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62話 霊園の歌姫23

高校の休み時間。

体育の授業を終えた胡桃は制服に着替えて水飲み場で水分補給をしていた。


「イッエーイ! 胡桃ちゃーん!!」


そんな時、リコがハイテンションな態度で胡桃に近づいて来る。


「何時に増して元気がいいわね……」


胡桃は突然嬉しそうに現れたリコを見て何事かと思って引きつった表情になる。


「さっき隣のクラスの演劇部の娘からこんな物を借りて来たの! 放課後ちょっと来てみてよ!」


リコはそう言って後ろに隠し持っていた赤いリボンの付いた緑のノースリーブのシャツと赤いチュチュスカートを胡桃に見せつける。


「どうしてまた?」


胡桃は何故自分がこの様な服を着なければいけないのかが分からず困惑する。


「去年の夏、山の川辺で釣りをしに行った事があるって話したよね。」


リコは以前も胡桃に話したらしい自分が釣りの帰りに目撃した光景を回想する。







☆☆☆







一年前の夏、リコは釣竿とクーラーボックスを両手に持って山を下山していた。


「へへー、今夜のご飯は魚料理かな?」


魚は思ったより多く釣れたらしく、リコは満足気な表情だった。

下山してる最中、リコはふと右の方を振り向くと、木々の奥に2人の少女がいる事に気づいた。

リコは好奇心をむき出しで木の陰に隠れて様子を伺う。

2人の内1人は茶髪のツインテールで黄色いTシャツに緑のミニスカート姿の中学生位の大きさの少女で、もう1人は黒いセミロングの髪で青いTシャツに黒いショートパンツ姿の小学生位の少女だった。

2人の少女は互いの両手を取り、楽しそうに左右を移動しながら踊っていた。

そして中学生の少女は左手を小学生の少女から放し、右手を軽く上に持ち上げる。

右手を上へ持ってかれた少女はそのまま優雅にゆっくりとターンをした。


「2人だけで踊ると楽しいね!」


ターンを終えた小学生の少女は踊りを中断してにこやかに中学生の少女に話しかける。


「滅多に会えない従姉妹と特別な事をしたいと思ったけど、楽しんでくれて嬉しいよ。」


中学生の少女は微笑みを返して小学生の少女が踊りに付き合ってくれた事を喜んだ。

会話の流れから、リコは2人の少女が従姉妹という関係だと読み取る。


「演劇部のダンスの練習がしたかったってのも理由の一つだけど、やっぱり自然の風に肌が触れると気持ちいいなぁ……ねぇ、私の脚を触ってみて。」


中学生の少女は風が肌にあたる心地よさを感じた後、小学生の少女に思い切った頼み事をした。


「? うん、いいよ。」


小学生の少女は頼み事の意図が分からなかったが、取りあえず言われた通りに両手ですらりと伸びた中学生の少女の脚に触れた。


「どう?」

「ツルツルしてて気持ちいい。」


中学生の少女は赤面しながら自分の脚の触り心地を尋ね、小学生の少女は率直な感想を口にした。


「うふふ、今度は私の番ね……子供だろうと大人だろうと関係ない、女の子の肌はピチピチで触ると気持ちいいのよ~」


中学生の少女は次に自分が小学生の少女の脚に触り、興奮を押さえ込んでる様な様子で小学生の少女に言葉をかけた。


「へぇ……」


小学生の少女は脚をすりすりと触られて不思議なドキドキを感じてる様子だった。


「はぁ……女の子の脚に興奮するなんて、やっぱり私って男より女が好きなのかなぁ……」


中学生の少女は従姉妹にセクハラまがいの事をしてしまう自分はレズビアンの思考があるのかなと思いながら軽くため息をした。

その一部始終を見ていたリコは目を輝かせながらゆっくりとその場を立ち去って行った。







☆☆☆








「あの覗き見の事? 随分と刺激的な光景を見たみたいだけど……はーん、それで私達もあの娘達みたいに踊ろうって訳?」


胡桃はリコが自分と何がしたいのかが分かって、頭を抱えてやれやれと呆れた。


「うん! それで踊るんだったら可愛い衣装で踊った方がいいかなって思ってこれを持ってきたの!」


リコは演劇部から借りた衣装をひらひらと見せつけながら得意気に語る。


「そんな事よりも今は重要な事があるじゃない……まぁ、ちょっとロマンチックだと思ったけど……」


胡桃は明日のオデイシアス打倒に協力するのならそれなりの危機感は持てとリコに注意するものの、内心ではリコと踊る事に魅力を感じてしまった。


「へへー、やっぱり胡桃ちゃんも内心女の子同士のダンスに心がトキめいちゃってるじゃん!」

「グズグズしてると6時間目が始まっちゃうわよ!」


リコは胡桃を茶化し、胡桃は恥ずかしそうに赤面しながら長話をしてると授業のチャイムが鳴るとリコに注意して水飲み場を跡にした。










美森達は昼食を食べた後、グリーンパールの西区でリチュオルの聞き込みをして、更に人があまり訪れない場所を割り出し、今はもう使われなくなって廃墟となっている小学校まで来ていた。


