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54話 霊園の歌姫15/ブライアンの恋情

雪木の庭の花壇で、直花は綺麗に咲く花々を見つめていた。

その最中でふと直花は以前ブライアンから聞いた過去を思い描いていた。







☆☆☆







小学生程の年齢だったブライアンは孤児院の教室で3人の少年にいじめられていた。

ブライアンはいじめっ子の1人に背後から拘束され、後の2人は金槌で猫を殴っていた。


「酷い……酷いよ……」


その光景を眺めて泣いていたのは茶髪のボブカットの髪の、黒いTシャツに黄色のサスペンダースカート、白いニーソックスの少女だった。


「ヴァイオレット……」


ブライアンはヴァイオレットと呼んだその少女を見つめる。

すると彼は信じられない光景を目にした。

ヴァイオレットは泣いている最中でニヤリと怪しげな笑みを浮かべたのだ。

それを見た瞬間、ブライアンは何かが外れた様に自分を拘束していた少年を後頭部から頭突きをした。


「いてっ!!」


突然の反撃で拘束を解いてしまった少年だったが、ブライアンはその少年を持ち上げ、猫を殴っている少年の方へ放り投げた。


「ぐわっ!?」


人間砲台を喰らった少年は投げられた少年と共にその場に倒れる。

そしてブライアンは残った最後の1人に全速力で走り出し、瞬時にその少年の右腕の骨をへし折った。


「うぎゃああああああ!!」


激痛に叫ぶ少年にブライアンは追い打ちをかける様に蹴り飛ばす。


「こ……こいつー!!」

「ぶっ殺す!!」


先程の少年2人は起き上がってブライアンに背後から襲い掛かろうとする。

しかしすぐにブライアンは後ろを振り返り、2人の顔面に強烈なパンチをお見舞いした。

3人のいじめっ子が再起不能になったのを確認したブライアンはすぐに恐ろしい形相でヴァイオレットの方を睨み付けた。


「い……いやっ……」


ヴァイオレットは恐怖のあまり逃げ出すが、ブライアンの脚力の方が上ですぐに追いつかれた。

そしてブライアンはヴァイオレットを押し倒し、怒りの形相で彼女の首を絞めつけた。

ヴァイオレットは苦しみで声も出なかったが、突然ブライアンは躊躇した表情で首絞めを中断し、彼女の身体を起き上がらせて抱きしめた。


「ゲホッ……ゲホッ……」


首絞めから解放されたヴァイオレットは咳き込む。

その直後、ブライアンは彼女の唇にキスをした。

突然のブライアンの行動にヴァイオレットは困惑する。


「貴女を愛しています……永遠に……」


キスを終えたブライアンは慈愛に満ちた優しい笑顔と瞳でヴァイオレットに愛の告白をする。

彼の瞳にはうっすらと涙が零れていた。

その直後、またブライアンは怒りの表情に戻って彼女に平手打ちをした。

ヴァイオレットはブライアンの行動の意図が理解できず、打たれた頬を右手で押さえながら凍り付いた表情で硬直していた。

一方のブライアンはいじめっ子達に殴られていた猫に駆け寄る。

猫はもうすでに動いておらず、死体となっていた。


「御免よ……守ってあげられなくて……」


ブライアンは猫の死体を抱えながら涙を流した。






☆☆☆







(施設でいじめられている最中、ヴァイオレットだけがブライアンに優しく接してくれた……そしてブライアンは密かに施設の裏庭で猫を飼っていて、でも施設に入れたらいじめっ子達に何をされるか分からないから世話をするのが大変だった……ある日ヴァイオレットになら猫の事を打ち明けてもいいかと考えたブライアンは彼女に猫を紹介した、ヴァイオレットは『誰にも言わないよ、2人だけの秘密ね。』と笑顔でブライアンに言ったけど、その翌日彼女はいじめっ子達に告げ口をした……いじめっ子達が猫を殴り殺してる最中、彼女は口では『まさかこんな事になるとは思わなかったの。』と動揺して謝っていたけど泣いてるふりをして腹黒い笑みを浮かべた事から自分が孤児という不幸な立場だから自分より不幸な人間を得て安心感に浸りたい人間だったと思われる……ブライアンも馬鹿ね、あんな性根の腐った女、とっとと忘れればいいのに未だに愛しているなんて……憎らしいけどそれと同じ位愛しいって、哀しすぎる……)


