表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/78

37話 英夜と幽霊少女21

宿直室を出た美森達は薄暗い廊下へと出る。

廊下の左右にはそれぞれ扉があり、傍から見ればどちらへ進めばいいか分からない現状だった。


「貴方達が来たのは右の扉ね? 左の方から悪魔の気配を感じるし。」


直花は感覚を研ぎ澄ませ、美森達がやって来た道を割り出す。


「ええ、僕達だけで先に進むよりもまず天城君達と合流してから向かう方が得策だと思ってこの扉を開けました、そしたら都合よく合流出来たので流石にたまげましたが。」


美森は自分と雪木が辿った道や宿直室の扉を開けた理由を淡々と直花に述べる。


「それなら後は左の扉に行ってマーシュとかいう奴を倒すだけね。」


穂波もこの後はとくに何かを準備する必要は無いと感じて戦意を燃やす。

一同は囚われている人達の救出も考え、駆け足で左の扉へと向かい、英夜はリリカに配慮して彼女を抱っこした状態で走る。

一同は扉の方まで辿り着くと、まず美森がそっとドアノブを開ける。

その先に見えたのは下へと続く螺旋階段だった。

美森は辺りを注意深く見渡しながら扉を全開にする。


「この階段を下ればマーシュとのボス戦になる……筈。」


美森はいよいよマーシュとの決戦が近づいているのかと思うと身体に緊張感が走る。

ただ本当にこの先にマーシュがいるのか確信が持てず自身のない台詞となってしまった。


「可能性は大ね、所で貴女、戦えるの?」


直花は美森とは対照的に強気な自身を持っていた。

そして直花は戦闘には向いていなさそうなフリフリなロングスカート姿の雪木を見て彼女が戦えるのかどうか尋ねてみる。


「私は子供の頃から運動が苦手なのよ、だから役割は仲間の回復よ。」

「はーん。」


直花は雪木が戦闘要員でないと知ると、彼女に見下した視線を送る。

リリカを含めこれで戦闘から守らなければならない存在が2人いる事がマーシュ戦において面倒だと感じたのだろう。


「だからなんで人を見下した様な目をするのよ!?」


雪木は先程から続く直花の態度の大きさを不快に思い、自分が人間ではないにも関わらず人という表現を使って彼女に反論してしまう。


「別になんでもないわ、回復役も必要だし。」

「ありがとう、でもあんただけは死にそうになっても放っておく事にするわ。」


直花は申し訳ない程度に雪木にフォローを入れるが、当の雪木は余計嫌味に感じて彼女に辛辣は発言を言い返した。


「おい、喧嘩してる場合じゃないだろ、とっとと階段を降りるぞ!」


英夜は口喧嘩をする2人に注意を入れて先に階段を降りる。

雪木と直花は互いにそっぽを向きながら、美森と穂波はそんな2人をやれやれと思いながら英夜とリリカに続いて階段を降りて行く。

しばらく階段を下っていると、一同は虫の羽音がする事に気が付き足を止める。

音は徐々に大きくなって行き、やがて無数の蝿の悪魔が下から湧いて出る。


「たくっ、こうなると思ったぜ!」


英夜は以前のニュームーンでの経験からラスボスがいるエリアの前には下級悪魔達が待ち構えてる事が安易に想像できた様で予想が的中した事に逆に毒づいてしまう。


「リリカちゃんは雪木さんに任せよう!」


美森はリリカと手を繋いだ状態では英夜が戦えないと判断し、リリカを雪木の傍に置く様提案する。


「言われなくても! リリカ、しばらくはあいつの傍に居てくれるか?」


英夜は美森に返事をした後、リリカに雪木と一緒に居てくれと願い出る。


「うん、頑張ってね。」


状況を理解したのか素直に返事をして英夜にエールを送った後繋いでいた手を解いて雪木の前まで移動する。


「よろしくね、リリカさん。」


雪木は微笑みながらリリカに手を差し伸べる。


「うん、でもなんで大人なのにさっき喧嘩してたの?」


リリカは雪木の手を握るものの、先程の直花との口喧嘩が気になったらしく、大人でもそういう事をするのかが気になり尋ねてくる。


「うっ……それは見なかった事にしてくれない……」


雪木は自分と直花の口論は幼いリリカにも見られていたと今更気づき、彼女に大人げない場面を見せてしまって事に後悔を抱いて赤面する。

実際にはリリカの方が年上であるものの、7歳の時に幽霊になった身であるために素直に直花の方から因縁をつけて来たと言っても逆に大人げなさが増すだけだと雪木は感じてしまう。

