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22話 英夜と幽霊少女6


リリカがマーシュに連れていかれた後、美森達は英夜に案内され2階のリリカの部屋に案内された。

室内は化粧台やベッド、それに沢山のぬいぐるみが置かれており、小さな女の子の可愛らしいへやだという事が見て取れた。

ただ部屋はすっかり埃やクモの巣だらけになっており、生活感はまるで感じられなかった。

昔はここであどけない少女が過ごしていたのかと思うと、英夜は勿論、他の3人も切なく悲しい気持ちになった。


「ここがリリカちゃんの部屋……」


雪木は部屋一面見渡しながら呟く。

自分も子供の頃はこんな感じの部屋で過ごしていたなという気持ちが彼女の中にあった。


「あー……私は欲しい物とかあまり買ってもらえなかったなー、リリカちゃんが羨ましいよ。」


一方の穂波は自分は子供の頃、親が厳しく欲しい物があってもよく我慢させられた事を思い出し、羨ましさと妬ましさの混じった複雑な苦笑いを見せる。


「あの娘、生きていれば22歳、私と二つ違いなのよね……ほぼ同世代だけあって何か趣味も似ているきがするわ。」


雪木はリリカと自分の歳が近い事から彼女に親近感を抱き、両手を腹の辺りで合わせながら歩き始める。

リリカは生きていたら今どんな服を着ていたんだろう、自分と同じふりふりな洋服を着ていたのだろうか、切ない思いを瞳に滾らせていた。


「いいからとっとと占いを始めてくれ。」


英夜もリリカがもし生きていればどんな大人になっていたのかを考え沈んだ気持ちになっており、そんな考えを掻き消すように雪木に占いを始める様要求する。


「分かってる、だからあの娘が大切にしてそうな道具を教ええて。」


雪木はリリカが最も大切にしていた私物が占いに使うのに最適と考え、英夜にリリカのタカラモノは何か尋ねる。


「あいつが大切にしてそうな物? そうだなぁ……」


英夜は頭を抱えてリリカが何を大切にしていたのか思い出す。

しばらく考え込んだ後、英夜は化粧台の方まで歩き出し、引き出しを開けようとする。


(この引き出し、勝手に開けたらあいつに怒られたなぁ……)


英夜は子供の頃、化粧台の引き出しを開けるのをリリカから固く禁じられていた事を思い出し開けるのに抵抗を感じてしまう。

しかし今はそんな事を考えていられないと思って引き出しを開けた。


「あった。」


英夜は一言そう言って引き出しの中から兎のイラストが描かれたコンパクトを取り出す。


「そのコンパクトがそうなの?」


雪木は英夜が手に持つコンパクトを眺めながら彼に尋ねる。


「初めてサンタさんから貰ったプレゼントだって言ってたし宝物にしてた可能性は高いぜ。」


英夜はリリカからコンパクトの入手経路について聞かされていたのを思い出し、大切に扱っていただろうと推測する。


「分かったわ。」


雪木はコンパクトを英夜から受け取り、蓋を開いて鏡に映った自分を見つめる。

そして雪木は歩き出し、リリカの物であろう小さなベッドにコンパクトをそっと置く。


「そいつでどうやって占いをするんだ?」


英夜は雪木の占いのやり方がきになりそれとなく尋ねる。


「それは秘密、ちょっと後ろを向いててくれる?」


雪木は占いの過程は見られたくなかったらしく、英夜に後ろを向く様指示する。


「おいふざけ……」

「まぁまぁ、ここは言う通りにしとこうよ。」


英夜はこんな時に隠し事をしようとする雪木に怒りを感じるが、そこに美森がなだめに入った。

美森は彼女の占いのやり方が人間とは異質でそれを見られるのが忍びないのだろうとすぐに感づいた。


「ちっ……」


英夜は美森と雪木が一向に隠し事をしている事に舌打ちしながら渋々雪木に背を向ける。


「まっ、取りあえず期待しましょうよ、あの人に。」


穂波も雪木が怪しい人だなと感じながらも、他にマーシュを追跡する手掛かりがないため彼女を信じるしかないと英夜にフォローする。


「じゃあ、始めるわよ。」


雪木は占い開始の宣言をして、それを聞いた美森と穂波も彼女から背を向ける。

雪木は3人が後ろを向いたのを確認した後。自分の右手の人差指と中指にオーラを込めてそれを自分の首に突き刺した。

雪木は目を大きく開き苦痛の表情を浮かべるが、激痛に耐えて指を抜き取る。

首の穴からドクドクと血が流れるが半天半魔であるためすぐに傷穴が再生され元通りになる。

そして雪木は指に付いた血をコンパクトの鏡にベタリと付け、オーラを送って念を込める。


「探し人、浅井リリカの行方を教えたまえ……」


雪木は瞳を閉じて頭にリリカの事を想い浮かべながら静かに呟く。

血の付着した鏡が青く発光し、雪木の頭に波動が送られる。

部屋の中は数秒の間沈黙状態になり、美森達も何時動いたり喋ったりしていいのか分からず緊迫する。


「みんな、もういいよ。」


雪木が占いは終わった事を美森達に知らせる。

3人は雪木の方へ振り返り、そして彼女に近寄る。


「それで、結果は?」


英夜は今すぐまたリリカに会いたいという気持ちで興奮しそうになるのを抑えながら占いの結果を尋ねる。


「明日の正午、青き阿呆鳥の塔の遊び場で待て、さすれば探し人に再会できるであろう……そう頭に響いたわ。」


雪木は脳裏に過った文面をそのまま口に出す。


「なんじゃそりゃ、リリカに会うには明日まで待たなきゃいけねーのか? こっちから捜しちゃいけねーのか?」


英夜は占いの意味はまるで分からなかったが、明日という単語から今日は何もせずじっとしてなくちゃいけないという事なのかと予想し苦言を溢す。


「これがリリカちゃんと会う最適な方法なのよ、私の占いは何時どんな時に出会えばこちらに幸運が訪れるかっていうのを予言するのよ。」


雪木はそういうふうに示されたのだから仕方がないと英夜に反論する。


「なんか納得いかねーな……それに青き阿呆鳥の塔とか意味わかんねーんだけど。」


英夜は出来れば今すぐにリリカとまた会って説得を試みたいという気持ちだったため、雪木の占いの結果を受け入れられず、青き阿呆鳥の塔が何なのかも分からずただ苛立ちが溜まった。