直花はヴァイオレットの人間性を心の中で推察しながら、彼女の本性を直で知りながらも愛しているブライアンが変わり者だと思っていた。


「ねぇ。」


そんな時、雪木がやって来て直花に話しかける。

直花はふと我に返り、今はブライアンの事を思い出すより、現在山積みな問題を解決しなくてはと思いながら雪木の方へ振り向いた。


「水前寺、鎖の悪魔にやられた時はパニくってたみたいだけど、大丈夫だと思う?」


雪木は今朝美森と行動を共にしていた直花に彼のふと精神状態を尋ねる。


「まぁ、彼も仲間達から色々説得されて冷静になろうって自覚してるし、一応心配ないと思うわ。」

「そうよね、あいつは考えも無しに動く単細胞じゃないと思うし、明後日の決戦も案外冷静に対処したりして……」


直花の言い分を聞いた雪木は、美森の性格を考慮して自分が心配する程彼は取り乱したりはしないと判断した。


「私は自分の事を人に話すのは好きじゃない、貴女は自分の事を話すのって……好き?」


直花はブライアンから孤児院時代の過去を聞かされた経験から、雪木は過去を話す事に抵抗はあるのかとふと思って尋ねて来る。


「私? 別に他人に過去を話す事に抵抗は無いわよ。」


雪木は直花は急に何を言い出すのやらと思いながらも、自分は秘密主義でないと彼女に告げる。


「ふーん、例えば何か心残りな事とか無い?」

「こういうのって急に言われても中々思いつかないんだけど……まぁ、今でも印象に残っている過去と言えば、6歳の頃母さんから貰ったブレスレットが壊れて泣いていた所を、たまたま通りかかった小学生の女の人に助けてもらった事ね。」


直花から印象に残っている過去の出来事を質問された雪木は、咄嗟に母親から貰ったブレスレットに関する話題をする。


「助けてもらった? 具体的にどんな風に?」

「その人が代わりに自分のブレスレットを私に譲ってくれたのよ、今はもう社会人になってる筈だけど、何処の誰かも分からないし、占いで探せるかもしれないけど向こうは多分その時の事は忘れてると思うから無理に会うのも良くないなーって思ってるのよ。」


雪木はブレスレットを譲ってくれた人物に感謝の気持ちを抱いているものの、当時6歳の記憶力ではその人物の顔を明確に覚えられず、名前を聞かされた記憶も無いためやるせない気持ちだと直花に打ち明けた。


「成程……名前は分からないかもしれないけどその人の顔位は思い出すのも悪く無いかも、良かったら私が記憶を復元してあげるわ。」


直花はブライアンも形はどうあれヴァイオレットをかけがえのない存在だと思っている事から、雪木にもブレスレットを譲ってくれた人物の顔を思い出させてあげようと考えた。


「そんな事出来るの?」

「可能よ。」


雪木から記憶の復元も得意なのかと尋ねられた直花は即答で出来ると返答した。


「ふーん……それじゃあ、やって貰おうかな……」


雪木は直花の事を気に入ってる訳ではなかったが、彼女が自分の恩人の顔を思い出させてくれるというのならそれに乗ってみようかと考えた。


「分かったわ、まずそのブレスレットは今もある?」

「ええ、2階の部屋で大事にとってあるわ、案内してあげる。」


直花は早速雪木にその時のブレスレットの在りかを尋ね、雪木はその場所まで直花を案内するため歩き出した。






雪木に続き、大学での授業を終えたジルは美森と英夜に出迎えられた。

そして3人は雪木の家へ歩きながら会話をする。


「私の抱えてる悩み……ですか?」


ジルは美森から何か1人で抱え込んでいる事は無いかと尋ねら、少し戸惑った表情になる。


「はい、理不尽にオーラ使いにされて頭の中ではまだ戸惑いがあるんじゃないかと思いまして、それで何か力になれる事があれば相談に乗ろうと思いました、ご迷惑でした?」


美森は悩みを尋ねる理由を語りながらも、ひょっとしたら余計なお節介になっているのではと思ってドキドキしていた。


「いえ、そうでもありません……貴方達になら話してもいいかも……私の父は病気で入院していて、手術費はあるのですが血液のドナーが見つからなくて、行き詰っているんです。」


ジルは美森達の親切を素直に受け止め、自分が今一番に抱えている悩みを打ち明けた。


「大体分かった、あんたの親父さんは珍しい血液型で、あんたは親父さんと血液型が一致してないから悔しいし焦っているんだな?」


英夜はジルが置かれている状況を読み取り、自分が推測した通りなのかと尋ねる。


「はい……ドナーは見つかるって信じたいのですが、私は不安になりやすい性格で、なんか壊れちゃいそうなんです、正直、『誰か助けて』って叫びたい。」


ジルは沈んだ表情で自分の心の弱さを心から吐き出した。


「僕はごく普通のAB型だからドナーにはなれないけど……元老院に連絡すればその職員の中からドナーを見つけられるかも、100%の可能性はないけれど、僕等も協力します!」

「あ……ありごとうございます!」


美森は先程の発言通りジルの力になると宣言し、それを聞いた彼女は救いのヒーローが現れたと感じて嬉しくて感情的な例をした。

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