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49話 霊園の歌姫10/オデイシアスとの対面

夕方の公園で1人のボサボサの黒髪で眼鏡をかけた、黒いパーカーに青いジーンズ姿の青年が公園の滑り台を蹴っていた。


「クソ! あの老害クズ親父め、映画を観に行った位で文句を言いやがって、大体何が『遊んでないで勉強しろ』だ、エリートのテメェには簡単な勉強も俺には鬼畜過ぎんだよ! 人生楽しんで何が悪いってんだ!!」


青年は独り言を吐き捨てながら苛立ち滑り台を蹴り続ける。

この青年の名は間谷 良和[はざまや よしかず]、都内の高校に通う高校3年生で趣味はアニメ、特撮観賞である。

勉強もしないで趣味に没頭するため学校では成績、スポーツは共に底辺で対人関係も壊滅的で女子に声をかけられた事は一度もなく、子犬や小鳥をいじめてストレスを発散する、片思いの女子生徒を無理矢理犯してやりたいと妄想しているが結局小心者のため実行出来ないというどうしようもない青春の送り手である。

今苛立っているのはテスト前なのにアニメ映画を観に行った事を父親に怒られ、それを逆恨みしているのであった。

そんな間谷の前にオデイシアスがやって来て話しかける。


「おい。」

「ああ!? ぐおっ!?」


話しかけられた間谷は振り返って早々顔面を殴られ、グルッと身体が回転して倒れ込んだ所を蹴り飛ばされた。


「ぐはっ!!」


間谷はその一撃で気絶してしまった。

その後オデイシアスは間谷の服を漁り、財布を取り出し、中身の金銭を抜き取った。


「ふぅ、やっぱりブサイクな顔の男ブチのめすと気分良いぜ!」


金を盗んだオデイシアスは満足気な表情でその場から速やかに立ち去る。


(さて、明日はどうするかなー……俺の方からオーラナイトに顔を出してやってもいいか……)


オデイシアスは立ち去ってる最中、自分が美森達から身を隠す必要性は特に感じないと考え、明日こちらも美森達を探してみようと思っていた。






その晩、雪木の食卓にはハンバーグにサラダ、スープが6人分並んだ。

家の使用人である美森も今日は特別に席に座り、6人での賑やかな食事が始まった。


「なんか申し訳ないです、食事まで頂けるなんて。」


ジルは看病されただけでなく、食事も出され泊めてもらう事になって雪木に申し訳なく思い半笑いを浮かべた。


「気を遣う事無いですよ、食事はみんなでした方が楽しいですし。」


雪木はフォークを手に持ちながら人に迷惑をかけてばかりだと落ち込むジルを元気づける。


「確かにそうですね、予定外の夕食ですが、いただきます。」


ジルは早速フォークを手に取り、ハンバーグの一部をフォークで切って口に運んだ。


「美味しい、貴方って料理がお上手なんですね。」


ジルはハンバーグの味が気に入った様でそれを作った美森を褒めた。


「いえ、子供の頃から使用人に任せるより自分で作ってみたいと思って、それで上達しただけです。」


美森は今日初めて出会った女性であるジルに料理の腕を褒められ、顔を赤くしながら料理を始めた経緯を語った。


「使用人? え?」


ジルは雪木の家の使用人である美森が何故『使用人に任せるより』という単語を使ったのかが分からず困惑する。


「水前寺もイイトコのボンボンなんですよ、独り立ちをするためとか他にも色々あって私の家で使用人をしてるけど。」


雪木は簡易的に美森の経歴ジルに説明した。


「成程、色々な人間がいるのですね。」


ジルは美森の経歴が変わってると思い、人の人生は十人十色だと感心した。


「所で貴方、明日元老院から来た依頼を遂行するつもりなら私も手伝ってあげてもいいわ。」


そんな時、直花はスープを一口飲んだ後オデイシアスとリチュオルの捜索を手伝いたいと美森に願い出た。


「え、雑賀さんがですか?」


美森は突然の直花の申し出に美森は驚きキョトンとした表情になる。


「銃使いの彼女は明日も学校だろうし男2人じゃ物足りないと思わない? 私も貴方達に関わった以上何もしない訳にはいかないし、何より天使として悪魔を野放し出来ないから。」


直花は明日は胡桃は学業で同行できず結果美森と英夜の2人だけで元老院の依頼を遂行しなくてはいけないと思って人員不足を解消するために手伝いをしたかったのだった。


「確かに、私も学業優先で行動してるから……なんというか、面目無い。」


胡桃は学校をズル休みしてまで美森達の仕事を手伝うのには抵抗を抱いていたため代わりに直花が動いてくれる事には感謝の気持ちがあった。


「俺はお前の同行を認めるぜ、お前には恩があるからな。」


英夜は先の凱巣島でリリカの成仏の手伝いをしてくれた直花には恩義を抱いていたため彼女の同行を認めた。


「僕も断る理由はありません、よろしくお願いします。」


美森も直花は戦闘もこなせる事を十分理解していたため英夜に続いて同行の了承をした。


「あの、ちょっとした好奇心で聞きたいのですが……悪魔と戦う仕事をしていて普段どんな心境なんですか?」


ジルは一連の美森達のやり取りを聞いていて、彼らがどんな想いを抱いて命懸けで悪魔戦っているのかが気になり問いかけて来た。


「僕らの心理ですか……人知れず戦っているから一般人から感謝はされないし寂しい所もあるけど……でも人の平穏な人生を悪魔の理不尽な暴力で終わらせたくないっていう気持ちがあって、ありふれた動機ですが人々の笑顔を守るために命を懸けて悪魔と戦いたいと思うんです。」


