表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/78

25話 英夜と幽霊少女9


美森と雪木は自分の部屋に入り、そこで話し合う事にした。

部屋の内部は入口廊下の右側に浴槽とトイレに続く扉があり、その奥にベッドが二つあり、左側には電話とテレビがあった。

ホテルの内部としてはありきたりな部屋の構造だったため2人共特にコメントはしなかった。

雪木は少し伸びをした後部屋の奥に歩き始め、美森もその後に続く。

そして2人はそれぞれ自分が寝るであろうベッドに座り込んだ。


「雪木さんの言いたい事は分かります、自分は半天半魔だから人間である高井さんと違って簡単に死なない、でもそれは高井さんを下手に見てる印象の強い言葉だから中々言い出せないんですよね?」


先に口を開いたのは美森だった、彼は雪木が言いたくても言いづらい事があって困っていると推察し、彼女の心境を代弁する。


「察しがいいじゃない。」


雪木は自分の言いたかった言葉を先に言ってくれた美森に感謝する。


「僕はこんな性格だから今までまともに女性と付き合った事が無くて、初めてデートした相手が高井さんだったんです、だから高井さんが死んだ時は悲しくて……高井さんを守れなかった事がトラウマだから女性を守りたいって思うんです。」


美森は雪木を戦いに巻き込みたくない理由を胸に拳をあてながら語る。


「それは分かるわ、だけどね、過去の事でウジウジ悩む男に守られても嬉しくないのよね。」


雪木は高井の死に様が記憶に焼き付いている美森が目の前にいる女性を死なせたくないという気持ちは理解できた、しかし女性としてウジウジした男性に守ってやると言われても余計なお世話としか思わないのだと彼に告げた。


「痛い所突かれましたね……」


美森は雪木から相変わらずウジウジした男と思われてる事がグサリと胸に突き刺さり苦笑いをする。


「ただ、その『愛する女性を守りたい』って気持ちをもっと前向きな気持ちで心構えして欲しいわ。」


しかしそれでも雪木は自分を守りたいという美森の信念は評価しており、後はもっと前向きな性格になる様努力するだけだと彼を励ます。


「愛する女性……ある意味間違っていない表現です。」


美森は死んでしまった高井の事を今でも愛しているが、心の何処かで今は雪木の事も愛しており、雪木が口にした表現が当たってると思い赤面する。


「それとね、守られるだけが女じゃないわ、戦闘が出来なくてもあんたの力になれる。」

「雪木さん……」


雪木の戦いが出来なくても役に立ちたいという想いを聞いた美森はもしここにいるのが高井だったら彼女も同じ様に自分の戦いのサポートがしたいと申し出たのだろうかと考え切なげな気持ちになる。


「あんたの心境がだんだん読めて来たわ、あんたはこうも考えてる、高井さんにオーラの事を教えられない、本当の自分を伝えられなくて苦しいってね。」


雪木は美森を使用人として雇い共に過ごしていて徐々に彼がどんな想いで葛藤しているのかを読み取ったらしく、自分の予想を打ち明ける。


「図星ですね……」


美森は雪木の指摘通り、高井に自分がオーラナイトの家系に生まれた事を教えられなかった事に葛藤していた。

オーラを悪用する人間を出さない為だと親から言われてきたものの、美森にとっては辛い事だった。


「でもあんたは高井さんの事を詳しく知ってるの? 高井さんがどんな小学校に通っていたか、どんな中学校に通っていたか、どんな友達付き合いをしていたかとか、全部知ってるの?」


雪木は高井が美森の家庭事情を知らないのに対して、美森も高井がこれまでどんな人生を歩んできたのか知らない筈だと指摘する。


「確かにそう言われると……高井さんが子供の頃どんなだったのかよく知りません。」


美森は雪木の言う通り、高井からは看護師をやっていた時や大学時代の事は聞かされたものの、彼女の生い立ちに関しては詳しく知らなかった。


「あんたは確かに特別な家庭に生まれたのかもしれないけど、でもそれを悲観するのはなんか違う、酷い言い方をする様でわるいけど気持ち悪いわ。」


雪木は自分が特別な存在だからと疎外感を感じるのは自分を悲観して悲劇のヒーローを気取ってるみたいで気味が悪いと美森に辛辣な意見を告げる。


「改めて思います、雪木さんって強い人ですね。」


美森は雪木の言葉の意味を理解し、これまで疎外感を抱いていた自分が情けなく思えて自分も結局は周りの人間の事を詳しく知らないごく普通の人間だと考えを改める。

そう思うと雪木の前向きに物事を考える姿勢は憧れた。


「私は前向きに生きたいのよ、生きてる以上後ろは振り返らず前に進む方が得策でしょ?」

「ご最もです、なんだか高井さんにも同じ様な事を言われそうな気がします。」


雪木からこの世に生きてる以上、ネガティブになるより前を向いて進む方が得をするだろうと指摘された美森は高井も生きていればそんな事を自分にいう時があったかも知れないと思い、彼女に勇気づけたれた事を感謝する。


