75話 霊園の歌姫36
1
美森装甲態、オデイシアスの両者は空中で剣と鎖をぶつけ合い、激しい金属音が数回に渡って響き合った。
その最中、隙を突いたオデイシアスは美森装甲態の両足を2本の鎖で拘束した。
「へへーん、やっぱり運は俺に味方してくれてるな!!」
オデイシアスは美森装甲態を見下す様な台詞を吐いた後、鎖を引っ込めて彼を引っ張り出した。
そしてコートから取り出したスタンガンにオーラを込め、美森装甲態に強烈な電撃をおみまいした。
「ぐああああああああ!!」
美森装甲態は電撃で苦しみだすが、剣でガードしてスタンガンの身体への直撃は防いでおり、ダメージは軽減されていた。
そして美森装甲態は苦しみを堪え乍ら、オデイシアスの顔面にパンチを入れた。
「おおおおおおおおお!!」
美森装甲態の身体を伝ってオデイシアスにも電流が走り、彼は苦痛の悲鳴を上げて地上へと落下する。
「僕が電気に弱いと思ったら大間違いだ!!」
「う――――ん! 効いた―――――――!!」
美森装甲態は追い打ちでオデイシアスに突撃するが、対するオデイシアスは再び巨大なムカデの姿となって応戦する。
オデイシアスの直撃を受けた美森装甲態は壁を突き破って外へと出てしまった。
火山の煙で覆われた暗い空のフィールドは美森装甲態のテンションをネガティブにさせてしまう。
それでも彼は気力を根性で保ち、体制を立て直してオデイシアスの頭部へと登った。
ムカデの姿となったオデイシアスの無数の脚が鎖に変化して美森装甲態を襲うが、彼は鎖を剣で薙ぎ払いながら走り出した。
一方の戦いを観戦していた雪木達も屋敷の外へと出て激闘の様子を伺っていた。
「あれ……どっちが有利なのでしょうか……?」
アモーレは不安な表情で戦いの行く末を皆に尋ねる。
「見た感じだとお互いの力は互角ね、予想の使用が無いわ。」
質問に答えたのは直花だったが、両者共に互角にぶつかり合っている戦況だったために明確な答えが分からずにいた。
美森装甲態はただ闇雲にオデイシアスの身体を走っている訳ではなく、彼のオーラの出所を探知していた。
つまりはオデイシアスの心臓部を攻撃して勝負を決める気だった。
そして美森装甲態は心臓部の位置を割り出し、その上で立ち止まって剣を突き刺そうとした。
しかしオデイシアスも心臓を攻撃されまいと身体をグルグルと回転させて美森装甲態を振り払おうとする。
「ぐぅ……!」
美森装甲態は間一髪で鎖の脚に捕まって持ちこたえようとする。
しかしオデイシアスの回転の速度は速くなる一方で、このままではいずれ振り落されると考えた美森装甲態は自分から手を放した。
通常ならかなりの遠距離へ飛ばされる所だったが、美森装甲態はオーラの出力を上げて空中停止し、再びオデイシアスの方へ戻って行った。
「お――――――――りゃ!!」
美森装甲態は掛け声と共に剣をオデイシアスへと投げ飛ばした。
「ぐああああああ!!」
投げ飛ばされた剣はオデイシアスの頭上へと突き刺さり、彼は苦痛の声を上げた。
その後、美森装甲態は岩山へと着地し、ずり落ちながらも足に力を込めて踏ん張りを入れ、なんとかその場に立ち止った。
「今の一撃は効いたかも!」
戦いを観戦していたアモーレはオデイシアスが苦しんでいる様子を見て美森装甲態の勝利を期待した。
「どうかしら、相手もこれで大人しく倒されるとは限らないし。」
一方の雪木は、悪魔の生命力からして頭を攻撃されても持ちこたえるであろうと判断し、逆にピンチになったのをトリガーにオデイシアスが自棄を起こさないかが不安だった。
雪木の予想通り、オデイシアスは鎖の脚で剣を抜いた後、美森装甲態のいる位置に目がけて地面へ突進した。
美森装甲態は間一髪で攻撃を回避するが、オデイシアスはそのまま地面へと潜り、別の位置から地面を突き破って外に出た。
オデイシアスは再び美森装甲態に突進し、今度は彼が攻撃を避けるのを先読みして方向転換し、そして美森装甲態を大きな口で捕らえた。
「ぐあぁ……ぐぅ……!!」
美森装甲態は新しい剣を具現化しようとオーラを研ぎ澄ませようとするが、このままでは噛み砕かれてしまうという危機感から中々具現化に集中できなかった。
