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29話 英夜と幽霊少女13

グリーンパールのホテル。

アイシクルはフォグが去った後も自分の部屋のベッドに横たわりながら寛いでいた。

そしてアイシクルはふと立ち上がり、テーブルに置いていた棒付きキャンディーを手に取って袋を剥いで口に入れる。

その後アイシクルは窓の方へ歩み寄り、外の景色を見つめた。

外には民家や学校、高層ビルがあり下の道路には沢山の自動車が走っていた。


「つくづく思うけど……自動車って早くて便利ね……私の時代には……馬車しか走ってなかった。」


アイシクルは途切れ途切れの小声で自動車について感じた事を呟く。

そしてアイシクルは手をドアの方へ差し伸べ、人差指で何かを引く様な動作をした。

するとドアが勝手に開き出した。

玄関の前に立っていたのはロンリネスだった。

アイシクルは首をかしげながらロンリネスの方へと歩み寄る。


「誰?」


ロンリネスの目の前まで来たアイシクルは彼女に何者かと尋ねる。


「えへへ……私はロンリネス、なんていうか……貴女の存在を風の噂で知って興味があって来てみたの。」


ロンリネスは隠れていたのがバレた様に照れ笑いをしながらここへ来た目的をアイシクルに話し出す。

「私に興味……どうして?」


アイシクルは警戒心があるのかどうか読み取れない無表情な顔を維持しながらロンリネスに尋ねる。


「中世のイギリスを震撼させ、世界をも飲み込もうとしてオーラナイト達に封印された魔女、それが250年の眠りから目覚めて今このグリーンパールに身を隠してるともなれば誰だって興味が沸くと思わない?」


ロンリネスは怖い物知らずで皮肉めいた笑みを浮かべながら自分が知ってるアイシクルの情報を赤裸々に語る。


「……面白い人……入っていいよ……」


アイシクルは自分に動じてる様子が無いロンリネスを気に入ったのか、部屋の中に招き入れる。

「ありがとう。」

ロンリネスは満面の笑みでアイシクルの部屋へ入って行った。







美森は突然現れたリメインによる謎の攻撃で口から鋏を吐き出してしまう。


「この鋏、何処から!?」


美森の傍にいる雪木はこの不可思議な出来事に困惑してしまう。


「リメインのパパ、アンドリューはリメインを邪魔だと思って捨てた……リメインは暗い洞窟に閉じ込められて1人ぼっちだった……だから……ウィンドミル家を許さない!!」


対するリメインは自分の置かれた境遇を語りながら美森に怒りに満ちた台詞を叫んだ。


「がぁ……アンドリューって……僕の曽祖父の名前だ……君は……!」


美森は鋏を吐き出した事による口の中の激痛を堪えながら、リメインが自分の曽祖父の名前を口にした事に衝撃を見せた。


「死んじゃえ!!」


リメインは美森に考える暇を与えず、更なる追い打ちをかける様に叫ぶ。


「が……ああ……ぐはっ!!」


美森の口からまた鋏が吐き出され、さらに身体全身からもナイフが飛び出て酷く出血してしまう。

雪木は急いで美森にオーラを送る。

雪木の七色に輝くオーラが美森を暖かく包み、彼の傷を回復させた。


「大丈夫!?」


美森の傷を癒した雪木は緊迫した表情で彼を気遣う。


「はい……ありがとうございます……」


美森は息苦しそうに荒い呼吸をしながらも立ち上がり、雪木に礼をする。


「回復能力……なら、貴女から先に殺します!」


リメインは回復能力を持つ雪木を厄介に思い、美森に指していた右手を雪木の方へ変えて再び目を赤く発光させる。

しかしその時、美森は右手をリメインに突き出し、オーラを水の性質に変えて作られた水の

渦でリメインを攻撃した。


「キャッ!!」


美森の攻撃が直撃したリメインは弾き飛ばされる。


「例えお前が何者だろうと……雪木さんには手出しさせない!!」


美森はリメインと自分の家系にどんな因縁があるのかまだ分からなかったが、今自分がするべき事は例え相手が小さな女の子の姿をしていようと雪木に危害を加えようとする者を全力で排除する事だと考え、リメインに敵意を向ける。

