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5話 美森と雪木2

ネットカフェで揉み合った末にデートをする事になった美森と雪木。

そして喫茶店で会話をし合った矢先、雪木は自分の事を美森に話そうと決心したのだった。


「私が天使と悪魔のハーフだって言ったら笑う?」


雪木は真剣な眼差しで美森に自分が天使と悪魔のハーフだと告白した。


「え?」


美森は雪木から衝撃の事実をきかされ、愕然とした表情をとる。


「あんたも知ってるでしょ? 悪魔と同じ人間じゃないけどそれと比べると温厚な性格の奴が多くて人を襲わずオーラナイトからも危険視されていない存在である『天使』、私の父さんは天使でね、悪魔だった母さんと結婚して私が生まれたの。」


雪木は愕然としてる美森を置いてけぼりにするかの様に自分の家族の事を語り続ける。


「話が唐突で今唖然としてるんですけど……」


美森は雪木の唐突な告白に頭が追いつかず、右手を耳にあてて困った口調で話す。


「さっき唐突に私をデートに誘った奴が何を言うんだか……まぁいいや、話を続けるけど天使と悪魔、禁断の恋ね。母さんは悪魔だったけど非常になれず人間を襲うのに抵抗のある人だった……悪魔としては出来が悪かったのね、そんな母さんが天使である父さんと恋におちてそして私が生まれた。」


雪木はネットカフェでいきなり自分をデートに誘った人間が何を言うのかと呆れた表情になるが、引き続き家族について説明する。


「成程、するとお父さんは人間のフリして会社の社長をやっているのですか?」


雪木の家族について聞かされた美森は会社の社長である雪木の父は人間社会に紛れ込んで生活しているのかと彼女に尋ねる。


「そうなるわね、いくら温厚なイメージのある天使と言えどそのままでは周りから色眼鏡で見られるし、人間のフリして周りに溶け込まないとやっていけないのよ……もちろん私もね。」

「その気持ち、なんだか分かります……」


美森は自分を人間と偽って周りに溶け込んでいる雪木とその父親を見て、オーラナイトの家に生まれた自分に疎外感を感じて、オーラナイトにはならず普通の家系に生まれた人達と同様に生きていきたいと思った自分と境遇が似ていると感じた。


「そんな母さんは私がまだ6歳の頃に仲間の悪魔に殺されたの、仲間を裏切り天使と恋におちた報いを受けたって所ね。」


雪木はコーヒーを啜りながら自分の母親は同胞の悪魔に殺されたのだとも美森に伝えた。


「そうだったんですか、貴方も悪魔に大切な人を殺されたのですね。」


それを聞いた美森は先程『自分にシンパシーを感じる』と言った雪木の言葉の意味を理解できた。

彼女も特別な存在だからこそ普通に生きたい寂しがり屋、そして悪魔に大切な人を殺されてしまった境遇を持っているのだと美森は解った。


「私はね、天使と悪魔の間に生まれたから人間の血は入ってないの、それがコンプレックス。対人関係でも中々相手にそれを伝える事が出来ない、悪魔の血が入ってる私に誰も近づいてくれないんじゃないかと思うと怖い……あんたもそういう事ある?」


雪木は美森に自分には人間の血が入っておらず、それが人に言えないコンプレックスだと悲しげな表情で告げ、そして彼にも似たような所はあるのかと質問する。


「はい、僕もオーラナイトの家に生まれたけど、周りと同じ様に普通に生きたいと思って生きてきましたから。」


美森は先程自身が雪木に感じたシンパシーをそのまま彼女に伝えた。


「お互い似た者どうという訳ね……」


雪木はオーラナイトの家に生まれながら特別扱いされるのが嫌で普通に生きたかった美森と天使と悪魔のハーフとして生まれ人間の血が入ってないにも関わらず人間の中で生きてきた自分が似た者同士だと感じてそう呟く。


