65話 霊園の歌姫26
1
オデイシアスのゲーム開始の合図共に、二組のチームは別方向へ走り出した。
そして美森達の行く先の廊下は進むたびに構造が変化し複雑になって行く。
「段々迷路みたいに入り組んできましたね、このまま固まって走り続けて良いのでしょうか!?」
アモーレは走り続けてる最中で美森が戦闘に立って走っているこの状況に疑問を抱き、別れて探すのはどうかと提案する。
「いや、このまま固まって探した方が無難だと思う、それにただ闇雲に走ってる訳じゃないよ、ここで一旦止まろう!」
美森はアモーレが思う程自分はがむしゃらに行動している訳ではないと伝えた後、走るのを一旦止める様一同に指示した。
「はぁ……はぁ……やっぱり私にはキツい……」
一番早く立ち止った雪木は運動不足の無さ故に走り続けた事に息切れしてしゃがみ込んだ。
「敵もそんなにスタート地点の付近にパズルカードを隠すとは考えられない、ある程度フィールドの深くに入り込んでから探そうって事ね。」
直花は美森が考えていそうな事を言い当てた。
「はい、ここまで来た後は周りに注意して探索を続ける時です、単純に道端に落ちている可能性やアイテムボックス的な物に入っている可能性もあるので細かく探しましょう。」
美森はいつの間にか自以外が女性であるこのメンバーのリーダー的存在になっている事を内心で恥ずかしく思いながらも、引き続きチームの指揮を続ける。
「そうね、隠した奴の思想を思い描かなきゃ。」
雪木は足手まといにならない様に努力しなくてはと思って立ち上がり、やる気を示した。
「オデイシアスの言ってたフォグって確かあの白髪の男よね、あいつがどういう心理をしているのかは謎だから困ったわね……」
直花はフォグと対面した時間が短く、彼の心境が読みづからったためにパズルカードの隠し場所が分からず困惑してしまう。
「あのー、あまり難しく考えずもっと柔軟になればいいのでは……?」
そんな直花にアモーレは案外見つけやすい所にパズルカードを隠しているのではないかと指摘する。
「まぁ……確かに言われてみればそうかもしれない……取りあえずあの奥に見える食堂から探してみましょう。」
直花は確かに複雑に物事を考えてもキリが無いと思い、まずは食堂のプレートがある部屋での探索から始めようと提案した。
「そうしよう、冷蔵庫とかシンプルな場所にカードを隠してるかもしれないし。」
美森は直花の意見に賛同し、一同は食堂へと向かった。
2
ハルカが入院している病院のボイラー室。
そこでリメインはまた気絶させた看護師を引っ張って連れ込んでいた。
今度は黒髪のショートカットの看護師だった。
リメインは看護師の身体の上に乗り、自分の身体を倒して看護師の顔に頬ずりをした。
「はぁ……いい香り……花がどうして美しいか知ってますか? 無抵抗だから……です……お人形さんは花の様じゃなきゃいけない……です……」
リメインは欲情をむき出しにしながら意識の無い看護師に囁きかける。
そんな時、またロンリネスがやって来た。
「おー、やってるやってる、また病院で性欲処理?」
ロンリネスは面白そうにリメインに話しかけた。
「だから、リメインはお人形さん遊びの邪魔をされるのは嫌い……です……」
リメインはまた楽しみを邪魔して来たロンリネスを不快に感じた。
「はいはいごめんなさいね、来て早々だけど消えまーす!」
「待って。」
ロンリネスはお茶らけた口調で立ち去ろうとするが、そんな彼女をリメインは呼び止めた。
「何かしら?」
ロンリネスは首をクルリと回して振り向きながら問い返す。
「この病院で入院してる人とはどういう関係……ですか?」
リメインはまだハルカとロンリネスがどういう関係かを聞いていなかった事に気づき、この機会に質問したのだった。
「ハルカの事? うーん……あの娘はただの人間じゃなくて訳ありで……一人にさせると危険だから監視してるの、でも本当に友達になりたいとも思っている。」
ロンリネスは少し考え込んだ後、リメインに少しだけハルカと一緒に居る理由を明かした。
「成程……話せば長くなる事は分かりました……今度またゆっくりと聞きます……」
リメインはロンリネス達の関係が複雑で、話を最後まで聞いてると気絶した看護師が目を覚ましてしまうと思って次の機会でゆっくりと聞き直す事にした。
「そうしましょう、それじゃあ今夜もお人形さん遊びを満喫してね。」
ロンリネスは身内であるリメインにハルカとの関係を話すのを内心複雑に感じながらも、笑顔で手を振ってボイラー室から立ち去った。
「さてと……まずはブラジャーが何色かを確かめる……です……」
ロンリネスを見送ったリメインは早速看護師の服を脱がせて下着を見ようと手を出した。
3
美森達が博物館に入る頃、英夜、胡桃、リコ、ジルの4人はサンアップルデパート内部にある美容院の近くにある洋服売り場でリチュオルが来るのを見張っていた。
「微かだけど悪魔の気配を感じて来たよ、みんな警戒して。」
