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33話 英夜と幽霊少女17

英夜と穂波は直花に連れられ、ホテル内の料理場と思われるフィールドまで連れてこられた。


「ここならいざナイフ使いが攻めてきても武器もあるし隠れられる場所が沢山あるわ、私自身も気配を感知されない様身体に細工をしてあるから大丈夫。」


直花は調理場の広さや辺りに包丁等の戦利品があるこの場所の安全性を2人に説明する。


「それで、お前の正体を教えてもらおうか。」


英夜は早速先程も伺った直花の素性を尋ねる。


「私は……霊園の歌姫……とでも言ってきましょうか。」


直花は何と説明すればいいのか迷ったのか、少し途切れ途切れな言葉になりながら自分の素性を語った。


「霊園の歌姫?」


穂波がキョトンとした表情で直花の言葉をオウム返しした。


「そうね……歌で死者を慰める、つまる所除霊をしたり葬儀で歌って死者を弔ったりするのが私の仕事よ。」

「だからさっき救世主とか言ったのか。」


英夜は直花の主な仕事を聞いて、先程ペットショップで彼女が言った『私は貴方にとっての救世主』という言葉の意味を理解する。


「貴女はここが地元なの?」


穂波は直花が見ない顔だと思い、ここ凱巣島の生まれなのかと尋ねる。


「いえ、生まれは東京で小学生の時にアメリカに移住して最近になってグリーンパールに引っ越して来たわ、ここには幽霊の出る屋敷があると聞いて除霊出来ないかとやって来たの。」

「へぇー、随分ややこしい経緯なのね……」


直花は自分の生まれや育ちを説明し、それを聞いた穂波は彼女の複雑な移住生活に頭がこんがらがりそうになった。


「お前がここにいる理由は分かった、だが一つ素朴な疑問がある、昨日どうしてホテルにいながら俺達がリリカの屋敷にいると分かったんだ?」


英夜はここまでで一つ、昨日自分達がリリカの屋敷にいた事を直花はどうやって感知したのかがふと気になった。


「ああそれ、それはこういう事よ、ヒュー!」


直花は右手をOKの形にして輪の部分を口に近づけ指笛を吹く。

すると天井から何処からともなく鷲の形をした銀色のメカが飛んできて直花の右腕に止まった。


「何それ、カッコいい。」


穂波は鷲のメカを見てその出来の良さに目を輝かせる。


「これは私の武器、及び偵察機のイーグルドローンよ、これの目にオーラで私の視界を合わせる事で遠くの景色を見る事が出来るわ。」

「こいつで屋敷内を偵察していたのか、全然気配を感じなかったぜ。」


直花からイーグルドローンの説明を聞いた英夜は昨日屋敷に居た時にはイーグルドローンに気が付かなかったため、隠密行動にも向いてるのだなと感心する。


「私の事はもういいかしら?」


直花はそろそろ質問攻めに疲れて来たらしく、これ以上の質問が無いか2人に確認する。


「ああ、後は特にねぇ。」

「私も。」


英夜も穂波ももう聞きたい事はないと思っていた。


「なら良かったわ、所で貴方。」


直花は今度はこちらが質問する番だなと思い、英夜に話しかける。


「なんだ?」

「貴方は幼馴染の死をどう受け止めてる?」


直花の質問は重い物だった。

英夜は触れられたくない話題に触れられ不機嫌になるが、それが直花の仕事なのだから仕方ないかと思った。


「包み隠さず話せってか……幼い頃は純粋にリリカが可哀想だと思った……だけどな、リリカが殺された日の翌日に、本当はあいつの屋敷に泊まる予定があったんだ。」


英夜は口に出したくないという気持ちを理性で抑え、根性を出して直花に打ち明けようとする。


「それで?」

「歳を重ねるにつれてもし強盗が入ったのが泊まる予定の日だったら……自分も殺されていたかもしれねぇ……そう思うと巻き込まれなくて良かったっつー、自己中な感情が芽生える様になっちまったんだ……そんな自分が許せずにいる……リリカも今もこうして生きている俺を妬ましく思ってんのかもな。」