「つかぬ事を聞きますが雪木さんは悪魔に狙われた事はあるんですか?」


美森は天使と悪魔のハーフで母親を悪魔に殺された身である雪木を見て、彼女自身も同様に悪魔に狙われた事があるのではと思い尋ねてみる。


「あるよ、初めて襲われたのは10歳の時、写真を撮りたくて廃墟の屋敷に入ったんだけど、そこで悪魔達が麻薬の製造をしているのを目撃して、必死に逃げて……もうダメかと思った所でオーラナイトに助けられたわ。」


雪木は少し強張った表情で自分の過去を打ち明ける。


「そうだったんですか、すいません余計な事を聞いて……」


雪木の表情を見た美森は彼女にとって悪魔に襲われた事はトラウマだったんだなと詠みとり、いらぬ詮索をした自分を反省して彼女に謝罪の言葉をかける。


「いいのよ、元々話を持ち出したのは私だし。」


雪木は元々自分が天使と悪魔のハーフだと告白したのが話のきっかけなのだから気にするなと美森に返答する。


雪木の言葉を聞いた美森は罪悪感が和らぎホッとする。


「所で何故写真を撮ろうと思ったんですか?」


次に美森は雪木が屋敷に写真を撮りに行った目的を尋ねる。


「その当時は写真コンクールの小学生部門で賞を取りたかったんだ、でも結局悪魔に襲われて以降危ない橋を渡るのはやめて写真も花や植物にする事にしたわ、結局賞は取れなかったけど。」


雪木は子供の頃写真を撮るのに夢中で、普段誰も来ないような場所の写真を撮りたくて好奇心でつい廃墟に入ってしまった事とそれ以降反省して花や植物の写真を撮るようにしたが賞を取る事は出来なかった事を美森に伝える。


「それは残念でしたね。」


美森は写真コンクールで優勝できなかった雪木に同情する様にそう言った。


「悪魔に襲われた時は怖かったなぁ、あの頃は自分も母さんの様に悪魔に命を狙われているとは思いもしなかったかし、あの後父さんにこっぴどく叱られて、それ以来通学、下校、友達と遊ぶのにもオーラナイトを警固に雇ったわ、いつも遠くから監視されてる様で気分が悪かったけど仕方ないか。」


雪木は悪魔に襲われた時の恐怖を思い出しながらも、その後父に叱られた事とオーラナイトを監視につけられて少女時代を過ごしてきた事に不満を感じていたと美森に伝える。


「オーラナイトには苦労させられたんですね、でも僕を雇ったのは雪木さんの意志ですよね。」


美森は雪木が自分の過ちでこうなったとはいえ、オーラナイトに監視されながら日々を過ごして来てたため、オーラナイトにはあまりいい印象は抱いてないのだろうなと読み取るも、自分を使用人として雇ったのは彼女自身の意志だろうと思い、それとなく伺ってみる。


「うん……あんたが料理が得意で歳も近いし私と同じ裕福な家庭に生まれたわで親近感があったのよね~、後ウィンドミル家だっけ? イギリス系のクォーターってのも面白くていいと思ったわ、まぁ男としてタイプかどうかは別だけどね、あくまで仕事が出来そうだからあんたを選んだ。」


雪木は確かに美森は自身の意志で雇ったと彼に理由付きで説明する。


「あはは……でも雪木さんが僕を選んでくれたのは光栄に思います、こうしてお互いの事を知る事も出来たし。」


美森は雪木から自身がクォーターである事を指摘され、過去にも何度かクォーターという理由で周囲から注目された事を思い出し苦笑いするも、自分を雇ってくれた雪木に感謝の言葉を送る。


「どういたしまして、話は変わるけどこの後ゲームセンターに行かない? さっきから重い話ばっかでいまいちパッとしないし。」


雪木はお礼を返した後、美森に気難しい話で淀んだ空気を紛らわすためにゲームセンターに行って遊ぼうと提案する。


「それいいですね。」


美森も雪木と同じ気持ちだったらしく、彼女に意見に素直に賛同した。




森の深い所にある木の小屋。

その中の食卓で3人の人物が食事をしていた。

1人はグリーンパールの市街でオタク狩りをしていた黒髪の男[1話参照]、もう一人は光龍瞬平、そしてもう一人はオレンジ色のロングヘアに黒いフリルのついたスカート丈が脚の関節位までの長さのドレス姿に黒いブーツを履いた10代前半と見られる緑色の瞳のおどおどとした表情の少女だった。