そして美森は懐中時計を取り出し、それを構えて装甲態へ変身した。


「リメインは……リメインは!!」


リメインは起き上がり、オーラで小型の斧を具現化させて美森装甲態へと走り出す。

美森装甲態も迎え打ち、そして両者の武器がぶつかり金属音が鳴り響く。

リメインは小さな身体に似合わない力で美森装甲態の剣を押しきり、がむしゃらに追撃を加えていく。

美森装甲態はリメインの斧による攻撃を剣で弾いて行くが、先程から感じる呼吸のしづらさでスタミナの消耗が激しく苦しい思いをしていた。

そして美森装甲態は息苦しさ故の隙が出来てしまい、ついにリメインの攻撃を喰らってしまう。


「ぐっ! 鎧を装着していてもこのダメージ……見かけによらず侮れないな……!」


美森装甲態はリメインに手加減しているつもりは無かったが、それでも彼女の一撃が中々効いた事に脅威を抱いてしまう。


「貴方はリメインに勝てない……リメインの鉄分を奪う能力は無敵……です!」


リメインは斧を美森装甲態に指しながら勝利宣言の様な言葉を言い放つ。


「鉄分!?」


美森装甲態は自分の身体から飛び出た刃物を見渡す。

リメインの発言から推理するに、辺りに落ちている鋏やナイフは元々は自分の体内にあった鉄分なのではと美森装甲態は感づいた。


「相手の体内にある鉄分を刃物に変えて、それを身体の外に飛び散らせる……」


美森装甲態はリメインの能力を把握した。

彼は医学に関しては素人だったが、身体の中の鉄分が不足すると赤血球が酸素を送らなくなり酸素欠乏症になるという事位は知っていた。

先程から感じる息苦しさはそれが原因だった。


「どうしよう……身体の傷は治せるけど鉄分は私でも増やせない……」


戦いを見ていた雪木は自身の回復能力にも限度があり、鉄分を補給する方法は無いかと悩み出した。

リメインは高くジャンプして空中で横向きに身体を回転させて美森装甲態へと落下していく。

美森装甲態は竜巻の様に迫って来るリメインを剣で受け止めるが、彼女のローリングも強力で踏ん張り切れずにいた。

そして次の瞬間、美森装甲態の身体のいたる所からまたしてもナイフが飛び出した。


「ぐあああ!!」


美森装甲態は全身の激痛で踏ん張りが解けてしまい、そしてリメインのローリングスラッシュを受けて弾き飛ばされてしまう。


「水前寺!!」


雪木は慌てて美森装甲態の方へ駆け寄る。


「危険です……下がっててください……」


美森装甲態は先程よりもさらに息苦しさを感じながらも雪木を気遣い、起き上がって雪木をリメインから遠ざけようとする。


「変身していても無駄……です! 鎧だって貫通します!」


リメインは回転をやめて地面に着地しながら、例え変身していようと刃物に変わった鉄分は鎧を突き抜け外へ飛び出ると美森装甲態に断言した。


(嘘だろ……これ以上鉄分を失うのはヤバい……仕方がない!)


