70話 霊園の歌姫31
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美森達はジャングル地帯を跡にして新たなるフィールドに来ていた。
次のフィールドは時代劇の撮影に使われそうな江戸時代を模した町並みだった。
結界の中のため、相変わらず空の風景は不気味に赤かったが。
「ロンリネスさんから聞いた事があります、私が元いた時代の当時、日本はこの様な町並みだったと、イタリアとは全然違うしなんだか新鮮な気持ちです。」
アモーレは以前ロンリネスから江戸時代の風景を絵画等で見せてもらっており、それを生で見れた事を新鮮に思った。
「多分ここは80年代頃、日本好きのアメリカ人画家が江戸時代の事を勉強して描いた絵の風景を模してるのだと思うわ。」
雪木はこのフィールドも昭和頃との関連性がある筈だと推測し、心当たりのある絵画を割り当てた。
「パズルカードは何処だろう……まさか奥に見える江戸城の様な城にあるんじゃ……」
美森はパズルカードの隠し場所が奥に聳え立つ城の内部だとしたら探し出すのはかなり面倒だと感じた。
すると直花はイーグルドローンを空に飛ばした。
そしてイーグルドローンの翼から放たれる真空剣が巨大な城を攻撃する。
真空剣を受けた城からは煙が上がり、斬り口の先には城の内部が存在せず、黒い岩の塊が確認できた。
「どうやらあの城はハリボテの様ね、敵もあまりカードを隠してるフィールドの複雑化は考えてないみたい。」
直花は城はただの背景で、周りにある館一軒一軒からパズルカードを探すシステムなのだと読み取った。
「それなら安心ですね、この場合僕と雪木さんが右側、雑賀さんとアモーレが左側を探すというのはどうでしょう?」
城は気にしなくていいと知って安心した美森は取りあえずチームで分かれてパズルカードを探そうと提案した。
「そうね、城は調べなくていいと分かったけどまだ手間が掛かって大変そうだけど。」
直花は館の中を虱潰しに探すのは骨が折れると思いながらも美森の意見に賛同した。
「もっと楽な方法があるぜ。」
そんな時、美森達の背後で男性の声が聞こえ、一同は後ろを振り向いた。
そこにいたのはブライアンだった。
「ブライアン、貴方、日本に来てたの?」
予想外の人物の登場に直花は驚いた。
「なんだよ、俺がいちゃいけない訳?」
ブライアンはムスっとした表情で腕を組みながら直花に返答する。
「相変わらず素直じゃない性格……」
直花はブライアンのツンツンとした態度を見て相変わらずだと感じた。
「君がブライアン君? 雑賀さんから話は聞いてるよ、僕は水前寺美森、よろしくね。」
美森も直花の話しで聞いたブライアンの顔を拝めた事に驚きながらも、取りあえず挨拶をして彼に手を差し伸べた。
ブライアンは一瞬、何かを考え込んだ様に硬直するが、すぐに自分も手を差し伸べ美森と握手をした。
「直花を追っての日本までやって来た、道を歩いていたら直花とあんたらが固まって歩いているのを見かけて跡を追ってみたら悪魔とゲームをしている状況を知った、というのが俺が此処に居る理由だ、ブライアン・デンジャーフィールドだ。」
ブライアンは自分が日本に来て結界の中にいる理由を語った後、こちらも自己紹介をした。
「あの……貴方から感じるこの気配……ハーフエンジェルですか?」
一方のアモーレはブライアンから半分だけ天使の気配がする事に気づき、ハーフエンジェルかと尋ねた。
「ああ、どうやらお前も俺と同じらしいな……そっちの女はどういう混ざり方をしてるのだか……」
ブライアンはアモーレからも自分と同じハーフエンジェルの気配を感じて親近感を抱いた後、雪木から感じる天使と悪魔の気配に少し引きつった表情になる。
「私の事はスルーしてくれない?」
雪木は直花に続いてブライアンからも自分の混血について指摘されるのは御免だと感じて気にしないでくれと頼み込んだ。
「まぁ……苦労が多いという事は理解した……」
ブライアンは雪木の混血によるコンプレックスを読み取り、気の毒だから今後は触れない様にしようと思った。
「あっ!私達も自己紹介しなくては、アモーレ・ド・ヴェルデローザです。」
「雪木蛍よ。」
アモーレは自分達の自己紹介がまだだった事に気づいて彼に名乗り、雪木もそれに続いて名乗り出した。
「よろしくな。」
ブライアンは笑顔を見せず硬い表情のままだったがアモーレと雪木に一礼した。
「つかぬ事をお伺いしますが、貴方の祖国ってどんな感じですか? 素敵な所ですか?」
そしてアモーレは日本同様、ヨーロッパとは離れた大陸にあるアメリカがどういった国なのかが気になり質問した。
