとするが、オデイシアスはその暇も与えず鎖を操作して美森装甲態ごと振り回した。
しかし美森装甲態も負けじと背中の翼を操り、鎖に抵抗して逆回転を始めた。
逆回転を重ねる内にオデイシアスの鎖にも負担が通ったのか、やがて鎖は千切れた。
そして美森装甲態はオデイシアスに突進し、自分の剣と盾と化しているブライアン装甲態のブレード部分で彼の身体を突き刺した。
美森装甲態はターザンロープを滑る様にオデイシアスの身体に切り傷を入れながら飛行する。
「ぐぎゃああああああああああ!!」
オデイシアスは耐え難い激痛と共に悲鳴を上げた。
彼の身体を斬り滑り、尾の部分まで到達した美森装甲態はそこで刃を抜き取って飛び去った。
美森装甲態はオデイシアスからある程度距離を取ると、彼の様子を伺う。
オデイシアスは身を刻まれて苦しんでる様子だったが、次の瞬間黒い霧となって蒸発した。
「まだ終わってない……」
美森装甲態はオデイシアスもここで呆気なくやられる程弱くないと予想して一言呟いだ。
彼の予想通り、黒い霧は一カ所に集まり、やがて人間態のオデイシアスへと戻った。
しかし先程までとは違い、瞳は赤くギラついており肌も紫色で如何にも人外染みた姿となっていた。
そして彼の背後には大きなムカデのビジョンが映し出されていた。
「第3形態って奴だ!!」
オデイシアスは今の自分の姿の説明をした後、背中から次々と鎖を具現化する。
やがて具現化した鎖は全てオデイシアスの背中から切り離され、紙飛行機の様な形をした鉄の塊に変化した。
鉄の紙飛行機は四方八方に飛び散り、黒いビームを発射して美森装甲態を攻撃する。
「ぐっ!!」
美森装甲態は盾でガードしたり剣でビームを切り裂いたりしてオデイシアスの攻撃を退ける。
「オラオラオラ――――――!!」
しかしオデイシアスは美森装甲態に追い打ちをかけるべく突進してきた。
美森装甲態は盾でオデイシアスを受け止めるが、彼は背中から2本の鎖を繰り出した。
鎖は美森装甲態の周りを一周し、彼の背中を突き刺そうとする。
「ぐっ!!」
美森装甲態は咄嗟の判断でブライアン装甲態を左腕から切り離した。
するとオデイシアスはその反動で滑って体勢を崩し、2本の鎖も美森装甲態の背中に直撃せずに済んだ。
美森装甲態はオデイシアスから少し距離を取ると、再びブライアン装甲態を装備した。
「中々派手に使ってくれるな。」
ブライアン装甲態は自分を応用してオデイシアスの奇襲を回避した美森装甲態を賛美する。
「君と同じく武器に変形できる人を知っているから、慣れてるんだよ。」
美森装甲態は銀を思い出し、彼女同様に武器に変形できるブライアン装甲態の扱い方はすでにマスターしている事を打ち明けた。
「ククク……面白いねぇ、君は!!」
オデイシアスは余裕な態度を崩さないまま、引き続き鉄の紙飛行機を操って美森装甲態を攻撃する。
美森装甲態は鉄の紙飛行機のビームをブライアン装甲態のビームで相殺しながらオデイシアスへ接近していく。
その最中、彼は頭の中で様々な事を考え始めた。
勇気を持って年上である高井に告白した事、高井とデートした事、高井の死後にモニカや銀に勇気づけられた事、そして今戦いを見守ってくれている仲間達、自分の人生、自分一人だけで切り開いて来た訳ではないと思うと嬉しい気持ちになった。
高井を愛したから、他者を愛したから強くなりたいという思想を抱くのだという事実に気づき胸が高鳴った。
そして彼の剣がオデイシアスに振り下ろされる。
オデイシアスはそれを右手で受け止めたが、やがて力に押され左手も使った。
「復讐に燃えるのは結構! だが俺達悪魔が人を殺すのはごく普通の行為だ! 構うだけ無駄だと思うがね!!」
オデイシアスは攻撃を必死に受け止めて若干辛そうな表情だったが、それでも強がりともとれる挑発を美森装甲態に吐き捨てた。
「種族の価値観なんてどうでもいい、人間とか天使とか悪魔とかそんな事は関係無い……僕は……俺は愛する人の仇を獲りたいだけだ!!」
今の美森装甲態は悪魔と人間の感性の違い等の細かい理論はどうでもよかった。
復讐を果たし、今の自分の心をマイナスからゼロに戻したいという想い一筋で、その影響もあってか一人称も強気な物となっていた。
そしてオデイシアスは力負けし、美森装甲態の剣が彼の身体を切り裂いた。
「ぐああああああああ!!」
オデイシアスは激痛による悲鳴を上げるが、すぐに傷を回復するため美森装甲態から距離を取った。
そして鉄の紙飛行機を自分の周りに集め、美森装甲態を近づけまいと一斉にビームを放った。
しかし美森装甲態は火事場の馬鹿力が発揮されたのか、盾でビームをガードしたり僅かな隙間を見つけたりして鮮やかな飛行速度でオデイシアスに接近した。
「お―――――――――りゃ!!」
美森装甲態は掛け声と共にオデイシアスの腹部に剣を突き刺した。
「ぐうううううううう!! 敗北か……それも面白い!!」
オデイシアスは激痛の最中、自分の体内に美森装甲態のオーラが流れ込み、自分はそのエネルギーに耐えきれず落命する運命を悟った。
しかし仲間を集めて一つの組織を築いたという達成感もあるのか、不思議と自分の死に悔いは感じなかった。
やがてオデイシアスの身体に亀裂が走り、大爆発が起きた。
戦いを眺めていた雪木達は爆風で吹き飛ばされない様身体を蹲めた。
やがて爆発が止み、空中には美森装甲態ただ一人が残った。
復讐を達成した彼は嬉しいという気持ちよりも虚しいという気持ちの方が強く身体が硬直していた。
オデイシアスを倒した所で高井が生き返る訳ではないからだ。
だが仇を討つことに意味はあったと美森装甲態は思いたかった。




