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50話 霊園の歌姫11

「お前は人を殺す時、どんな事を考える!?」


ついにオデイシアスと対面して熱くなりかけている美森は彼に殺人をする時の心境を尋ねる。


「別に何も、人間は肉体面では悪魔は勿論、天使にもまるで及ばない下等生物だからなぁ、下等生物の1人や2人殺したって罰はあたらんだろっつー感じよ。」


オデイシアスは美森を煽る様に高井を殺した罪を開き直っていた。


「クズがっ!!」


美森は怒りのまま懐中時計を取り出して装甲態に変身し、オデイシアスに立ち向かった。

美森装甲態はオデイシアスに剣を振り下ろそうとするが、その時オデイシアスの背中から鎖がニョロっと出て来て剣を縛りつけた。


「なっ……!? それがお前の能力か!!」


美森装甲態は慌てて剣を振り回し、鎖を断ち切ろうとする。

しかしオデイシアスの背中から更に3本の鎖が湧き出て美森装甲態の身体を拘束した。


「水前寺!!」


それを見た英夜も慌てて懐中時計を取り出し変身しようとする。


「来るな!!」


すると美森装甲態はいつもより荒っぽい口調で英夜の助太刀を拒否した。

英夜は美森装甲態の豹変した言葉使いを聞いて彼の内に秘めた復讐心の強さを感じ取り硬直してしまった。


「へぇ、俺とサシでやりてーのか、でもその意地が何処まで持つかな?」


オデイシアスは自分を倒そうとする執念を強く持つ美森装甲態を嘲笑う様に鎖の締めつける力を強くする。


「この状況を打開する策は……ある!!」


美森装甲態は瞳を発光させ、目から冷気のビームを繰り出した。


「うぐぅっ!!」


顔面に冷気のビームを受けたオデイシアスは慌てて美森装甲態を拘束していた鎖を解き、バックステップで彼から遠ざかる。


「へぇ、冷気を操るのがお前の能力かぁ……リメインの奴はなんで直接戦った事があるのに教えてくれなかったのやら……」


オデイシアスは顔を右手で押さえてオーラで暖めながら美森装甲態の能力を把握した。


「こっちもお前の能力はもう分かった、オーラで鎖を操るという事はリモコンタイプだな? その鎖を全て断ち切ってお前を斬る!!」


美森装甲態もオデイシアスの能力を把握して戦いやすくなったと感じ、彼に啖呵を切って再度立ち向かう。


「やってみろ!!」


オデイシアスは反論を述べた後4本の鎖を自在に操って美森装甲態の行く手を妨害した。

その一部始終を見ていた英夜は美森装甲態の私闘である以上自分は加勢できないこの状況を歯がゆく感じていた。


「くそぉ、俺達は本当に手を出しちゃいけねーのかよ……」

「そうよ、絶対に駄目。」


不満の愚痴を漏らす英夜に直花がきっぱりと注意した。

そして直花はアメリカに居た時の記憶を思い出す。






☆☆☆






森の奥でアリクイの姿をした3m程の大きさの悪魔と金髪の長い揉み上げに前髪が右に斜めっているショートカットの少女の様に中性的な美貌を持つ10代後半の少年が戦っていた。

少年の瞳は碧色で服装は青のジャケットに白いTシャツ、水色のジーンズに白いスニーカー姿だった。

アリクイの悪魔と少年の激しい戦いを遠くから直花が眺めており、彼女はじれったくなって少年に加勢しようとした。


「まて直花。」


その時、直花の隣にいた黒いジャケットに白いTシャツ、深緑のジーンズに茶色の革靴姿のスキンヘッドの黒人の男性が彼女を制止した。


「でも、あのままじゃブライアンが!」


直花はブライアンと呼んだ金髪の少年が呼吸を荒げながら険しい表情で戦ってるのを見て助太刀をしたくなったのだった。


「確かにお前が加勢すれば勝率も高まる、だがな、あの悪魔はブライアンの因縁の相手だ、あいつ1人で倒すべき敵なんだ。」


黒人の男性は直花に助太刀してはいけない理由を語り出す。


「ブライアンが……私の助けを望まない?」

「察しが良いな、ブライアンを助けるという事はブライアンの誇りを侮辱するという事なんだ、あいつが自分の心の闇に打ち勝つためにも決して俺達は助太刀をしてはならない。」


黒人の男性の人は時として1対1で戦わない時があるという言い分を聞いた直花は自分の行為が愚かだったと思い知った。





☆☆☆





「彼1人の力であの悪魔に復讐しないと彼の中にある心の闇は晴れない、彼が過去を乗り越え前に進むためにも私達の介入は許されない。」


アメリカでの出来事を回想した直花は美森装甲態は自分の手で愛する人である高井の復讐をしたいと心に誓っていたため自分達が戦いに加勢するのは逆に美森装甲態を怒らせてしまうと英夜に真剣な眼差しで伝えた。


