64話 霊園の歌姫25
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博物館の中に入った美森達を出迎えたのはアークだった。
アモーレ以外の一同はブルーアルバトロスホテルで既にアークと面識があったため面倒な人物に再会したと思って苦い顔をしていた。
「霊園の歌姫、また会えるなんてうける―――――――!! ギャハハハハハ!!」
アークは直花を目にして早々、いつもの癖でつい大笑いしてしまった。
「それで、なんで貴方が出迎えて来たの? 早速貴方と対決をしろって事?」
直花はアークの大笑いをスルーしながら、戦う気があるのかどうかを尋ねた。
「本当はそうしたいけど、今回の俺の役割はバトルじゃない、お前らをオデイシアスの所まで案内させてやる事さ。」
アークは直花と戦いたい気持ちを我慢しつつ、自分に与えられた役割を話し出した。
「案内?」
「そう、今回もブルーアルバトロスホテルの時と同様のゲーム方式な戦いだ、詳しい事はオデイシアス本人に聞いて貰おうか、取りあえず今は付いて来い。」
キョトンとする直花にアークは有無を言わず付いて来る様指示する。
「ふざけるな……と言いたい所だけど、また人質がいたりするのか?」
美森はこんな時までにゲームをやる悪魔の思考に苛立ちながらも、ブルーアルバトロスホテルの時と同様に一般人を捕らえて人質にしている可能性を模索してアークに質問をした。
「人質ねぇ……一応、お前達に意欲的にゲームに参加してもらうために捕らえているなぁ。」
アークは涼しい顔をしながら今回のゲームにも人質がいる事を告げた。
「とっとと案内しなさい。」
雪木は人質の命が最優先だと思ってアークに従い、道案内を頼み込む。
「はいかしこまり、ついてきな。」
アークは状況の呑み込みの良い美森一行を嘲笑いながらその場から歩き出し、道案内を始める。
美森達は悪魔に言われるがままなこの状況を不服に思いながらも、囚われてる一般人の救出の為に我慢してアークの後へとついて行く。
博物館の内部は昭和初期の街並みの模型や道具が展示されており、こういった所にはプライベートで来たかったと美森達は内心で思った。
そして美森はオデイシアスへの復讐心を倍加したかたのか、高井との思い出を記憶に甦らせていた。
☆☆☆
ある日の晩、仕事を終えた高井を美森は自宅に呼び出した。
「ふーん、ちゃんと一人暮らしをしてるのね。」
美森の自宅であるアパートに上がった高井は彼が親元を離れて1人で暮らしている事に感心した。
「僕だってそれ位しますよ、もう20歳なんですから。」
美森は高井にお坊ちゃま育ちで親と同棲している軟弱者なのかと思われていた事に引きつって苦笑いをした。
「まぁ確かにそうね、一緒にお酒を酌み交わせる年齢だし。」
高井も1人暮らし位していなければ自分と付き合いたいなんて言い出さないかと思って微笑んだ。
「何はともあれ来てくれたのは嬉しいです、どうぞ中へ。」
美森は気を取り直して高井に手を差し伸べ、部屋に招き入れようとする。
高井は年下の男性の手を取るのは少し恥ずかしいと思いながらも今更気にする事ではないかと考えを改め美森の手を取った。
美森は好きな人の手に触れて嬉しい気分だった。
高井は靴を脱ぎ、美森に誘導されるまま居間へと入った。
「それで、電話で話した見せたい物って何?」
高井が美森に呼び出された理由は彼が見せたい物があるからだった。
彼女はキョトンとした表情で美森が自分に何を見せたいのかを尋ねる。
「これです。」
美森は早速テーブルの上に置かれている黒い台に紫の球体が乗った機械を高井に見せた。
「……それ、室内プラネタリウム?」
高井はその機械を見て少し考えた後、それがなんなのかを言い当てた。
「正解です! 実家にあった物を持ってきました、東京の空じゃ夜景なんて見れないし例え作り物だとしても高井さんと一緒に星を見て楽しみたいなぁって思いまして……こういうのって興味ありますか?」
美森は高井と一緒にプラネタリウムを見たい気持ちを語った後、彼女に星に興味があるかどうかを尋ねた。
「うーん……特別詳しい訳ではないけど嫌いではないわ。」
高井は星に詳しくはないが見るのは好きだったらしく、美森の誘いに乗る事にした。
「良かった、それじゃあ早速部屋の電気を消しますね!」
美森は高井が誘いに乗ってくれて安心し、居間の電源を切って室内プラネタリウムのスイッチを入れた。