3人の食事はスープにサンドイッチにソーセージという質素な物だった。


「どうした、食わないのか?」


黒髪の男は不満そうな表情で食事に手をつけていない光龍を見てどうしたのかと尋ねる。


「あのよ~、俺って強くなってる訳?」


光龍は黒髪の男を睨みつけながらオーラナイトの疑似鎧を手に入れた自分は本当に強くなったのかと問いかける。


「ああ、強くなるための鎧は渡しただろう?」


黒髪の男は疑似鎧を渡したのだから常人よりは強くなってる筈だと光龍に返答する。


「でもあいつらに歯がたたなかったんだよな。」


しかし光龍は先程山奥で美森達に負けてしまったのだと不満を溢す。


「それはお前の経験不足っつーもんだな、オーラナイトの連中はお前と違って戦いの修業をして来てるからな。」


黒髪の男は光龍の敗因はオーラナイトと違って光龍は戦いの鍛錬を積んでおらずただ引きこもって自堕落な日々を過ごしてきた事による運動不足が原因だと指摘する。


「オメーも俺の事見下してるのか!?」


黒髪の男の指摘に光龍は逆上したのか、大声を出して彼に怒鳴り散らす。


「そうやってすぐキレるのもお前の悪い癖だ。」


黒髪の男は呆れた表情で光龍に指さしながら苦言を溢す。


「うっせーよ、ハナクソ!!」


光龍は立ち上がり緑髪の男の襟を掴みながら彼に汚い言葉を浴びせる。


「2人共やめて。」


その時、オレンジ髪の少女が2人の口論に割り込んでくる。


「リメインの食卓で喧嘩しないで、これ以上もめるとただじゃおかないよ。」


自らをリメインと名乗ったその少女は脅しをかける様に2人に喧嘩をやめる様忠告する。

リメインの忠告を聞いた光龍は不貞腐れた態度でテーブルをドンッと蹴り飛ばして食卓を離れて何処かへ去って行く。


「フン……所でリメイン、例の最近この街にやって来たオーラナイトはどうしてる? お前気になってんだろ?」


黒髪の男は去って行く光龍を花で笑った後、リメインに最近グリーンパールへやって来たオーラナイト、つもり美森はどうしているのかと尋ねる。


「あの人の事? 昨日ここへ向かう列車の中で挨拶に傀儡人形を送りつけた。」


リメインは黒髪の男から言われた『最近この街にやって来たオーラナイト』という言葉を聞いて、脳裏に美森の姿と美森に襲い掛かった3人組の傀儡人形を連想[1話参照]した後、あのヘルメットの男達は自分が送り付けたのだと黒髪の男に返答する。