「それってひょっとしてあそこじゃない? ブルーアルバトロスホテル。」


そこに穂波が会話に割り込み、青き阿呆鳥の塔がホテルの事を示しているのではと意見する。


「ブルーアルバトロス、確かに青き阿呆鳥の塔って表現になるね。」


美森はブルーアルバトロスを訳せば青き阿呆鳥になる事や、ホテルを正面からみたら塔に見えないが横から見れば多少強引なれど塔に見えなくもないと思い、穂波の意見に賛同する。


「占いにはさらに青き阿呆鳥の塔の向かいには魚が品揃えされてるとでていたわ。」


雪木はさらに細かく占いで示された言葉を穂波に伝え、魚屋らしき建物がないか確認する。


「やっぱりブルーアルバトロスホテルで間違いないわ、あそこの向かいは魚屋さんだしね。」


穂波は雪木から両手を揃えながら自分の予想は間違いないだろうと自信を持つ。


「遊び場っていうのはゲームセンターの事かな?」


美森も占いで示された遊び場が何の事を言ってるのか大体の予想をする。


「ホテル内にはゲームセンターもあるわ、要するに明日の12時にゲームセンターに集まっていればリリカちゃんに会えるって事でしょうね。」


穂波は美森を指さし得意気な表情でホテル内にゲームセンターがある事を語り、雪木の占いの意味が分かり爽やかな気分になる。


「で、そのホテルは何処にあるんだ?」


一方の英夜はまだあまり機嫌が晴れない様で、腕を組みながらホテルの場所を穂波に尋ねる。


「私の家からでも歩いていける距離、まぁ口で言うよりは実際に行って見た方が分かるでしょうね、早速バスに乗りましょう。」


穂波は腕時計を見てバスが何時来るかを予測した後、ブルーアルバトロスホテルまでの道案内を始めようとする。


「はぁ……今日は必然的にそこに泊まる事になるのかぁ……」


英夜は最初凱巣島に来た時は仕事を終えた後でホテルで一夜を過ごせるかと思っていたので、リリカの事を心配しながら一夜を過ごさねばならないこの現実にため息をつく。


「そうなりそうだね、そう言えば結局さっき廊下で聞こえた謎の声は何だったんだろう……?」


美森は思い出したかの様にリリカに出会う前に廊下を渡っていた際に聞こえた女性の声が気になり始める。


「ああ、そういうのもあったな……だが俺は声の主になんか興味はない、俺が第一に考えるのは変わらずリリカだ。」


英夜は声の主が何者かについては興味が無かった。


「ねぇ、オーラでテレパシーを行う事も可能なの?」


穂波は声の主が今になっても一向に姿を表さない事から何処か遠くからテレパシーを送ってきたのではと思い、美森達にオーラでそれが可能か尋ねる。


「ノーとは言い切れないわね、オーラで何をするのが得意で何が不得意かっていうのは十人十色だしテレパシーが出来る人も中にはいるかも。」


雪木はオーラの力でテレパシーが出来るのも有り得るかもしれないと穂波に告げる。


「成程ね……まぁ、私達に声をかけたって事はいずれ姿を現すかもしれないわね。」


穂波は雪木の言い分に納得した後、声の主が何者かは考えても良知が明かないので保留する事にした。

そんな最中、英夜が突然歩き出し、窓の方へと向かう。

そして英夜は薄汚れたカーテンを開けて暗い屋敷を日の光で照らした。

英夜が窓の外で目にしたのは、かつてリリカと共に遊んだ花園だった。

花達は15年前と変わらず色鮮やかに美しく咲いていた。


「天城?」


穂波はそんな英夜を見て少し心配に思い声をかける。


「あの花畑でよくリリカと遊んだ……なんだ、15年前から変わってねーじゃねーか、心配して損したわ。」


英夜はもし花園が荒れ地にでもなっていたらどうしようと思っており、実際今も無事に咲いている花達を見て安心した。

咲き乱れる花の中でリリカが楽しそうに舞い踊る姿が英夜の頭の中で思い描かれる。


「あいつ、あの花園はこの窓から見ていたのだろうか……まぁ、そんな事よりも今はホテルに向かう方が先決か……長良、早速ホテルへ案内してくれ。」


英夜はリリカも花園で遊んだ日々を想い巡らせていたのだろうかと考える。

そして、またリリカに会って今度はちゃんと話し合いたいと思い穂波にブルーアルバトロスホテルへの道案内を願い出る。


「分かったわ。」


穂波は英夜が何を思っているのかを読み取りコクンと頷いて返事をする。


「天城、これ、リリカちゃんに渡しなさい。」


雪木が英夜の方まで近づき、リリカのコンパクトを彼に渡す。


「お前に言われなくても分かってるよ。」


英夜は強気な返事をした後、コンパクトを受け取りコートの内側のポケットに閉まう。

そして4人はリリカの部屋を出て屋敷を跡にした。

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