32話 英夜と幽霊少女16/霊園の歌姫1
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英夜と穂波は突然部屋に現れた幽霊と交戦していた。
2人は格闘で抗戦するが、幽霊は不死身で中々勝負が決まらずにいた。
「パワーは大した事ねーが、やっぱりキリがねーな。」
英夜は幽霊にパンチやキックをお見舞いしているが、中々幽霊が倒れる倒れる気配が無く、困り果てていた。
英夜のキックで蹲っていた幽霊の顔面を穂波は鷲掴みにする。
そして穂波の手にオーラが送られ、幽霊は顔面を中心に爆発した。
「そろそろ逃げましょうか。」
穂波は顔面を押さえて苦しそうに倒れ込んでいる幽霊を見て逃げるなら今の内だと英夜に伝える。
「ああ。」
英夜は軽く返事をし、そして2人は幽霊がダウン状態になったのを確認すると、部屋の奥にある扉まで駆け寄り、出口を開いた。
すると今度はレジカウンターに小さな檻やガラスケースの箱が並んだ商品棚のある空間へと入った。
「今度は……見た感じペットショップみたいね。」
穂波は商品棚の様子やレジカウンターにペットフードが販売されている事から今自分達がいる空間がペッショップだと読み取った。
「結界の中は色んな空間と繋がってると聞いたが、本当何でもアリだな、もうホテルと関係ねーじゃねぇか。」
英夜は結界の空間が様々な所と繋がっている事が面白いが無茶苦茶だろうと感じて呆れてしまう。
「それよりも私が思うのは、あの悪魔がコレクションしてる幽霊は人間だけじゃないのかもって事なのよね。」
穂波はペットショップという空間からこの後出てきそうな敵を予想し、抵抗感のある深刻な表情になっていた。
「……成程、そいつは俺でも嫌だな。」
英夜は穂波の考える事を読み取り、これから現れるかもしれない敵に抵抗を感じた。
そして2人の予想は的中した。
レジカウンターや商品棚の陰から全身血まみれとなった犬の幽霊が次々と現れたのだ。
「やっぱり……」
穂波は唇を噛みしめながら犬の幽霊達と戦う事に抵抗を抱く。
「お前、犬は好きか?」
そんな穂波を見て英夜は愛犬家だから戦いたくないのかと問いかける。
「ええ、昔飼ってた……だからあいつらと戦うの……凄い苦手。」
穂波は犬の幽霊達を見てかつて飼っていた犬を思い浮かべていた、だから戦いたくなかったのだ。
「お前は下がっていろ、俺が片付ける。」
英夜は穂波を気遣い、自分一人で戦うと宣言した。
犬の幽霊達は英夜と穂波を見て唸り声をあげ、そして飛びかかって来た。
英夜は瞬時に装甲態に変身して薙刀で犬の幽霊達を振り払う。
「やっぱ動物虐待してるみてーで気分悪いな……我慢するしかねーけど!」
英夜装甲態は毒づきながらも薙刀を構えながら倒れた犬の幽霊達に歩み寄る。
犬の幽霊達は起き上がり、再び英夜装甲態に立ち向かって行く。
それに応戦する英夜装甲態だったが、やはり不死身の幽霊相手ではキリが無く焦っていた。
「お前は今の内に先に進め! 俺もすぐに追いつく!」
英夜装甲態は犬の幽霊達が自分に注目してる間に穂波を先に進ませようと思い、彼女に指示を出した。
「……待って!!」
すると穂波は息を飲み込んで英夜装甲態の指示を断り、そして彼の元に駆けつけて両手にオーラを宿して犬の幽霊に触れる。
そして爆発音とともに犬の幽霊が2匹程吹き飛んで行った。
「お前……」
戦う事を拒んでいた穂波が自分を助太刀した事に英夜装甲態は驚愕した。
「昔夏鈴からこんな事を言われたの……『目立つ人も目立たない人も悩まず前へ進むのが吉』だって。」
穂波は犬の幽霊と戦う事を迷っている最中、かつて夏鈴から言われた事が頭に過ったのだ。
「『悩まず前へ』か……それは良い言葉だ!」
英夜装甲態は夏鈴が穂波に残した言葉がリリカの死を引きずる自分にも刺さったらしく、同時に自分にも勇気を与えてくれた様な気分になった。
「戦いつつ道を切り開きましょう!」
「ああ!」
穂波と英夜は背中合わせになってお互いに戦意を見せ合った。
そして2人は犬の幽霊達を払い除け、店内の裏口の扉へと突き進んでいく。
しかし犬の幽霊の他に、鳥の幽霊まで現れ、2人の行く手を遮る。
「全く次から次へと!!」
英夜装甲態そうそう上手く先へと進ませてくれる筈は無いかと毒づく。