「それは聞いた、つーかあんな物嫌がらせ程度にしかならんだろ。」


黒髪の男は美森の乗った電車を襲撃した話は以前も聞いた事がある上にあの程度では嫌がらせにしかならないとリメインに伝える。


「それは分かってる、手始めに挑発したかっただけ、今回は本格的にあの人の力を試すためにディセントを送り込んだよ。」


リメインはあの時はただ単に挑発がしたかっただけと語り、そして今回は本番としてディセントと呼ばれる存在を美森に送り付けたのだと黒髪の男に伝えた。


「成程な、でもお前は何であのオーラナイトが気になるんだ?」


黒髪の男はリメインの言葉に納得した後、何故美森に肩入れするのかと彼女に尋ねる。


「ウィンミドル家だから……」


リメインは視線を黒髪の男から逸らしながら小さな声でそう答える。


「ウィンミドル……聞いた事あるな、イギリスの名門貴族の末裔、そしてオーラナイトの一族。」


リメインの小声を辛うじて聞き取った黒髪の男は美森の家系であるウィンドミル家の存在は自分も聞いた事があると返答する。


「リメインを捨てたウィンドミル家……絶対に許せない……」


リメインはオドオドとした口調ながらも意味深な事を呟き、ウィンドミル家に憎悪をむける。


「オデイシアスこそどうして光龍をスカウトしたの?」


その後リメインは話を切り替える様に今度はオデイシアスと呼んだ黒髪の男に何故光龍にオーラナイトの疑似鎧を渡し、自分達の仲間にいれたのかと尋ねる。


「あいつが人間としてはどうしようもないクズだからな、友人も作らずただ自意識が高いだけの引きこもり、だからこそ力を与えれば自分のダメさを他者への八つ当たりに変える、生まれる種族を間違えたんだよあいつは。」


オデイシアスは光龍が根暗で引きこもりでいて、それで無差別殺人という大罪を犯した事に悪魔としてのシンパシーを感じて彼は悪魔に生まれるべきだったと思って仲間に引き込んだのだと語る。


「生まれる種族を間違えたのは……リメインも同じ。」


オデイシアスの言葉を聞いたリメインはまた意味深な事を呟き、そしてやけ食いをするかの様に食事をガツガツと貪り始める。

それを見たオデイシアスは同情と哀れみの入った複雑な表情で静かに食事を口に運ぶ。




美森と雪木は喫茶店の近くにあるゲームセンターでUFOキャッチャーを楽しんでいた。

しかし5回目になっても目当てのぬいぐるみを手に入れる事が出来ず2人は歯がゆい表情になっていた。


「くっそ~、また失敗かよー!」


雪木はUFOキャッチャーが上手くいかず頭を抱えて悔しがる。


「まぁ、元々難しいですからね、このゲーム。」

「高井って人ともゲームセンターに行った事あるの?」


雪木はふと美森は以前高井ともゲームセンターに行った事があるのかと思い彼に尋ねてみる。


「はい、初めてのデートがそうでした。」


美森は少し照れた表情で初めて高井とデートした場所もゲームセンターだと雪木に告げる。


「高井さんはUFOキャッチャーの腕はどうだった?」


雪木は高井のUFOキャッチャーの腕が気になり、美森に続けて質問する。


「はい、結構上手かったです。」

「そりゃ凄い! 今はどんな気持ち? 高井さんの事を思い出して辛い? それとも私といて楽しい?」


雪木は高井がUFOキャッチャーが上手いと聞かされ、羨ましいと言わんばかりの引きつった表情をとる。

その直後美森の浮かない表情に気づいた雪木は彼に今高井との思い出が頭をよぎり辛い気持ちなのか、自分とデートをして楽しい気持ちの方が上なのかどちらだと問いかける。


「両方ってところですかね、高井さんの事を想うのはいつもの事です、だからと言って泣き寝入りする程僕は弱くありません。」


美森は雪木とデートをする度に高井との思い出が脳内をフラッシュバックし、高井の事で辛くなるのと雪木とデートをしていて楽しいと思う気持ちは半分半分だと答える。

しかしそれでも高井を失った悲しみに暮れて泣き寝入りをする程自分は弱くないと美森は強く雪木に伝えた。


「私をデートに誘ったのがその証拠か……私もさぁ、死んだ母さんの事は忘れられずにいるんだぁ、でもそれでショゲたくないからいつも周りには明るく振る舞って生きてきた。」


雪木は美森が自分をデートに誘ったのが過去に囚われず新しい恋を見つけようと努力している証拠だと読み取り、そして自分も母が悪魔に殺された時の記憶が今でも脳裏に焼き付いているが、それでもめげずに強気で生きてきてる事を彼に伝える。


「強いんですね。」


美森は母が殺されてもめげずに友人も作って前向きに生きている雪木を見て、人付き合いが苦手であまり友人も出来ずにいた自分より強い心を持っているのだなと感じて彼女を褒める。