英夜は今でこそオーラナイトだがリリカが殺された15年前はただの7歳の子供。

もしかしたら自分の命も危険にさらされていたらと思うと自分は無事で良かったという人間らしくも罪悪感の沸く感情に彼は苦しんでいた。


「自分を責めないで、貴方には悲しみを共有してくれる仲間がいる筈よ。」


直花は葛藤する英夜に慰めの言葉を送る。


「分かってるよ、俺はそれ程メンタルがヤワじゃねぇ……」


英夜は辛さを押し隠す様に微笑み、直花に自分は強いと言い張った。


「それじゃあ、パーティーも増えた所で先に進みましょう!」


穂波は話し合いも大体済んだと捉えて、ダンジョンの探索を続けようと提案する。


「そうしたい所だけど……もう追いつかれたみたい、隠れるわよ。」


しかし直花は何かの気配を察知して調理台に身を潜め、右手の人差指を下に向けて2人にも隠れる様ジェスチャーを送る。

英夜と穂波はこれからここに現れる人物が頭に思い浮かび、直花の後に続いて身を潜めた。

それから数秒後、調理場の出入り口の扉が勢いよく開き、両手にククリナイフを構えたアークが姿を現した。


「さーて、あいつらが隠れそうな所と言えばここかな? きっと息を潜めてじっとしているんだ、うけるー!」


アークは笑いながら殺気を滾らせ、調理場へと足を踏み入れる。


(やっぱりあいつか……あいつ結構素早いからな……隙をついて一気に叩き潰すか……)


英夜はスピードではこちらを上回るアークの厄介さに困りながら、こちらに気づく前に速攻で倒したいと思っていた。


「よーし、見つけちゃうぞー!」


アークはまず付近にある調理台をククリナイフで切り裂き、物陰に英夜達がいないかどうか確認する。


「まぁ、こんな近くに隠れてる訳ないか……」


アークは周りをキョロキョロして何処かから奇襲を受けないか警戒しながらも、余裕そうな笑みを浮かべて英夜達を探索する。

アークは次々と調理台を切り裂いて行き、英夜達は見つかるのも時間の問題だと解釈して戦闘の準備をする。

するとアークは左手に持ってたククリナイフを腰に閉まって炊飯器のある調理台へと歩き出す。


「ここか!? あれま、違った。」


アークは炊飯器の蓋を開けて右手のククリナイフを刺し込もうとするが、中には白いご飯が炊いてあるだけで英夜達の姿が無くがっかりする。


(……は?)


英夜はアークが突然人が隠れられる筈がない所を探し出した事に戸惑いを見せる。

アークは次に右手のククリナイフも腰に閉まって付近にあった茶碗を手に取ってしゃもじでご飯を掬い、そして冷蔵庫へと向かう。


「ここにもいねぇなぁ……」


冷蔵庫の扉を開けたアークはそこにも英夜達が隠れておらずがっかりする。

そしてアークは冷蔵庫からケチャップとマヨネーズと卵を取り出して調理台へ戻る。


(突然何やってんのあいつ……)


穂波も奇襲を受けるかもしれないのに先程から呑気な行動を取っているアークにドン引きする。

アークはそんな穂波達にもお構いなしに卵を割ってご飯の上に乗せる。


「ここにもいねぇなぁ。」


アークは卵の殻を確認してそこにも英夜達が隠れてないと呟く。


(そこは何があっても絶対に有り得ねぇ……)

(私達を油断させるためにふざけてるのかしら?)