一方の美森達は迫り来る蝿の悪魔達に応戦していた。


「うー、こいつら気持ち悪い!」


穂波は蝿の悪魔と戦うのは初めてだったため、両手で爆破しながらも飛んでくる大量の虫に触れる事を不気味に感じて青冷めた表情になってしまう。


「こんな奴ら慣れればどうって事ないわ。」


直花は余裕そうな口調で穂波に言った後、左腕に止まっていたイーグルドローンを羽搏かせて蝿の悪魔を一網打尽にした。


「あれ、もう彼女1人で十分なんじゃ……」


ナイフで蝿の悪魔を攻撃していた美森は直花の戦い方を見て、飛んでる敵には飛んでる物で対抗するのが得策だと思って唖然としてしまう。


「さぁ! 私に続きなさい!」


直花は決戦間近で興奮しているのか、テンションの高い声で先陣を切って下へ進む。


「ロンリネスとかいう奴といい、どうして途中参加の奴は仕切りたがるかね……」


英夜は結界内で遭遇して仲間に加わり、そして当たり前の様にリーダーシップを取る直花を見てニュームーンの時のロンリネスと似ていると思って苦い顔になってしまう。







イーグルドローンが蝿の悪魔達を蹴散らしてくれたおかげで美森達一行は難なく最下層の扉の前まで辿り着く事が出来た。


「さーて、いよいよか……」


英夜はこの扉の先にマーシュが待ち構えているのかと思うと胸が興奮して張り裂けそうな気持になる。

リリカを連れ去りこのホラーゲームを開催したマーシュを叩きのめしてやりたいと思ったが、英夜にも心の何処かで恐怖を感じる事はあり、マーシュの実力はどれ程の物か、自分達で適う相手なのかと不安な気持ちも芽生えていたのだった。

そして英夜は戦意と緊張の混じった複雑な心境の最中でドアノブを回し、扉を開けた。

扉の先の景色は大きな沼、その周りを囲むのは砂利道で壁の背景は赤で染まっている不気味な空間だった。

そして沼の中心の水面にマーシュが佇んでいた。


「おや? 意外と早かったですね、何時の間にかお仲間も増えている様で。」


マーシュは両手をポケットに入れて余裕そうな態度を取りながら美森達に言い放つ。


「リリカはこの通り取り返した、幽霊はここにいる雑賀が鎮めてくれた、後は人質を救出してお前を倒すだけだ!」


英夜は両手で拳をボキボキと鳴らしながらマーシュにゆっくりと歩み寄って行く。


「ふーむ、私が苦労して集めた幽霊を逃がされたのは腹立たしいですね、あの2人もやられた様ですし私が直々に貴方達を殺して差し上げましょう。」


マーシュは自分がコレクションした幽霊を直花に鎮められた事やアークやリメインがあっけなく倒された事に静かに怒りながらオーラで沼の水を噴き上がらせた。

タワー状に噴き出した水の中で紫の目がギラリと光り、水しぶきが止むとマーシュは巨大な泥鰌の怪物へと姿を変えていた。

英夜と美森はそれに反応する様に瞬時に懐中時計を取り出して装甲態へと変身する。


「戦う前に一つ、人質は何処だ!?」


英夜装甲態はまず人質の安否をマーシュに伺う。


「ご安心を、まだ生かしてあります。」


マーシュが返答した直後、沼の中から8つの紫色の結晶体が飛び出る。

結晶体の中にはホテルの従業員や宿泊客が眠っていた。


「そうか、だったらバトル開始だ!!」


英夜装甲態はオーラでジャンプをしてマーシュに飛びかかる。

薙刀にオーラで炎を発火させてマーシュに勢いよく振りかざすが、マーシュはオーラで水のバリアを作って英夜装甲態の攻撃をガードした。

攻撃を弾かれた英夜装甲態はオーラを足に込めて水面に着地する。


「今の攻撃から察するに貴方の特技はオーラで炎を操る事、水を操るのが得意な私とは相性が最悪な様ですね。」


マーシュは英夜装甲態の能力が自分と相性が悪い事を知って彼を煽る。


「ちっ……」


英夜装甲態は確かにマーシュの言う通りだと思って舌打ちをした。

そして今英夜装甲態は水面の上に立っているがオーラで水面に立つ事にも個人差で持続力が違う。

炎を操るのが専門な彼にとってその持続力も比較的短く、不利な戦況に悔しさを覚えてしまった。


「では今度はこちらから行きますよ!」


今度はマーシュが攻撃を仕掛けた。

マーシュの口から水の渦が放たれ、英夜装甲態を直撃しようとする。

そんな時、美森装甲態が彼の前に飛び出し、水の渦を剣でガードした。


「うおおおおおおおおお!!」


美森装甲態は掛け声とともに水の渦を押し切り、オーラを推進させてマーシュへ突撃する。


「てーーーーーーりゃ!!」


美森装甲態はマーシュへ剣を振りかざすが、やはり水のバリアで防がれてしまう。

しかし先程の英夜装甲態の攻撃の様に完全に無力化できなかったのか、マーシュは少し後ろへ押されてしまった。

そして美森装甲態は英夜装甲態の前へ着地した。


「天城君、しっかり!」


美森装甲態は今のマーシュの反応を見逃さず、マーシュと似た様に水や冷気を操る自分ならマーシュを倒せるかもしれないと感じたが、それでは英夜装甲態が惨めではないかと思って彼にフォローを入れて気を紛らわせようとした。


「分かってるよ! 相性がなんだ! 俺でもあいつを倒す策が何かある筈だ!」


英夜装甲態は水と炎の相性の悪さで一時的に葛藤して身体が動かなかったが、美森装甲態の攻撃の直後に自分も気合で押し切ればなんとかなるとポジティブな思考に切り替えて再びマーシュに向かって行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