「それで、私の事どうする? 回復要因として同行させるの? 男だったら決断を早く済ませてね。」

「分かりました、雪木さんが敵の攻撃を喰らわないよう全力で僕が盾になります。」


美森は空港の喫茶店に居た時に24時間雪木を警固すると誓った自分はなんだったのかと感じて、信念を曲げずに貫き通そうと反省する。


「ありがとね、全力で貴方達のサポートをするわ。」


雪木は美森がこのまま成長して男らしくなってくれれば願ったり叶ったりなのになと思いながらも、自分をパーティーに加えてくれた事を感謝した。





その頃のグリーンパールではフォグがスーパーの自動ドアから食材を詰めた買い物袋を持って出て来た。

麻薬製造のついでに作る今日の夕食を買った所だった。


(さて、帰ってもう一働きだな。)


フォグは早く食事を済ませて夜の密売をしようと思って歩き出す。

しばらく歩いているとフォグは何かを感じたのか、突然行き先を変えるかの様にビルとビルの間の裏路地に入って行く。

薄暗い道を進んでいくと赤い革ジャンを着た男と茶色の革ジャンを着た男のシルエットがフォグの目に写った。

そこにあったのは赤い革ジャンの男は地べたにいる猫を金槌で必要以上に殴っており、茶色の革ジャンの男がそれをビデオカメラで撮影するという残虐な光景だった。


「ガハハ、やっぱりよえー動物いたぶると気分良いぜ!」


赤い革ジャンの男は気分爽快という感じの上機嫌な表情をしていた。


「俺はそろそろ人間が死ぬ姿もみてーなぁ……」


一方の茶色の革ジャンの男は動物が殺される姿を見るのに飽きがきてたらしく、人間が死ぬ光景も撮影したいと赤い革ジャンの男に告げる。


「死体を処分するのが面倒だと思うぜ。」


しかし赤い革ジャンの男は人間を殺した後、死体の後始末や失踪届けが出されたりやらで色々と面倒だと反論する。


「それもそうだな。」


茶色の革ジャンの男は仕方がないので動物で我慢しようと諦める。

2人の男がそんなやり取りをしている最中、フォグは気配を消して近づいてきたらしく、何時の間にか赤い革ジャンの男の隣になっていた。


「あ!? なんだオメ―は!?」


赤い革ジャンの男は流石にフォグの気配に気づき、立ち上がって彼に因縁をつける。

しかしフォグは左手で素早く、赤い革ジャンの男の金槌を持っていた右腕を鷲掴みにする。

そして次の瞬間、グギッという生々しい音と共に赤い革ジャンの男の右腕をへし折った。


「あぎいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!! おきゃーしゃん!! おきゃーしゃん!!」


赤い革ジャンの男は想像を絶する激痛と共に悲鳴を上げ、その場に倒れ込む。


「な……なんなんだ!?」


その光景を見ていた茶色の革ジャンの男は動揺して後退りをするが、フォグはためらう事なく男の顔面にパンチを入れる。


「ぐふっ!!」


相当重い一撃だったらしく、茶色の革ジャンの男もその場に倒れ込む。

そして最後にフォグは地面に落ちたビデオカメラを右足で踏みつけ破壊した。

その後フォグは地べたで血だらけになって横たわっている猫を見つめた。


「……死んだか、世界はお前に笑っていなかったんだな……」


フォグは猫の息が絶えた事を感じ取ると、猫の亡骸に哀れみの様な言葉をかけてその場から立ち去る。


(別に俺が干渉する事じゃなかったのに……なんで関わったんだろう……?)