「どっちかっていうと物騒だな……この間なんか近所の老人ホームで銃乱射事件があって、捕まった犯人は統合失調症の疑いがあるとかで精神鑑定中で……日本では市民が銃を持つ事は法律で禁じられてるみたいだがウチは市民が銃を持ってOKだからそれ故の犯罪も多い。」
ブライアンは自国であるアメリカでは物騒な事件が多いという印象を持っていた。
ただしそれでもいい所もあると考えており、自分の国に対する誇りは持ち合わせている方ではあるが。
「えーと……大変なんですね……」
アモーレは苦笑いしながらブライアンの気苦労を悟った。
「そんな事より、さっき言ってた『もっと楽な方法』って何?」
直花はブライアンが現れて第一声で語った言葉を思い出し彼に尋ねた。
「ああそうだった、実は俺も結界を探索してパズルカードを1枚手に入れた。」
ブライアンは思い出した様にジーンズのポケットからパズルカードを取り出し、所持している理由を説明した。
「へぇ、という事はこのフィールドのカードを探せば後は決戦ね、でもここのカードはどうやって探すの?」
雪木は手土産を渡す様にパズルカードを1枚手に入れていると報告したブライアンをお手柄に感じながら、肝心の後1枚の探し方を質問する。
「それをやるにはまず、あんた、そのトレンチコートを借してくれないか?」
ブライアンはまず下準備に美森にトレンチコートを使いたいと願い出た。
「? いいけど……」
美森はブライアンが何をする気か分からなかったが、取りあえずトレンチコートを脱いで彼に渡した。
トレンチコートを受け取ったブライアンはそれに右手の拳で突きを入れた。
するとブライアンの拳から流れたオーラがトレンチコートに降り注がれ、やがて黒いド―ベルマンへと姿を変えた。
「これは!?」
自分の衣類をド―ベルマンに変えられた美森は状況を読み込めず唖然とした。
「これがブライアンの能力、無生物にオーラを与えて命を作り出す、要するに物体を動物に変える事が出来るのよ。」
直花はブライアンの能力を簡単に説明した。
「それはまた随分と独特な能力ですね。」
美森はブライアンの能力の珍しさに関心を示した。
「この匂いだ、分かるか?」
ブライアンは早速ド―ベルマンにパズルカードの匂いを嗅がせた。
パズルカード自体、見た目はどれも一緒だったため匂いも同じだろうと予想しての行動だった。
匂いを覚えたド―ベルマンはパズルカードを探すため辺りを動き回る。
そしてある民家の中へと入って行った。
「あの中にあるらしい、行くぞ。」
ブライアンは美森達を先導する様にド―ベルマンの跡を追いかける。
美森達も走り出し、そして民家の中へと入った。
「ワン! ワン!」
そこではド―ベルマンが漬物を入れる桶の前で尻尾を振って吠えていた。
ブライアンは桶の蓋を開け、中に手を突っ込む。
そして桶の中からパズルカードを取り出した。
「本当に簡単に見つけちゃったわね。」
雪木はブライアンの能力が便利だと感じ、これで実質パズルカードの探索が終わった事に一安心した。
役目を終えたド―ベルマンも、元のトレンチコートへと戻って行った。
「これを手に入れれば後はボスとの決戦なんだろ?」
ブライアンはトレンチコートを拾って歩き出し、美森に話しかけながらトレンチコートとパズルカードを彼に渡した。
「うん、ありがとう。」
美森は出会って早々に実質最後のパズルカードを見つけてくれたブライアンに感謝と申し訳なさで一杯だった。
「はぁ……それじゃあ……とっとと外へ出ましょう。」
直花はこの後どういう展開になるかを予想してため息をつきながら、一同へ外へ出ようと呼びかけた。
一同が民家から出ると、2m程の大きさを持つ蟻の悪魔達が現れた。
美森はすぐに懐中時計を構えて変身しようとするが、するとブライアンが先頭に出た。
「俺はあんたらの事情はよく知らないが、あんたがボスと戦う事はなんとなく察した、あんたは体力を温存しておけ。」
ブライアンは蟻の悪魔達を蹴散らしてくれる様で、美森にオデイシアスとの決戦に備えて無駄な労力を使わない事を勧めた。
「何から何まで、悪いね。」
美森はブライアンの意見に従い、変身を中断した。
そしてブライアンは懐中時計を取り出して変身し、身体が青く発光した。
彼は碧の瞳を持つサイの顔を模したヘルメットの青いプレートアーマーに包まれた姿、ブライアン装甲態になった。
ブライアン装甲態は蟻の悪魔達に突撃し、パンチやキックで攻撃した。
サイという重量な動物をイメージした鎧だったが、それに反して動きは身軽で、一匹を殴り飛ばしたらもう一匹の身体に乗って連続キックで踏み倒すという戦法を取っていた。
「特に武器は使わないみたいだけど、中々やるね。」
美森はブライアン装甲態の戦いを見て彼も十分に頼もしいなと感じた。




