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68話 霊園の歌姫29

巨大蛇が美森を食おうと迫って来るが、彼は瞬時に身をかわして装甲態へと変身した。

そして足元の沼を冷気で凍らせて足場を作った。


「一先ず、こいつを片付けるか!」


美森装甲態はパズルカードの前に巨大蛇を倒した方が効率が良いと考え、オーラで沼を次々と凍らせて通路を作り、スケートをする様に滑って行く。

そして高くジャンプして巨大蛇に剣を一振りした。

顔を正面から斬られた巨大蛇は怯んでしまう。


「てーりゃっ!!」


美森装甲態は木に一旦着地した後、追い打ちをかけるため再び巨大蛇に向かって行き、巨大蛇の首を切断した。

首を切断された巨大蛇の身体は沼へと沈み、大きな音と共に水しぶきが上がった。

巨大蛇を倒した事を確認した美森装甲態は、もう一匹の巨大蛇がどうなっているかを確認する。

もう一匹の方もイーグルドローンとアモーレのレーザーによる乱れ攻撃を受け、絶命して沼に沈んでいく光景が見えた。


「あの2人も中々やるね。」


美森装甲態はもうパズルカードを取りに行っても安心だと判断し、ゴールの島へ沼を凍らせて進んだ。

島まで辿り着くと、念のためオーラを研ぎ澄ませて辺りに罠が無いかを調べた。


「意外と簡単だったな、でも全部で5枚集めなきゃいけないし複雑にされても困るけど。」


美森装甲態は島の周りにも気になる気配はないと感じて宝箱まで進んだ。

宝箱を開けると案の定、中にはパズルカードがあった。


「後2枚集めたらオデイシアスと……お前だけは必ず……」


美森装甲態はパズルカードの最後の1枚はオデイシアスとの奪い合いになるという事もあって、なんとしてでも後2枚集めて復讐を成し遂げたいと思っていた。







都内のコンビニでフォグは今バイトをしている最中だった。

レジでの接客を終えた後、彼は心の中でジルの事を考えていた。


(リチュオルはジルもコレクション入りにしようかと企んでいたが、果たしてあいつは無事だろうか……いや、何故ジルの事を心配しなくちゃいけない、あいつに干渉して何かが変わる訳ではない。)


フォグは気が付くとジルがリチュオルの毒牙にかかっていないか心配になっており、そんな良心的な感情を抱く自分がバカバカしいと言い聞かせ葛藤していた。


(あいつは俺を必要となんかしていない……必要となんか……)


フォグはジルは別に自分を必要とする理由なんかない、だから自分もジルを気遣うのはやめようと考える。

そしてふと、少年時代飯場にいた過去を思い出してしまう。








☆☆☆








当時12歳だったフォグは、高熱からの病み上がりで木の板を抱えて働いていた。

すると遠くでレンガを積みながら噂話をしている10代後半~20代前半位の男2人の話しが耳に入った。


「フォグが熱を出した日の夜、あいつの親父と看病したジジィが大喧嘩したんだよ、ジジィが『お前は自分の子供が死んだらどうするんだ!?』って問いかけた時、フォグの親父はしれっとした表情で『別に、死んだら死んだって構わねーよ』って返したんだよ。」

「ハハハ、フォグも可哀想だなぁ。」


男2人はフォグが父親からまるで愛情を抱かれていない事を愉快に思って笑いあった。

その話を聞いたフォグは父親は勿論、誰からも情を抱かれず不必要な存在なのだと絶望し、泣きそうな目をしながら歩き去って行った。








☆☆☆








(ちっ……今過去を思い出してどうする、俺は頂点に上り詰める、ただそれだけを考えて生きて行くべきなんだ!)


フォグは突然フラッシュバックした過去を振り払いながら、自分は裏社会で上り詰める事だけを考えればいい、余計な情は不要だと自問自答する。

そして次の客がレジに来た事に気づき、今考えていた事は全て忘れて接客しようと考えた。









英夜達はリチュオルに操られた女性達に縄で縛られていた。


「随分と集めやがって、この変態野郎!」


英夜は集められた女性の数の多さもあって、リチュオルを悪趣味なコレクターだと皮肉を吐いた。


「変態野郎で結構、だがな、人の人生には限りがある、それなら人形としてコレクションされて老いる事無く後生大事にされた方が彼女達も幸せだろ。」


リチュオルは英夜の皮肉を受け流しながら、永遠に若い姿のまま眠っていられる女性達はある意味幸せだと自分が女性をコレクションする理由を語った。


「御託ですね、誰だって歳をとって何時かは死にます、生を受けたからこそ老いと死にだって有難味を感じてこその人生です、花だって見る側は美しいと思うけど花自身は美には興味が無く、ただ短い命を懸命に生きているだけなんです。」