「少なくともあんたよりはね。」


雪木はそれ程でもと言わんばかりに美森にそう返した。


「……以前、公園の列車に乗ってる時に高井さんにこう言われた事があるんです、『どうして私を好きになったの?』って。」


すると美森は以前高井とデートしていた時に、高井が何故自分を好きになったのかと質問して来た事を雪木に話す。


「それで、あんたは何て答えたの?」


雪木は美森が高井の質問にどう答えたのか気になり問いかける。


「お互い寂しがり屋な一面があるからって答えました、そしたら高井さんは何だか否定できないと引きつっちゃいましたけど。」


美森は高井に『お互い寂しがりやな一面がある』と答えたらしく、それを聞いた高井は否定が出来ないと引きつった表情で返答してきたのだと雪木に伝える。


「それってさっき私が言った事と同じじゃん。」


雪木は今の理屈が先程喫茶店で自分が美森に言った事と同じだと驚く。


「はい、偶然の一致ですね。」


美森も『本当だ』と思い軽く失笑する。


「似た者同士は引かれあうというか何というか……」


ゾクッ!

雪木は似た者同士は引かれあうのだろうかと呟くが、突然その時何かの気配に感じて凍りついた表情で固まってしまう。


「どうしたんですか?」


美森は雪木の様子の変化に気づき、彼女に声をかける。


「何か……嫌な気配が……」


突然辺りから人が消え、そして壁や床が血が滲んだような真っ赤な色に変色した。

この異様な空間に閉じ込められた2人は困惑した表情で周りをキョロキョロと見渡す。


「これは……上級悪魔が使う結界! 見るのは初めてだけど……」


美森はこの空間は上級悪魔が創りだす現実世界とよく似た平行世界の結界だと推察する。


「そんな呑気な事言ってる場合? 早くなんとかしてよ!」


雪木は動揺した表情で美森に結界の説明はいいからこの状況を何とかしてくれと頼む。

美森と雪木は血相を変えて外に飛び出す。

ゲームセンターを見ると、外には巨大な蠍の形をした悪魔が張り付いていた。


「うふふ、逃がさないわよ。」


蠍の悪魔は野太い男声で女性言葉を使い、美森と雪木にそう言い放つ。


「とにかくこっちへ!!」


美森は蠍の悪魔と戦うより今は雪木を安全な場所へ誘導する方が先と判断し、彼女の手を取り蠍の悪魔から逃げる。

しかし走り去ろうとした道がドゴーンという音と共に地割れを起こして遠ざかり、退路を阻まれてしまう。


「どうすんのこれ!?」


雪木は困惑して美森に何とかしてくれとせがむ。


「ならこっちです!」


すると美森はゲームセンターの向かいにあるビルに逃げ込もうと考え、雪木をそこに連れて行く。

ビルに逃げ込んだ

ビルに入った2人は一目散に階段に駆け込む。


「ちょっと、建物の中に入ったら逆に逃げ場がなくなるんじゃ!」


ビルの中へ連れてこられた雪木は建物の中よりも外にいた方が逃げ場があって良かったのではないかと美森に意見する。


「いえ、広い所よりも隠れる場所が多くて都合がいいです! さっきのあいつ図体でかいのでこの中までは入れない筈です。」


しかし美森は広い外にいるよりも建物の中の狭い空間にいた方が体の大きい蠍の悪魔が追って来られず隠れる場所もあり都合がいいと雪木に指摘する。

階段を登りに登った2人は5階の廊下へと出て走るのを続ける。

しかし道中で人間の子供位のサイズの蝿の悪魔が複数立ちふさがる。


「くっ仕方ない!」


美森は戦うしかないと思い、懐中時計を取り出し天にかざして蓋を開け、装甲態に変身する。

美森装甲態は剣を構え、蝿の悪魔達を手当たり次第に斬りかかって行く。

蝿の悪魔も負けじとブレスで応戦する。

美森装甲態は迫って来るブレスを剣で薙ぎ払い、そしてジャンプして次々とスタイリッシュに斬り裂いて反撃する。


「やるじゃん!」