「お前って歳の割には結構物を知ってそうだよな……」


直花の言い分を聞いた英夜は彼女の普段の言動は年の割にはしっかりとしていて改めて感服した。

一方の美森装甲態はオデイシアスが鞭の様に俊敏に繰り出す鎖を次々と剣ではじき返しながら必死で彼に近づこうとした。


「このままじゃキリが無いと思わないか? 仲間の手を借りる事を許可してもいいぜ?」

「戯言をほざくな!! お前は僕1人の力で倒さなきゃ意味が無い!!」


美森装甲態はオデイシアスの誘惑を拒否し、そしてジャンプして自分の身体を液状化させた。


「その能力は確か光龍から聞いたな!」


オデイシアスは光龍からの情報で美森装甲態が身体を液状化出来る事を思い出し、その事を忘れていた自分に呆れて失笑した。

美森装甲態は鎖の攻撃を鮮やかにかわしてオデイシアスに近づき、身体を元に戻して彼の腹部に剣を突き刺した。


「これでどうだ!?」


美森装甲態はオデイシアスに攻撃出来て達成感を抱く。


しかしオデイシアスは自分の腹部に剣突き刺さっていながら余裕そうな笑みを見せた。


「遊びはこれ位にしときますか。」


オデイシアスは美森装甲態を嘲笑うかの様な発言をした後、彼をオーラの籠った右足で蹴り飛ばした。


「ぐあっ!! そんな……!」


蹴り飛ばされた美森装甲態は地面に倒れ込み、オデイシアスを倒せなかった事に唖然としてしまう。


「急ぐ事はないぜ、お前と戦う機会はいくらでもあるんだからな!」


オデイシアスは剣を腹部から抜き取りながら美森装甲態に皮肉めいた言葉を投げる。


「逃げるつもりか!? この卑怯者!!」

「まぁそう熱くなるな、そんなに再戦したけりゃ明後日の夜7時にグリーンパール博物館に来い、そこで相手になってもいいぜ!」


美森装甲態は今の戦いを預けようとするオデイシアスに抗議するが、彼はそんな美森装甲態にお構い無しに次の対戦場所と日時を伝えた後、自分の身体を黒い煙に変えてその場から素早く去って行った。


「待て!!」


美森装甲態は後を追いかけようとしたが、空中を漂う煙に追いかけず足を止めて膝をついてしまう。


「わぁ――――――――――!!」


美森装甲態は折角出会えた高井の仇であるオデイシアスを倒せず彼に見下された対応をされ、ただ悔しくて叫ぶ事しか出来なかった。







商店街の本屋でロンリネスは面白そうな小説は無いか探していた。


「うーん……たまにはミステリー小説もいいと思うけど、どれが面白いのかなぁ……」


ロンリネスは買いたい本が決まらずに悩んでいたが、そんな彼女の前に金髪のウェーブのかかった長い髪の青い瞳の10代後半位の少女がやって来る。

少女の服装は緑のデニムジャケットに紫のTシャツ、青のミニスカートに茶色のショートブーツ姿だった。


「ロンリネスさん、こんな所で会うなんて奇遇ですね。」


少女は優しい笑みと透通った声でロンリネスに話しかける。


「あらアモーレ、あんたこそ本屋で買い物? 日本語は読める様になったの?」


ロンリネスはアモーレと呼んだ少女に微笑みを返しながら日本語の解読が可能で本屋にいるのかと尋ねる。


「まだ少し勉強中ですね……少しでも読める物は無いかと本を探している所です。」


アモーレは両手を合わせて腹部に当てながら自分がどれだけ日本語が読めるか確かめたくて本屋に来たのだとロンリネスに告げる。

この少女、アモーレ・ド・ヴェルデローザは元々300年前のイタリアに住んでいた15歳の少女で、その当時は国王の娘という恵まれた身分にあり、理由は定かではないがイタリアの神殿でコールドスリープで眠っていた所を旅行に来ていたロンリネスに目覚めさせられたのだ。

その後2人は意気投合したらしく、現在アモーレは日本に移住し、このグリーンパールで暮らしていた。


「へぇ、それじゃあ私が後でテストするわ。」


ロンリネスは日本語を必死で覚えようとしているアモーレが健気だなと感じて、後で彼女の日本語の勉強に付き合う事にした。


「お願いします、所でロンリネスさんのご家族の方にお会いしたいと最近思っているのですがよろしいですか?」

「それって美森の事? 別に悪くはないけど、ただ私が身内である事は内緒にしといて、彼の方からそうだと気付いて欲しいから。」


アモーレは美森に会ってみたいとロンリネスに頼み込み、彼女は突然の申し出で少し戸惑った表情をした後、自分達が従兄妹である事を伏せておくなら会わせてもいいと許可を出した。


「ありがとうございます、でも家族なのにそれを知らずにいるなんて……私には考えられない事情ですね。」

「王国のお姫様で何不自由無く育った貴女には想像できないかもしれないけれど、世界には複雑な家庭事情っていっぱいあるのよ。」


アモーレは何故美森とロンリネスが家族でありながら距離の遠い関係なのかと疑問を抱いたが、ロンリネスは世の家族全てが良好な関係ではないのだと彼女に教えた。

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