「水前寺!!」
美森装甲態が追いつめられている状況を見た雪木は思わず焦った表情で叫んでしまう。
一方のブライアンは直花にヒソヒソ話を持ち掛けていた。
「……あいつが納得してくれるかどうかは分からんが、もうこの方法に頼るしかない。」
「そうね、貴方でさえこのやり方には賛同したし、柔軟なタイプの彼もきっと受け入れてくれると思う。」
ブライアンと直花は美森装甲態の戦況を有利にする策を相談し合っていたらしく、それを実行するつもりでいた。
一方の美森装甲態は必死で頭を働かせ、身体を液状化して脱出しようと考えた。
しかし液状化してオデイシアスの口から抜け出した直後、電流を帯びた鎖が美森装甲態を襲った。
オデイシアスは所持していたスタンガンのバッテリーを自分のオーラとして吸収し、鎖経由で美森装甲態に電撃を浴びせたのだった。
「ぐああああああああ!!」
美森装甲態は更なる追い打ちで苦しむが、それでもなんとか剣の具現化を完了して鎖を断ち切った。
美森装甲態は再び地面へ着地するが、先程の電撃によるダメージで跪いてしまう。
『聞いて、水前寺美森。』
するとその時、美森装甲態の近くで声が聞こえた。
右下の方へ振り向くと、そこにはイーグルドローンが止まっていた。
『私達は直接貴方の戦いに介入しない、だけど私達を戦利品として使うのはどう?』
直花はイーグルドローン経由のテレパシーで彼に語り掛け、そして自分とブライアンが考えたであろう策を伝えようとした。
「戦利品? どういう事?」
美森装甲態は戦闘に参加しないのであればどうする気なのかと直花に問いかける。
するとイーグルドローンは飛び立ち、美森装甲態の背中へと張り付いた。
そしてイーグルドローンの翼は巨大化し、まるで美森装甲態から翼が生えているかのような形状になった。
「こ……これは!?」
美森装甲態は直花の協力の仕方に驚くが、その直後にオデイシアスが再び突進を仕掛けて来た。
彼は思わずジャンプして突進をかわすが、するとイーグルドローンの翼で自力のオーラで飛ぶより自由に飛行できた。
『イーグルドローンを貴方のオーラと接続させたわ、ここから先は貴方がイーグルドローンを操作出来る、これならまだ貴方1人が戦っているという形になると思うけど……どうかしら、了承してくれる?』
直花は自分はただイーグルドローンを貸し与えるだけで自分が直接助太刀する訳ではないと説得して、自分のやり方を認めてくれるかどうか美森装甲態に訪ねた。
「……分かった、有効に使わせて貰うよ。」
美森装甲態は確かにこれならまだオデイシアスとの1対1の戦いをしている状況だと思って、イーグルドローンを貸してくれた直花に感謝した。
「うお――――――!! 俺も使え―――――――!!」
すると次にブライアン装甲態が猛スピードのダッシュで戦場に駆けつけ、そして空高くジャンプをした。
ブライアン装甲態は空中で自分の身体を盾の様な形に変形させて、美森装甲態の左腕へと合体した。
盾の下の部分にはサイの角の様なブレードが装備されていて、防具の他に攻撃にも利用できる事が伺えた。
「俺は剣、防具の他にビームを撃てる飛び道具としても使える、つまり3種の使い方が出来る武器に変形できる、俺も結果としてはお前の武器であって俺自身が直接助太刀する訳じゃないから問題ないだろ?」
変形したブライアン装甲態自分の使い方を説明した後、自分を使ってくれるかと美森装甲態に質問した。
「君まで……いいよ、ありがとう!」
美森装甲態は直花もブライアン装甲態も自分に勝負を預けるという形を崩さずに応用を利かせて協力してくれてるんだなと思って仲間を持つ事の有難味を実感した。
復讐は自分一人の力で成さないと意味がないが、だからといって仲間を持たずに一匹狼を貫いては自分は人として成長できないと。
「武装した所でいい気になるなよ!」
一方のオデイシアスは美森装甲態の武装が整った所で自分が追いつめられたとは限らないと断言した。
「お前がどれだけ強かろうと関係ない! 僕は復讐者である前にオーラナイトだ、お前を倒して人々の平穏を守って見せる!!」
美森装甲態は負けずと啖呵を切った後、オデイシアスに立ち向かって行った。