猫を虐待していた男達を成敗する、傍らから見れば善良な行為ではあるが、フォグは半魔である自分がそれをやっても意味がないのに何故関わってしまったのだろうと歩きながら自問自答していた。






夜の凱巣島の街中。

その街にあるハンバーガーショップでアークとリメインは食事を取っていた。


「でさー、今夜は何処に泊まる気だ?」


アークはポテトを食べながら今夜の宿泊先をリメインに尋ねる。


「ここから少し歩いた所にブルーアルバトロスホテルというのがあります、今日はそこに泊まる……です。」


リメインはスマホで地図を確認しながらブルーアルバトロスホテルに泊まろうと提案する。


「ブルーアルバトロス、確かお前の占いでは『青き阿呆鳥の塔に向かえば探し人に会えるだろう』って出てたな、成程ねぇ……」


アークは凱巣島へ向かってる最中、自身の体内でリメインが占いで美森達と何処で出会えるかを占っていた事を思い出し、それで出た青き阿呆鳥の塔の意味を理解した。


「リメインの憎い人もそこに泊まってる筈です……探し出して殺す……です。」


リメインはスマホをギュッと握り締め、美森への憎しみを滾らせる。


「憎しみで燃える幼女とかチョーウケる! アハハハハハ!」


アークは10歳位の少女が根暗な表情で人を殺すと宣言している姿が滑稽に思えたのか、突然笑い出す。


「リメインは大真面目……です。」


リメインは笑い出すアークを睨み付けながら苦言を溢す。


「すまんすまん、所で後ろにいる奴、さっきから俺達の気配に気づいてるんだろ?」


アークはリメインに謝罪した後、先程から気になっていた後ろの席に座っている人物に話しかける。

その人物はマーシュだった。


「見ない顔ですね、地元の悪魔ではありませんね?」


マーシュは立ち上がってリメイン達の席まで近づき、見慣れない顔だと返答する。


「訳あってグリーンパールから来たんだ、俺はアークでこっちがリメイン、よろしくな。」


アークはフレンドリーな笑顔でマーシュに自己紹介をした。


「マーシュと申します、所で貴方達は先程ブルーアルバトロスホテルで誰かを殺すと仰ってましたね?」


マーシュは先程のリメインとアークの会話を盗み聞きしており、彼女達の目的を再確認する。


「ああ、でも俺は違うよ、暴れようとしてるのはこいつ。」


アークはリメインを指差し、ブルーアルバトロスで人を殺そうとしているのは彼女だと告げた。


「口を差す様で申し訳ありませんが、明日の昼まで騒ぎを起こさず大人しく宿泊してていただきたいのですが。」

「どういう事……です?」


マーシュはリメインに明日の昼まで人を殺すのは我慢して欲しいと要望し、リメインは不機嫌そうな表情でその理由を尋ねる。


「実は……」


マーシュはリメイン、アークの順に耳打ちし、自身が明日やりたい事を伝えた。


「面白そうじゃん、ウケるー!」


マーシュの計画を聞いたアークは関心を持ったらしく、陽気に笑い出した。


「リメインは貴方の遊びに付き合っていられない……です。」


一方のリメインはマーシュの計画がくだらないと感じて苦言を溢す。


「ふむ……貴女の殺したい人物というのはどんな人なんですか? 人間ですか? オーラは使えるのですか?」


そんなリメインにマーシュは殺したい相手がどんな人物か尋ねる。


「オーラナイト……です。」

「でしたら、明日の私のゲームに積極的に参加する筈です、どうです? 私に協力して今日は我慢して明日目的のオーラナイトと対決するというのはいかがですか?」


マーシュはリメインの言ったオーラナイトはもしかしたら昼間会った美森達の事ではないかと予想し、もしそうなら彼等は自分のゲームに間違いなく参加するだろうと思って彼女達に自分と手を組まないかと呼びかける。


「だからリメインは……」

「いいじゃないかリメイン、こいつのやろうとしてるゲーム気に行ったしオーラナイト殺すのは明日にしようぜ。」


リメインは文句を言おうとするが、一方のマーシュのゲームが気に入ったアークは手を組むのは面白そうだと彼女に指摘する。


「アークまで……」


リメインはそんなアークに呆れてしまう。


「それに今日は歩き疲れたしゆっくり眠って体力を回復させた方が得策だと思うぜ、獲物は逃げる訳じゃねーし。」

「……勝手にすればいいです。」


アークに荒野から街まで歩きっぱなしでくたくたになってるんじゃないかと指摘されたリメインは、確かに身体から疲労感を感じているためスタミナを回復させる必要があると思い、同時にマーシュのくだらないゲーム付き合う事に不服を感じながらハンバーガーをやけ食いした。


「そちらのお嬢さん、情緒不安定ですね。」


リメインの言動を観察したマーシュはアークに彼女の第一印象を伝える。


「これでも戦いは強い方なんだけどな。」


アークはウィンクをしながらリメインにも一応長所はあるとマーシュに告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