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57話 霊園の歌姫18/フォグの過去

廃墟となっている建物で、リメインとリチュオルはアプリのゲームで対戦して遊んでいた。


「所でよぉ、フォグの旦那は無事に薬の商談を進めているかなぁ?」


リチュオルはスマホの画面に集中しながらも、現在のフォグの状況が気になっていた。


「まぁ……大丈夫……です……フォグだから……」


リメインはフォグの事ならそれ程心配する必要も無いとリチュオルに告げた。

そしてリメインはふと以前フォグから聞いた彼の過去談を思い出した。






☆☆☆






フォグとリメインはステーキ屋で食事をしており、その最中でフォグが自分の過去を語り出す。


「俺は貧困の地の飯場で生まれた、母親は俺が物心がついた頃には既に死んでいた、親父は俺をまともに育てようとはせず、教えるとしたら基本働き方についてだった、子供の身にも関わらず働かさせて給料は全て親父に取り上げられ、親父の酒代となった……『仕事から帰ったらベッドでじっとしていろ、俺に一切話しかけるな』と親父は俺に言いつけ、俺は寮での行動も制限された、子供の思考では父親は絶対的な神という認識しか出来ない、そして親父から一度も『出ていけ』と言われた事は無いから親父は俺を家族として認めてくれているのではと感じていた……だが、12歳の時、俺は高熱で倒れた……その時看病したのは隣の寮の爺さんで、親父は何事も無かったかの様に飲んだくれてた……次第に俺の心では『出ていけ』と言われないのは俺が金ヅルだからだと感じる様になった……俺は親父の鎖で縛られていた……同じ人間なのにこの立場の違いはなんだって葛藤を重ねた挙句、親父を作業場でかすねたハンマーで撲殺して飯場から立ち去る事にした。」


フォグは過去を話している最中、虚ろな目をしており、ステーキを切るナイフの手も止まっていた。


「何故、リメインにそんな話を?」


リメインは普段寡黙で強がりなフォグが自分にだけ過去を打ち明けたのかが分からず首を傾げた。


「さぁ、同じ父親にいい思い出無い者同士だから親近感が沸いたのかもな。」


フォグは肉を切る作業を再開しながら滅多に話さない自分の過去をリメインに打ち明けた理由を説明した。

そして切り終った肉を静かに口に運んで味わった。


「確かに……リメイン達は似た境遇……かもしれないです。」


リメインはフォグの話を聞いて、父親からぞんざいに扱われた者同士シンパシーを感じる事はあるなと思いながらオレンジジュースを飲んだ。


「飯場を出て街に出て見れば、辺りは幸せそうに手を繋ぐ家族だらけ、親父と一度も手を繋いで歩いた事の無い俺には衝撃的な光景だった……だから衝動的に1組の親子を殺してしまった。」


フォグは自分が受けた事の無い親からの愛情を受ける街の子供達に激しい嫉妬を抱き、そして公園で1組の親子を殺害してしまった。

通り魔殺人に手を染めた動機を語った後、フォグはワインを一口飲み込んだ。

それを聞いたリメインはフォグが殺人を犯した動機に深く共感して息を飲んだ。





☆☆☆






フォグとのステーキ屋でのやり取りを思い出していたリメインは気が付くとゲームで負けていた。


「俺は生まれながらの悪魔だから元々人間だったお前やフォグの気持ちって分かんねーけどよ、悪魔でいる以上は人間だった時の思い出なんか忘れようぜ。」


ゲームに勝って微笑みを浮かべるリチュオルは得意気にリメインに悪魔として生きるコツを教えた。


「……わかってます。」


リメインは瞳を閉じて自分の考えを張り巡らせながら静かに返答した。

リチュオルの言う通り、人間時代の思い出を捨て去る事が半魔としてはベストなのだろうと思いながらも、それは同時にウィンドミル家である美森に対する執着を捨てるという事なのでどうしたらいいのだろうと内心葛藤していた。