部屋の天井に無数に輝く星々が映し出され、美森はご機嫌な気分で室内プラネタリウムをテーブルに置いて床に座った。
高井もそれに続いて美森の隣に座り込む。
「作り物でも結構綺麗な物ね……」
高井は天井の星を眺めながら本物顔負けのクオリティに感心する。
「高井さんは……例えば山奥とかで本物の星を見に行った経験ってありますか?」
美森はふと高井が本物の夜景を見た事があるかが気になり尋ねる。
「一応あるわね、一番印象に残っているのは少4の頃に友達3人で見に行った時ね。」
高井は自分の中で印象に残っている記憶を甦らせながら美森に語り始める。
「へぇ、友達3人で。」
「友達の1人の両親の車に乗せてもらって行ったから正確には5人ね、山奥の空気は美味しかったし流れ星も見れて楽しかったわ。」
高井は美森の方を見つめながら微笑み、その時の光景を彼に伝えた。
「友達と流れ星を見れるなんてロマンチックですね、小学生時代の高井さん……きっと可愛かったんだろうなぁ……」
美森は高井の話を聞いて羨ましいと思い、そして少女時代の高井を想像してうっとりとした。
「茶化さないの、その当時の貴方はまだ小さかった筈なんだから。」
高井は美森の頭をコツンと叩いて年齢差の事をやんわりと指摘した。
「えへへ、すいません。」
美森も言われてみれば高井が小学生の時は自分はまだ幼稚園児だったと考え、照れ笑いで高井に謝った。
☆☆☆
美森は高井にだって人生はあった、可愛い人形や綺麗な服をを買って貰ったり、学校で友達と仲良く雑談をしたりとそんな人生を歩んで看護師になった、そう思うと高井の人生を悲劇的に終わらせたオデイシアスに対する怒りが込み上げてきた。
そんな事を考えている間にオデイシアスのいるエリアまで到着した。
「よう、また会ったな!」
オデイシアスは第一声に陽気な表情で美森達に挨拶をした。
「下らない挨拶はいい、とっととゲームの内容を説明しろ!」
美森はオデイシアスを睨み付け、強気な返事を返した。
「はいはい分かりましたよ、ゲームはダンジョンを探索しながらバトルをするという内容だ、何故ダンジョンを探索するかっていうと結界の各地にパズルカードっていうアイテムを配置していてそれを先に5枚集めた方が勝ちというルールだからだ、ちなみにこれがそのパズルカードだ。」
オデイシアスは簡単にゲームの内容を説明した後、説明の中で出て来たパズルカードを美森達に見せた。
それは至って無地な青いカードだった。
「こっちは真面目に戦おうとしてるのに、人質を獲って強制的にゲームをさせようだなんて悪趣味ね。」
雪木は一見楽しそうに見えるこのゲームもこちらは復讐という真面目な動機で戦いたいがために嫌悪感を抱いてしまう。
「お褒めの言葉として受け取っておこう、ちなみにパズルカードの数は全部で9枚だから最後は必然的にバトルで奪い合う事になる、それと一応言っておくがパズルカードはこの場に居ないフォグに配置させたから俺もパズルカードの場所を知らない、安心しろ。」
オデイシアスは雪木の言葉を軽く受け取った後、パズルカードは公平に探し合いが出来ると美森達に伝える。
「ルールは分かったわ、早く始めて頂戴。」
直花はゲームのルールを理解した所でオデイシアスに開始してくれと要求する。
「了解。」
オデイシアスは指を鳴らして博物館内にオーラを送り、結界を作り出した。
相変わらず白い壁が血の様に赤く染まる不気味な空間であったが、ここまで来れば美森達も慣れてしまった。
「まずはお互い別れて探そう、OK?」
オデイシアスはどの道最後は戦うのだからまずは直接戦わずにパズルカードの探索から始めようと美森達に提案する。
「……条件がある、人質の存在を確認させろ。」
美森はオデイシアスに対する憎しみを堪えながら人質を見せてくれと頼み込む。
「ああ、奥の部屋で寝かせている、下校中の所を捕らえたガキ共だ。」
オデイシアスは右手を天に向けて指を鳴らず。
すると宙に人間程の大きさの鏡が具現化され、鏡の中にはお互いの両手をロープで縛られて眠っている小学生位の少年と少女が映し出された。
「よりによって子供を……だが子供達の命には変えられない、後で必ずお前の息の根を止めてやる!」
美森は人質に子供をチョイスしたオデイシアスに苛立ちながらも、強気な啖呵を切って本格的にゲームに乗る決断をした。
「よーし、それじゃあ早速楽しもうぜ、ゲーム開始だ。」
オデイシアスは自分に憎悪の感情を抱いて睨み付ける美森を面白く感じながらゲーム開始の宣言をした。