先程から感覚を研ぎ澄ませていたリコは悪魔の気配を感知し、一同に注意を呼び掛ける。
「それにしても、お前まで来る事は無かっただろうに。」
英夜はその最中、リチュオルの討伐とコレクションにされた女性達の救出にジルが参加した事に触れた。
「1人で留守番するのは忍びないと思いました、私もオーラ使いになった以上、何か役に立つ事がしたいんです。」
ジルは自分はもう美森達の関係者になった以上は自分も彼らの力になりたいと考えていた様だった。
「気持ちは理解できますが、無理はしないで下さい、もしもの時は私達に構わず戦闘から離脱して下さいね。」
胡桃はジルを心配し、自分の命を優先して行動する様呼びかける。
「ええ、でも私も一応非力な女という訳ではないので過度な心配はしないで下さい。」
ジルは胡桃の忠告を受け止めながらも、自分はか弱い女性ではないとアピールした。
「3人共、悪魔の反応が近くなったよ、あの赤髪の男。」
そんな時、リコは遂にリチュオルが美容院にやって来るのを確認した。
英夜達もそれに反応してリチュオルに注目する。
一方のリチュオルもリコの天使の気配に反応してこちらを振り向いた。
それと同時に英夜達はリチュオルの方へ向かって行く。
「やれやれ、オーラナイトご一行が張り込みをしていたとはなぁ、何処で俺のスケジュールを知ったのか分かんねーが面倒だ。」
リチュオルは状況を理解し、厄介な連中に遭遇したと思って頭を抱えた。
「お前が女を連れ去ってる悪魔だな?」
英夜は単刀直入にリチュオルの素性を探る。
「はいはい、だったらどうするんだ? まさかこんな人気の多い所でやり合おうって気じゃねーよな?」
リチュオルは追いつめられそうになっているこの状況の中、無関係の人間が多い事を盾に逃げようと考えていた。
「人を守るのがオーラナイトの仕事だけれどよぉ、俺は一々人目を気にする程几帳面じゃないぜ!」
英夜はこれまでの戦いを振り返って一般人の目を気にするのは面倒に感じており、問答無用でリチュオルに踵落としをお見舞いする。
「うぉっと! 困ったオーラナイトさんだねぇ、仕方ねぇから戦うか!」
間一髪で英夜の攻撃を避けたリチュオルはやむを得ず戦おうと思い、オーラでモーニングスターを具現化した。
「お前もやる気になったか! だったら胡桃!」
英夜はリチュオルが戦闘態勢に入ったのを確認すると、胡桃に何かの指示をする。
「言われずとも!」
胡桃は英夜に返事をした後、青いボールを取り出して空中に投げる。
そして胡桃は次に拳銃を取り出して青いボールに発砲した。
すると青いボールは膨張し、その場にいた英夜達を取り込んだ。
「な……なんだ!?」
リチュオルは驚いて逃げようとするも、ボールの膨張するスピードに追い付けず英夜達に続いて取り込まれてしまう。
そして青いボールは縮小し、その場から消え去った。
リチュオルが次に目を覚ますと、そこは以前英夜達がフォグと戦った空き地になっていた。
「何がどうなってるんだ?」
リチュオルは状況が読み込めず、英夜達に質問を投げかける。
「さっきのボールはテレポートが出来るボールよ、一般人を巻き込まない安全な場所まであんたごと移動したって訳。」
胡桃は先程のボールのからくりを簡単にリチュオルに説明した。
「へぇ、そりゃあ便利だな、このお人好し共!!」
リチュオルはなんだかんだで一般人を巻き込まない英夜達の姿勢に感心しながら、早速モーニングスターで攻撃を仕掛けた。
その攻撃に対し、英夜は速やかに懐中時計を取り出して変身し、薙刀で対抗した。
「お前がどんな能力を持ってんのか知らねぇが、拷問してでも連れ去った女達の事を吐いてもらうぜ!!」
薙刀の刃とモーニングスターの鉄球がぶつかり金属音が鳴り響いた後、英夜装甲態はリチュオルに啖呵を切った。
「ククク……俺の能力を知りたいか?」
するとリチュオルは突然不敵に笑い始め、自分の能力を隠さず披露しようという意思が感じられた。
「何か嫌な予感……」
リコはリチュオルが何か厄介そうな能力を隠していると感じて警戒した。
当のリチュオルはモーニングスターを突然地面に叩きつけた。
すると鉄球が地面に沈む様に入って行く。
「何する気……うわぁ、なんだ!?」
英夜装甲態はリチュオルに問いかけるが、その時突然彼の足元の地面が柔らかくなり、身体が沈み始めた。
「英夜!!」
胡桃は驚いて英夜装甲態に駆け寄ろうとするが、彼女の脚元の地面も柔らかくなってしまう。
「何これ!? まるで底なし沼の様に地面がドロドロになってる!!」
胡桃はこの現象がリチュオルの能力による物だと理解できたが、呆気なく術中にハマって焦ってしまう。
「俺のモーニングスターは直接武器として使うよりもこう使う方が有効なのさ、そう、例え固いコンクリートの地面でも泥化させる事がな!!」
リチュオルは術中にハマった英夜装甲態と胡桃を見て愉快に感じながら自分の能力を打ち明けた。