美森は自分達は日陰の存在で時々戦う理由で葛藤する事もあるが、高井の様にごく普通の人生を懸命に生きている人間を守りたいという心理をジルに語った。


「確かにありふれた動機ですね、でも素晴らしい。」


美森の心境を聞いたジルは彼が理想のヒーロー像を体現している様に感じた。

一方の直花はまだジルが自分の事をあまり語っていない事に気づいて彼女を見つめていたが、もし彼女にも何かしらの闇があったとしてもこの団欒でそれを掘り起こそうとするのは忍びないと思って彼女の話題には触れないでおこうと判断していた。

奇妙な出会いをした6人は取りあえず一時の食事を楽しんだ。






翌日の午前、美森、英夜、直花の3人は昨日一般人の親子がリチュオルにさらわれた公園のベンチに来ていた。

早朝に雪木の占いをして、この場所へ行けば探し人に会えると出たからだ。

占いを提案したのは英夜だった。


「まだ気にしてんのか、雪木の占いに頼った事?」


英夜は不服そうな表情をしている美森を見つめながら話しかける。

美森は雪木を守ると心に誓っていたため雪木の占いに頼るという行為には抵抗感を抱いていた。

しかし英夜も英夜なりに雪木の事を考えており、一応仲間という関係でありながら彼女に何もさせないのはどうかと美森に説得したのだ。

それを聞いた美森は自分もオデイシアスの顔を知るため思わず直花に頼ってしまったという情けなさが心に生まれ、英夜に強く抗議出来なくなってしまったのだった。


「いえ、僕ももう子供じゃないので過ぎた事で一々不貞腐れたりしません。」


美森は頭の中で試行錯誤して自分はただくだらない意地を張っていただけだと言い聞かせて理性を保っていた。


「これは貴方の問題だから私達は深く介入しないし黒いコートの男との決着も貴方に預けるわ、私だけじゃなくみんながそう思っている、でも貴方には仲間がいるから戦い以外は仲間に頼ってもいいと思う、人は結局1人じゃ生きて行けないから。」


直花は人が生きて行く上での哲学を美森に語って彼の理解力を高めようとする。


「人は1人じゃない……か……所で雑賀さん、ここから悪魔の残留思念等は感じますか?」


美森は直花の言い分も最もだと感じた後、彼女にここから悪魔に結びつく手掛かりはあるかと問いかける。


「ええ、微かだけど感じる、欲しい物が手に入ったっていう喜びの感情がベンチの付近から伝わって来るわ。」


直花は腰を下ろしてベンチの前の地面に手を撫でながら、リチュオルの残留思念を感じ取る。


「奴さんは女を集めてコレクションでもしたいのか? 幽霊コレクターの次は女コレクターか……」


英夜は以前戦った幽霊コレクターであるマーシュの事を思い出し、今回女性が数人さらわれたとなるとその目的はマーシュと同じ様な物ではないかと推測する。


「だとしたらとんだ変態趣味ね、取りあえずしばらくこの場所に留まってみ……」


直花は立ち上がって占いの通りしばらく公園にいて様子を見てみないかと2人に提案しようとした時、何かを感じて言葉を詰まらせ顔色を変えた。


「どうしたんですか?」


美森は直花の急な様子の変化を見て深刻な表情で問いかける。

直花は美森達の方を指で差す。

2人は後ろを振り向けという合図だと読み取って背後に首を向ける。

そこにはオデイシアスが両手をコートのポケットに突っ込みながら立っていた。


「なっ!?」


オデイシアスを見た美森は驚愕して身体を戦慄させた。

予想外のタイミングでオデイシアスとようやく対面出来て頭の理解が追いつかなかった。


「理由は知らんが俺の事を嗅ぎ回ってるのはお前らか? だとしたらコソコソ隠れてるのは臆病者みたいで屈辱的だなぁって思って取りあえず顔を出してみたぜ。」


オデイシアスは何処へ行けば美森達と会えるかを考え、そして昨日リチュオルが親子を連れ去った場所を調べるのではと推理してここへやって来たのだ。

彼は不敵な笑みを浮かべながらわざわざ美森達の前に姿を現した理由を語り出す。


「お前……一年前に睡蓮病院にいた事は無いか?」


美森は必死で冷静さを取り戻そうとしながら、オデイシアスに高井の勤め先の病院の名前を口にして彼にそこにいた記憶があるか問いただす。


「ああ、そんな事もあったな……高価な薬を盗んで高く売ろうと思って忍び込んで……その時姿を見られた看護師を口封じで殺したのもなんとなく思い出したが、もしかしてその看護師の仇討ちを考えているのか?」


オデイシアスは微かに残っている記憶を掘り返してその時の事を語り出し、そして美森が自分を狙っている理由を割り出した。

それを聞いた美森は覚えていたのなら都合がいい、後はオデイシアスを倒すだけだと頭で理解した。

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