「ここなら人はあまり来ないかも……」


美森は古びた学校の様子を見て隠れて何かをするには都合が良い場所だと思った。


「それよりも、何年も前に廃校になったのにどうして取り壊されないのが不思議だわ。」


直花は素朴な疑問として使われなくなった学校が何時までも現存されている事に触れる。


「一々古びて劣化した部分を改装するよりも新しく建設された学校に生徒を移した方が良いって判断されたらしくて廃校したからこいつは旧校舎として残ってるって所だな、この街じゃ旧校舎もシンボルとして扱われるから取り壊しになる事時代少ないのさ。」


英夜はグリーンパールの特徴を語って直花の疑問を解決した。


「勿体ないから残しておこうって事ね……学校の怪談とか日本には日本のロマンがあるしそれもいいのかも……」


直花は旧校舎も残しておけば子供達の間で怪談話が生まれたりと夢があったりするので現存するのも間違った行為ではないと思った。


「そういえば、雪木さんの近所にある児童会館も小さな支社を改装した物らしいし、この街は子供の事を考えていていいなって思いました。」


一連のやり取りを聞いた美森は地元の東京では児童会館を改装して子供が遊ぶには不健全なイメージがあるゲームセンターになった場所があった事を思い出し、この街は大人が働く場所を犠牲にしてまで子供達の憩いの場所を造るため素晴らしいと改めて感じた。


「大人も昔は子供だったという事実を忘れるなって事だな、話はこれ位にして早速入るぜ。」


英夜は話をしてても尽きないと判断して旧校舎への潜入を2人に呼び掛ける。



旧校舎の中に入った美森達は、直花の探知能力を使ってリチュオルの居場所を調べる。


「学校も色んな部屋があるからなぁ、天使の探知能力に頼らねぇとやってらんねーよ、それで1階には悪魔の気配はあるか?」


英夜は複数もある教室や理科室、保健室といった場所を虱潰しに探すのは気が折れると思って天使の直花が同行してくれる事を有り難く感じ、彼女にリチュオルの居場所を尋ねる。


「1階からは感じないわ、イーグルドローンが他の階を探索してるからそれに任せようとは思うけど……」


直花は1階のフィールドには悪魔の気配が微塵も感じず、他の階に隠れているのではと推測する。


「また女性をさらいに行って留守にしてるとも考えられるね。」


美森はリチュオルがまた新しいコレクションを探しに出かけている可能性を考え始める。


「だとしたら待ち伏せするのも策の一つだけど、敵が何時帰って来るのか見当もつかないのはねぇ……」


直花はリチュオルが帰るのを待つにも、何時帰るのかが分からないと緊張感で精神力を消費しそうだと思って参ってしまう。


「ま、今はこの旧校舎の中にいる可能性に懸けようぜ。」


英夜は仮にリチュオルが留守中だとしても、旧校舎を探索している内に帰って来るだろうと判断して一先ず旧校舎を調べようと提案した。


「そうね……なっ!?」


英夜の提案を飲んだ直花だったが、その直後に何かを感じ取り驚いた。


「どうしたんですか!?」

「イーグルドローンが何者かに捕らえられたわ! 場所は3階の図書室!」


様子を伺う美森に、直花はイーグルドローンが3階で捕まった事を知らせた。


「早速ビンゴか!!」


英夜は急いで階段の方まで走り出し、2人もその後を追う。

3人は全速力で階段を上り3階まで行くと、すぐ近くに図書室の札がある扉を目にし、速攻で扉を開けて中に入った。

図書室に入って3人が見た光景は、イーグルドローンの右の翼を右手の人差指と中指で挟んで身動きを止めているアイシクルの姿だった。


「アイシクル……」


美森は予想外の人物との遭遇に唖然とし、後の2人も同じ表情をしていた。


「残念だったわね……貴方達が探している悪魔は……もう場所を移動しちゃったみたい……」


アイシクルはポツポツとした口調でリチュオルはもうこの旧校舎にはいないと美森達に告げた。

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