英夜は卵の殻を確認するアークに心の中でツッコミを入れ、直花は先程から取ってる奇怪な行動は作戦なんじゃないかと予想した。

一方のアークはケチャップとマヨネーズもご飯にかけて箸でかき混ぜていた。


(え~、そんな食べ方する人初めて見た……)


穂波はアークはこれから卵かけご飯を食べる気なのだろうと読み取るが、普通そこは醤油をかけるものだろうと思っていた。


「それでは、いただきます!」


アークはご飯をよくかき混ぜた後、一気にかけこみをした。


(もう見てらんねぇ、ここでやっちまうか?)


英夜はアークは自分達を油断させたいんだなと断定して懐中時計を構えて変身体制を取る。


「ん~……」


アークは口をもごもごさせながら何かを考え込む。

そして箸と茶碗を置いて再びククリナイフを両手に構えた。


「ケチャップとマヨネーズ恋をしたー♪ ケチャップとマヨネース恋をしたー♪」


アークは歌いだしながら辺りをキョロキョロする。

そして次の瞬間、アークは高くジャンプして宙返りをし、足元にオーラを貯めて天井に張り付いた。


「はい見つけたー!」


アークは天井から下を確認して英夜達を見つけ出し、そして彼等に飛びかかって来た。

英夜は装甲態に変身して薙刀でアークの攻撃を受け止める。


「お前……」


英夜装甲態は毒づきながら薙刀を力一杯スイングしてアークを弾き飛ばす。

アークはバックステップをして地面へと着地した。


「見つけるんだったらもっと早く見つけろ!! なんなんだよ今の寸劇は!?」


英夜装甲態は先程までのアークの悪ふざけの様な行動に抗議した。


「うんとねぇ……ちょっと小腹が空いた、ただそれだけ。」


アークはケロッとした表情で英夜装甲態に先程の行動の訳を説明する。


「馬鹿じゃねぇかお前!!」


英夜装甲態はアークが天然なのかただ笑いを取りたいだけなのか分からず、戦闘力以外でも相手にしたくない奴だなと思った。


「それにしても、お仲間が一人増えてるねぇ。」


アークは直花を初めて見た事に気づき、獲物が増えたと感じて喜びだす。


「初めまして、まぁ貴方に名乗る名前は無いけど。」


直花はあえてアークに自分の名前を告げず、彼を挑発する。


「フン、これから死ぬ奴に名乗る名前は無いって言いたいのか? 俺の実力を舐めて貰っちゃ困るねぇ!」


アークは笑顔をキープして挑発には乗らないという意思を示し、そして再び高く飛び上がった。


「喰らえ、三日月斬り――――!!」


アークは両手にククリナイフをクロスさせてオーラを送り、それを大きくスイングして真空剣で攻撃をした。

地上にいた3人は瞬時にアークの攻撃をかわす。

アークは地上へ着地するとまず穂波が一番倒しやすいと思ったのか、彼女に攻撃を仕掛ける。


「ちょっと……洒落にならない!!」


穂波はオーラで全身をガードしてアークのククリナイフが刺さらない様にするが、それが精一杯だった。

英夜装甲態は穂波を援護すべく、背後からアークに攻撃を仕掛ける。

アークは穂波を突き倒すと、すぐにククリナイフで英夜装甲態の攻撃をガードする。

そこに追い打ちをかける様に直花が左手に止まっているイーグルドローンを鈍器の様に扱い、アークに殴りかかろうとする。

アークはバックステップで直花の攻撃をかわして3人から遠ざかる。


「3対1は辛いんじゃねぇか?」


英夜装甲態はアークが苦戦している様に感じて彼に皮肉を浴びせる。


「3対1だと思うか?」


しかしアークは余裕な笑みを崩すことなく反論をする。


「何?」


英夜装甲態は仲間でもいるのかと思って辺りを見渡す。


「貴方の背中!」


直花は英夜装甲態の背中に気配を感じて彼に注意を呼びかける。


「!? なっ!!」


英夜装甲態は慌てて後ろを振り向くと、そこにはリリカがしがみ付いていた。


「うふふ、英夜、私寂しかったんだよ?」


リリカは不気味に微笑みながら英夜装甲態に囁いた。

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