スタイリッシュに悪魔達を倒していく美森装甲態を見た雪木はやれば出来るじゃないかと彼を褒める。


「やってる方は結構辛いんですよね。」


しかし美森装甲態はこれでも雪木に悪魔を近づけさせまいと細心の注意を持って戦ってるため注意力を滾らせて大変なのだと彼女に苦言を溢す。


「そりゃどうも。」


自分を守りながら必死に戦ている美森装甲態にありがたさと申し訳なささを感じて苦笑いで彼にお礼を言う。


その時、ドゴーンという音と共に窓側の壁が崩れ、外から蠍の悪魔の尾が飛び出して来る。

「危ない!」


美森装甲態は慌てて雪木に迫る尾に剣で攻撃する。

攻撃された尾は壁の外へ逃げ、そして蠍の悪魔が2人の前に顔を出す。


「貴方達はこのディセントが始末するわ、オーラナイトとそこの半天半魔のお嬢ちゃん。」


蠍の悪魔は自らをディセントと名乗り、美森装甲態と雪木をこの場で殺すと宣言する。


「雪木さんも狙っているのか!?」


美森装甲態はディセントが雪木の命も狙っていると発言したことに驚きを見せる。


「話は終わりよ!」


ディセントは無駄話は無しだと宣言し、巨大な鋏をビル内に突き出す。

美森装甲態は紙一重で雪木を抱いて雪木を抱えながら鋏の攻撃をかわし、そして鋏の攻撃でビルの廊下に貫通して出来た穴へ逃げ込む。

逃げ込んだ室内はパソコンやデスクがずらりと並ばれており、そこは会社のオフィスだと伺えた。

そしてそのオフィスにも蝿の下級悪魔がうじゃうじゃと飛んでいた。


「全く次から次へと!」


美森装甲態は次々と現れる悪魔に毒づきながらも剣で飛びかかって来る悪魔を斬り裂いてゆく。

そしてある程度蝿の下級悪魔を倒した後、美森装甲態は雪木の手を取りオフィス内を走り、出口を目指す。

するとドゴーンという大きな音と共にディセントがビルのオフィスへ侵入してきて2人を追いかける。


「あんなデカい図体でこんな狭い所に入るな!」


雪木はビル内に侵入したディセントに対し、巨大な体で建物の中に入らないでほしいと毒づいた。

狭い室内で迫って来るディセントに雪木は恐怖を抱くも、何とか美森装甲態の誘導で出口の通路へ逃げ切り一息つく。


「ここで待ってて。」


通路へ出た美森装甲態は雪木の手を離して彼女にそう言い、そして迫って来るディセントを剣を振りかざし攻撃する。

顔面に剣を喰らったディセントは怯む。

美森装甲態はズバズバとスタイリッシュに剣を振り回して追撃を入れる。


「狭い所に入ったのが運のつきだな!」


美森装甲態はディセントに皮肉の言葉を投げた後急いで雪木の方に戻り彼女をお姫様抱っこで抱え上げながらビルの窓を突き破って外に出る。

バリ―ンという窓が割れる音と共に美森装甲態が外に飛び出て、一瞬の内に地面に着地する。


「これで大丈夫なの?」


雪木は自分達が飛び降りたビルの抜け穴を見てディセントがオフィス内で引っかかって動けない状況をイメージしながら美森装甲態に尋ねる。


「あの程度で終わる奴とは考えられません、まだ油断は禁物です。」


美森装甲態は雪木を降ろしながら彼女にまだ警戒した方がいいと忠告する。

案の定、ディセントはビルの中からドカーンという音と共に身体を突き出して現れる。


「ここから離れて安全な場所へ!」


美森装甲態は雪木に安全な場所へ退避する様命じる。


「うん。」


雪木は美森装甲態に言葉に素直に頷き、その場から離れる。


「とっとと死になさい、このボケが!」


ディセントは先程の美森装甲態の攻撃で気が荒れたのか、怒った口調で彼に暴言を吐く。


「上等だ、返り討ちにしてやる!」


美森装甲態は剣を構えながらディセントにお前は返り討ちにすると宣言して立ち向かって行く。


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