「私は……この薬を買います!」


喫茶店の中で、フォグから薬の商談をされたジルは薬を買おうと決断した。


「お前正気か!?」


英夜はジルの決断に納得がいかず苦言を溢す。


「目の前の救いの声が悪魔の囁きでも……私はそれに賭けたい……」


ジルは自分は何を言っているのだろうと思い身体を震わせながら、目の前の誘惑に負けてしまい後悔していた。


「確かに彼女の決断は100%間違ってるとは言いがたいわ。」


直花は自分がジルの立場でも同じ決断をしていたかもしれないと思って、彼女をフォローしてしまう。


「お前までそんな事言うのか!? こいつが腹の中で何考えてんのか分かりゃしねぇのに!!」


英夜は敵であるフォグの力を借りてジルの父親の命を救うという行為が頑として許せず直花に抗議する。


「だったら一先ず場所を変えよう、どっちが正しいかは勝負で決めるのはどうだ?」


フォグはそんな英夜を見てバトルをしようと提案する。


「くっ……上等だ、乗ってやる!」


英夜は物事を深く考えるのが苦手ですぐに熱くなりやすい性格故、フォグの意見に乗ってしまった。







美森達はフォグに人気の無の空き地へと連れて来られた。


「危険ですので、ジルさんは下がっててください。」


美森はジルを気遣い、なるべく遠くに離れている様、指示した。


「……はい。」


ジルは薬を買う選択をしてしまった自分に苦悩を抱えた暗い表情で返事をして後退りをした。


「さて、どう戦う? 1対1でやるかそれとも3人がかりで来るか……」


フォグは1人ずつ挑んで来るか3人同時にかかって来るかを美森達に選ばせる。


「2人共、こいつは僕とは特に因縁が無さそうだから気を遣う必要は無いよ、3人で戦おう!」


美森はオデイシアスとは違ってフォグとは特に個人的な因縁を感じないため、3人がかりでの戦いを英夜と直花に提案する。

英夜と直花は美森の意見は一理あるし、武人を気取って1人で戦う必要も無いと思って無言で頷いた。


「それなら話が早い。」


フォグは戦闘形式が決まった所で何処からともなくボウガンを取り出して、天に向かってトリガーを引いた。

放たれた白い光の矢は、天に上った後すぐに地上へと落下し、フォグへ直撃した。

フォグの身体は白い光に包まれ、やがて3本の後ろに後退した角のある蛇の顔を模した白いプレートアーマーを見に纏った姿となった。

その瞳は紫色で妖しく光っていた。


「鎧だと!? お前も疑似オーラナイトなのか!?」


英夜はフォグが光龍と同じ疑似オーラナイトだと知って驚愕した。


「驚いてる暇があるならお前らも変身しろ!」


フォグ装甲態は驚く英夜を挑発する様に変身を要求した。


「ああそうですかい! 行くぞ!」

「うん!」


英夜はフォグ装甲態に驚きながらも我に返って懐中時計を取り出し美森に一緒に変身しようと呼びかけ、彼もそれに応答して懐中時計を取り出した。

そして2人は装甲態に変身し、直花と共にフォグ装甲態へと立ち向かう。

フォグ装甲態はまず英夜装甲態に目がけてボウガンのトリガーを引いた。


「こんな矢、すぐに弾いてやるぜ!!」


英夜装甲態は迫り来る矢に薙刀を振り下ろす。

しかしその時、矢は軌道を変えて英夜装甲態の背後に周り、そして命中した。


「ぐあっ!?」


突然の出来事に英夜装甲態は驚きながら苦痛の声を上げた。


「その矢は俺のオーラなんだ、操って軌道を変える位どうって事無い。」


フォグ装甲態は矢の軌道を変えるという芸当は朝飯前だと英夜装甲態に断言した。

その直後に自分の目の前まで来た美森装甲態の剣がフォグ装甲態を襲うが、彼はそれを左手の人差指と中指で挟んで受け止めた。


「何!?」


美森装甲態は自分の剣が思わぬ方法で受け止められて驚いた。

剣を必死でフォグ装甲態に振り下ろそうとするも、彼の指の力は凄まじくピクリとも動かなかった。

そしてフォグ装甲態は回し蹴りで美森装甲態を弾き飛ばした。


「ぐあっ!!」


美森装甲態はフォグ装甲態の実力は自分の想像以上なのかと頭で考えながら呻き声と共に地面に倒れる。

一方のフォグ装甲態は自分に最後にかかって来た直花のイーグルドローンを鈍器にした攻撃に対峙していた。

フォグ装甲態は華麗な身のこなしで瞬時に直花の背後に周り、彼女の背骨を左手でパンチした。


「ぐぷっ!!」


直花は今自分の背骨が折れた事を頭で感じながら地面へ倒れた。


「どうした? お前らは漫画に出て来るモブのチンピラの様に呆気無いのか?」


フォグ装甲態は一瞬で地べたに倒れた3人を見てこれで終わりなのかと問いかけた。


「今のは……効いたわ……天使の身だからすぐに背骨は再生出来るけど……何発もダメージを受けたらヤバいかも……」


直花は背中の苦痛を堪えながら必死で立ち上がる。


「僕らも今の一撃でノックダウンする様じゃオーラナイトとして恥だ!」

「同じくな!」


美森装甲態、続く英夜装甲態も立ち上がり、まだ戦意が消失してない事をフォグ装甲態に態度で示した。


「お前らの実力、試させてもらうぞ!」


フォグ装甲態は美森装甲態達の実力に期待して戦闘を続行した。

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