ジルは女性達の寿命を止めて人形にするリチュオルを激しく悍ましいと感じ、老いと死は生物の宿命だとリチュオルに反論した。


「うーん、泣かせる台詞じゃないか、お前気に入ったよ! でも最初はお前もコレクションに加えようかと思ったが気が変わったよ、さっきの屈辱を晴らさなきゃな。」


リチュオルはジルの言い分を皮肉で褒めた後、先程自分の能力を攻略した借りを返そうと彼女に近づいた。


「女性を人形にしたり痛めつけたりするなんて最低!」


胡桃はリチュオルがこれからジルに暴力を振るうと予想し、彼の所業を否定した。


「痛めつけたりはしねーよ、泥化して貰うんだ、ジワジワと泥になりながら死んでいってもらうぜ。」


リチュオルは再びモーニングスターを具現化しながらジルを泥化する事を宣言した。


「調子乗ってんじゃねぇぞこの野郎!」


英夜は頭の中で必死でジルを救う手段を模索しながらリチュオルを制止しようと叫ぶ。


「俺は調子に乗るのが好きなんでな。」


リチュオルは英夜を嘲笑い、叫ぶ事しか出来ない彼を無様に感じた。


「悍ましい……貴方達悪魔からはケダモノの臭いがする!」


ジルもフォグやリチュオルを目の辺りにして悪魔という存在の悍ましさを口にする。


「ケダモノで構わんよ、それじゃあ始めまーす!」


リチュオルはモーニングスターの鉄球をジルに近づけ、彼女の泥化を始めようとする。

その時だった。


「オヨッ!?」


何処からか疾風と共にやって来た何かが、リチュオルに突進した。


「な……何!?」


リコも何が起こったのか分からず困惑する。


「いてて……今度は何だってんだよ!?」


弾き飛ばされたリチュオルは起き上がり、自分に突進した者の正体を確認する。

そこにいた人物は銀だった。


「貴女は!?」


銀の一番近くにいるジルが彼女に名前を尋ねる。


「名前だけでも水前寺から聞いている筈だ、蓑丸銀。」


銀は英夜達が美森から自分の事を伺ってると予想しながら自己紹介をした。


「蓑丸……水前寺の師匠の!?」


英夜はまさかつい最近美森から聞かされた銀がこの場に現れた事に驚いた。


「おっ! 私の事しっかりお仲間に話していたのか、嬉しいじゃないの!」


銀は初対面である英夜が自分と美森の事を知っているのを見て、自分の事を話していた美森に感謝の気持ちを抱いた。


「新手の敵か! だがお前だって、操られてるだけの人間相手じゃ上手く戦えない筈だ!」


リチュオルは銀を英夜達の仲間だと認識して操ってる女性達を銀へ仕向ける。

すると銀はショートパンツのポケットから青色の木の葉を取り出した。


「ふぅ……」


銀が青色の木の葉に一息吹きかけると、辺りに青く輝く粉が飛び散った。

飛び散った粉は女性達に降りかかり、やがて粉を浴びた女性達は次々とその場にパタンと倒れて行った。


「こ……これは!?」


「こいつは仮死状態、及び洗脳状態から人間を解放する解毒剤さ、これで操られた人達はただ眠っているだけの状態になった、時が来れば目覚める。」


女性達が倒れた事に困惑するリチュオルに、銀は青い木の葉の効力を説明した。


「凄い、この状況を逆転するなんて!」


胡桃はあっという間に自分達が追いつめられた状況を逆転した銀を賛美した。


「昔モニカが同じ様な性癖の悪魔と対峙してな、その時の境遇から教訓して解毒剤を作ってそれを私に分けてくれたって訳、念のため言っておくけどモニカってのは水前寺のお袋さんね。」


銀は得意気に解毒剤である青い木の葉を持っている理由を説明し、美森が自分の母親であるモニカの事を教えていなかった仮定も想像して一応モニカについても説明した。


「あいつの母ちゃんの名前も聞いてるよ、つーかお前さん呼び捨てにしてるのか……」


英夜はモニカについても美森から聞かされている事を銀に教えた後、親子程歳が離れているであろうモニカを呼び捨てにしている銀にツッコミを入れた。


「すっかりモニカとはビジネスパートナーになっちまったからなぁ、この機会にタメで接しようと思ったのさ、この前だって一緒にバーで飲んだよ!」


銀はモニカとは歳の差を超えた親友の仲で呼び捨てでも接する事が出来るのだと英夜に説明した。


「仮死状態から戻したからっていい気になるなよ! お前を倒してまた仮死状態にすりゃぁいいだけの話だからな!!」


一方のリチュオルは解放された女性達は再び人形にしてしまえばいいと考えながら、本来の姿であろう3m程の大きさの赤色のモグラの怪物に変身して本領発揮をした。


「面白いじゃん、やってみな!!」


銀はこちらも本領発揮と言わんばかりに懐中時計を取り出して変身を開始する。

銀の身体は赤く光り輝き、やがて頭部はコンドルの顔を模したグレーの瞳のヘルメット、下半身のコートが付属している赤いプレートアーマーの銀装甲態へと変身した。

両手には斧の様に肥大した刃の剣を握り締めていた。


「あれが水前寺の師匠の鎧かよ……」


英夜は銀装甲態の姿を見て静かに感心した。

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