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40話 英夜と幽霊少女 エピローグ

リリカの屋敷へと戻った美森達は花畑でリリカの遊びに付き合った。

屋敷に来る途中で英夜はリリカに今までした事が無い遊びを教えようと考え、バトミントンのラケットと羽根を買っていた。


「今から投げるから、しっかり打ち返してくれよ!」


右手にバトミントン、左手に羽根を持った英夜が自分の向かいに立っているリリカに話しかける。


「うん、何時でも来て!」


ラケットを両手に握り締めたリリカはわくわくした気持ちで返事をした。

そして英夜は軽く羽根をサーブした。


「えい!」


リリカは一生懸命ラケットを振るって羽根を打ち返した。

英夜もすぐに羽根を打ち返す。

そんな2人の光景を美森達は花園に座って眺めていた。


「こうして見ると、本当に幼馴染なのねぇ……」


穂波は平和そうに遊んでいる英夜とリリカを見て、今でこそ英夜だけが歳を取ってしまったためイメージが薄いが、それでも2人は心は変わらずに幼馴染のままなのだなと感じた。


「大好きな人の事を……死んでどれだけの時間が経っても忘れるわけないよ。」


高井の事を思い出してるのか、美森は切なそうな表情で穂波にそう告げる。


「……そう……そうよね……」


穂波は美森の言葉で夏鈴の事を思い出し、こうして死んだ幼馴染とまた遊べてる英夜が羨ましくなって泣きそうになる。

英夜とリリカはその後も昔の様に花冠を作り合ったり、美森達を混ぜてだるまさんが転んだをやったりもした。

そして気が付くとすっかり夕方になっていた。


「ふー! 今日は楽しかった!」


リリカは英夜と久しぶりに遊ぶことが出来て満足な様子だった。


「そろそろ時間だな……」


英夜はリリカとの別れの時が来たのかと思うと心が痛んでしまう。


「私が送ってあげるわ。」


直花はリリカの方へ近づき、膝をついて彼女に話しかける。


「うん……ねぇ、英夜。」


リリカは直花に返事をした後、何かを思って英夜を呼んだ。


「なんだ?」

「何時かまたピアノを演奏して、それを天国から聞いてるから。」


リリカは今回、流石にピアノの様な巨大な物を持ち運べず、英夜の演奏を聞けなかった事が残念に思ったため、今度自分を想ってピアノを弾いて欲しいと彼に頼み込んだ。


「……ああ。」


英夜は涙を堪える様に微笑みながらリリカの頼みに応じた。


「約束だよ。」

「ああ、約束だ。」


そしてリリカと英夜は互いに手を出し、小指で指切りをした。


「それじゃあ、準備はいい?」


直花は2人の会話が終わったのを確認して成仏を進めても大丈夫か伺う。


「いいよ。」


リリカは英夜と結んでいた指を離して直花に天国へ行く準備が出来た事を伝えた。

それを聞いた直花はリリカに青いオーラを送り始める。

リリカの身体はオーラに包まれ、やがて天に昇って行った。


「泣くもんか、俺は泣かない……俺は何時でも、お前を想って前に進むぜ。」


英夜は天へ消えて行ったリリカを眺めながら、空に手を伸ばして呟いた。







その晩の空港、美森達一行は直花と共にグリーンパールへ帰ろうとしていた。


「またしばらくはお別れね。」


穂波は英夜達がここにいる理由が無くなって少し残念そうな表情になっていた。


「今度はお前がこっちに遊びに来てもいいんだぜ、胡桃とも会えるし。」


英夜は穂波にグリーンパールへ来ないかと誘ってみる。


「行ってみたい気はするけど、それにはまず煩い親を説得しなきゃねぇ……」


穂波は両親が旅行を許してくれるか分からず、グリーンパールへ行けるかどうかと不安になっていた。


「そうか……」


英夜は穂波の両親の融通が利かない所はネックだとつくづく感じる。


「でも親位、何が何でも説得してみせるわ……じゃあね、胡桃って娘にもよろしく。」


しかし穂波は今回の一件で前向きな気持ちが生まれたのか、親の圧力にも負けないという意思を英夜に示してその場を去ろうとする。


「ちょっと待て!」


その時、英夜は穂波を呼び止めた。


「ん?」

「3年前に家出して友達の家に上がり込んだ時、お前は友達からなんて説得されて家に帰ろうと思ったんだ?」


英夜は3年前に家出した時、夏鈴からどの様な説得を受けて改心したのか、それが気になって尋ねた。


「……秘密。」


穂波は少し沈黙した後、夏鈴から受けた説得の内容は伏せて置こうと考えた。

英夜はよく分からないが、取りあえず穂波の中で夏鈴の言葉は宝物になっているのだろうという事は察した。


「後それから言い忘れてたけど、やっぱり私はオーラナイトって柄じゃないわ、引き続き女優を目指す事にする。」


穂波は最後に自分の今後の目標を前向きに語って別れの手を振った。

英夜達もそれにつられて穂波に手を振り返す。


「ねぇ、貴方。」


穂波が空港を立ち去った後、直花が美森に話しかける。


「何か?」


美森は急に自分に話しかけた直花に用件を伺う。


「貴方は誰かを探してるわね。」

「!? どうしてそれを?」


突然の直花の発言に美森は驚く。


「分かるのよ、貴方の心残りのありそうな沈んだ顔を見れば。」

「沈んだ顔……」


直花から顔色を観察された美森は言葉を積もらせた。


「差し詰めだれかの仇討ちとか考えてるんでしょ? 私、死者の遺品から残留思念を読み取る事も出来るのよ。」

「本当!?」


直花は自分の特技を打ち明け、それを聞いた美森は血相を変えて高井の写真が入った銀のケースを取り出した。


「それは?」


直花は両手を後ろで組みながら美森に尋ねる。


「この人を殺した犯人を見つけたいんだけど、出来る?」


美森はケースを開いて直花に高井の写真を見せながら差し出した。


「……分かったわ。」


直花は写真を左手で受け取り、そして右手で写真に手を重ねて瞑想状態に入った。

そしてしばらくの間、その場に沈黙が続いた。

美森はもうすぐ高井を殺した犯人が分かるのだと思うと興奮して気持ちが張り裂けそうになってしまう、息を飲んで胸の興奮を抑える。

直花は瞑想を終えるとケースを閉じ、ショルダーバックからメモ帳とシャーペンを取り出してケースの上にメモ帳を乗せる。

そして凄まじいスピードでメモ帳に何かを書き始めた。


「写真の人を殺したのはこの男よ。」


書くのを終えた直花はメモ帳のページをちぎって美森に差し出す。

紙に描かれたのはオデイシアスの顔だった。


「この男が……」


美森は戦慄した。

絵とはいえ、遂に探し求めていた高井を殺した犯人の顔を拝む事が出来たのだから。


「水前寺……」


雪木は形相を変えてオデイシアスの絵を睨み付ける美森を心配する。

一方の英夜は腕を組みながらじっと無表情で美森の事を見つめていた。


「こいつだったんだ……グリーンパールへ……帰ろう……」


美森は怒りを抑えている様な震えた口調で英夜達に呟いた。


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