「以前、ペットショップで通り魔が銃を乱射したっていう事件があったのを思い出したわ! ここはそのペットショップなのかも!」
穂波は以前ニュースで観た痛ましい事件を思い出し、この店がその事件の場所なのだと察した。
「マジか、胸糞ワリィ事件もあったモンだな! 所でその事件で人間の死者は出たのか!?」
英夜装甲態はもしやと思いその死傷者を穂波に尋ねる。
「ええ、出たわ!」
「て事は……くっ!!」
穂波から銃乱射事件で死傷者が出たと聞かされた英夜装甲態はある予想をし、足元に誰かに捕まれてる感触がしてすぐにその予想が的中した。
彼の足元にはピンクの服に白いセミロングスカート姿の長い黒髪の女性の幽霊がしがみ付いていた。
「やめろ! 放せ!!」
英夜装甲態は女性の幽霊を振りほどこうとするが、彼女の掴む力は強く中々放れてくれない。
「天城!! キャッ!!」
穂波は英夜装甲態を着にかけるが、すぐに自分も突然現れた白いYシャツに緑のエプロン姿の店員の幽霊に背後から両腕をロックされてしまう。
そして犬の幽霊達がまた2人に近づいて来る。
2人が絶体絶命だと思ったその時だった。
「いつもー、吹いてるー、やーさーしい風♪ 貴方はそーれーをーわーすーれたの?♪」
突然女性の透通る様な綺麗な歌声が店内に響き渡り、その場にいた一同は硬直する。
「死者もー生者もー♪ かなしーまないで♪ ひーかーり溢れる、空を見上ーげ、生まれー変われる日を信じーよーおーう♪」
すると英夜装甲態達が通った道の商品棚の陰から赤いショートカットの髪の10代半位の少女が歌いながら現れた。
少女の服装は黒いカーディガンにスカート丈が脚の関節位まである白いワンピース、黒いタイツに茶色のショートブーツ姿だった。
少女の前髪は目元まで長く、右側は銀のヘアピンで束ねてツリ目の赤い瞳が見えるが、左側は隠れて見えない状態だった。
「どうか悲しまないで、また……生まれ変われるから。」
少女は涙が出そうなのを堪えている様なウルッとした瞳で優しく幽霊達に微笑みかける。
「やさしーい、光がー♪ あなたをきっと♪ いーやーしーてーくれるー♪」
少女は両手を揃えてまた歌いだす。
すると幽霊達は戦意が消えたのか、皆その場から去って行った。
「大丈夫?」
幽霊達が消えたのを確認すると、少女は2人に近づき声をかける。
「ええ、貴女は?」
穂波は唖然とした表情で少女に名前を尋ねる。
「雑賀 直花[さいか なおか]、人間社会ではこの名を使ってるわ。」
「お前、天使か?」
英夜装甲態は変身を解きながら、直花と名乗った少女がその後に『人間社会では』という単語を使った事から、彼女は天使なのではないかと想像する。
「そうなるわね。」
少女は首を右斜めに倒しながら自分が天使だと告白する。
「へー、天使とコミュニケーションを取ったのって初めて、ねぇ、貴女には本名と言う類の物があるの?」
穂波は天使と話したのが初めてだったらしく、そして興味本位で直花に天使には横文字の本名があるのかどうか尋ねてみる。
「あるけど、それは長いと貴方達人間からは不評なの、だから人間社会で暮らす際は貴方達に合わせた仮の名を使っている訳よ。」
直花は淡々と天使が縦文字の仮名を使う理由を説明した。
「それじゃあ、もう一つ質問、昨日リリカさんの屋敷で私達に話しかけて来た謎の声の主は貴女?」
穂波は昨日リリカの屋敷で聞いた声の主が今でも気になっていたらしく、声の主直花に本人かどうか確認する。
「ええ、このホテルからテレパシーで貴方達に話しかけたわ。」
「成程、これでスッキリした。」
穂波は声の主の正体が分かって謎が分からず終いにならなくて良かったと、両手を合わせて微笑んだ。
「だが何のためにそんな事をした? それからさっき歌で幽霊達を静めていたみたいだがお前一体何者だ?」
今度は英夜が直花に疑問を問いかける。
「私は貴方にとっての救世主よ、私なら貴方の幼馴染を救えるかもしれない。」
「質問の答えになっていない。」
英夜は直花が見当外れの答え方をしたため苦言を溢す。
「……場所を変えてゆっくり話しましょう、貴方達が先程戦ったナイフ使いだって追跡している筈だしここで長話をするのは得策じゃないわ、ついてきなさい。」
直花は少し黙り込んだ後、場所を変えようと提案して歩き始めた。
英夜と穂波は互いにアイコンタクトを取ってしょうがないなと思いながら彼女の後を追う事にした。