美森装甲態は変身していれば鉄分が身体から飛び出る心配はないかと勝手に思い込んでいた事を反省し、これ以上リメインと戦闘を続けるのは危険だと判断した。

美森装甲態はオーラを剣に集中させて冷気を作り出し、やがてその冷気は広がって猛吹雪となる。


「くぅ……!」


突然の凍てつく寒さにリメインは怯む。

美森装甲態はその隙を付いてリメインに突撃し、彼女の脚に剣を振るった。


「キャアア!!」


脚を攻撃されたリメインはその場に倒れ込む。

そして美森装甲態は急いで雪木の方に駆け戻り、彼女をお姫様抱っこして宴会場から立ち去った。


「逃がしません……!」


リメインは急いで美森装甲態を追いかけようとするが、脚の切り傷は深く、冷たい雪が傷口に当たる痛さで立ち上がれない。

しばらくすると吹雪が止み、美森装甲態と雪木の姿は無くなっていた。


「まだそんなに遠くには行ってない筈……地の果てまで追いかけてやる……です!」


脚の切り傷が再生して立ち上がったリメインは美森装甲態を追いかけるべく歩き出した。







何処かの民家の食卓と思われる部屋。

辺りはバースデーケーキの置かれたテーブルに椅子、そして冷蔵庫やキッチンがあった。

突然その部屋の壁の一部分が大きな音と共に崩れ落ちる。

そして煙の中から現れたのは英夜と穂波だった。


「あー……お前のオーラを使えば移動も楽ちん……と言いたい所だが、いくらなんでもスピード出し過ぎだぞ、途中からお前自身もコントロールが効かなくなってたじゃないか。」


英夜は右手で頭を押さえながら立ち上がり、先程アークから逃げる時に使ったオーラによる爆発的推進があまりにも早過ぎて穂波でもブレーキをかけづらくなっており、その結果何回も壁に激突して今に至る事に不満を抱いた。


「私もさぁ、これやったの初めてなのよ、さっきのナイフ使いから逃げる際、自分は爆発系の技を使うからもしかしたらこういう事も出来るんじゃないかなーっと思って。」


実は先程の推進は穂波も初めてやったのだった。

ただ触れた物を爆発させるだけじゃなく、ジェット噴射の様に猛スピードで移動する事も可能なんじゃないかと思っていたが、日常生活においてあまりにも目立ちすぎるため中々実験する機会が無かったのも理由の一つだった。


「初めてやったのかーい! でもさっきのあいつは俊敏な動きをしてたし、普通に走ってもすぐに追いつかれただろうからこれで正解だと思うぜ。」


英夜は穂波の初実験に付き合わされたのかと思うと頭が痛くなる所だったが、結果的にアークから逃げ切れたためやむをえず穂波を褒める事にした。


「それはどうも、それにしてもここはどう見てもホテルの部屋じゃないわね、何処かの民家?」


穂波は英夜に礼を言った後、辺りの空間を見渡しながら率直な感想を呟く。


「俺は結界に関しては素人、幽霊関係に関しても素人同然だからなんとも言えねーが、ただ一つ思いついたのはここは幽霊の生前の思い出の場所なんじゃねーかって事だ。」


英夜は部屋の雰囲気を見て感じた予想を穂波に伝える。


「成程、一理あるわね。」


穂波も考えられるのはそれ位だろうと思って英夜の予想に賛同する。


「俺は敵に対してあんまり同情したくねーが、リリカみてーに相手が相手だとやりづれーな。」


英夜は先程アークの傍にいた元死刑囚である幽霊の他にリリカの様になんの罪もなく理不尽に殺された幽霊もマーシュはコレクションしていたのかと推測し、もしそうだったら自分はどうすればいいかと迷いが生まれてしまった。


「でも私達は幽霊を倒すんじゃなくて開放するためにここにいるんでしょ? 倒すべきは悪魔よ。」


穂波は英夜の迷いを振り切らせる様に自分達はマーシュを倒してコレクションされていた幽霊達を自由にすればいいと勇気づける。


「ああ、そうだったな。」


英夜は迷いを生じていた自分をらしくないと反省し、まずはマーシュを倒してリリカや他の幽霊を開放して後の事はプロの霊媒師にでも任せればいいと前向きな思考を取る。

ただしかし、リリカだけは自分の手で説得したいという思いも抱いていた。

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